野町 直弘 / 株式会社クニエ

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先日の衆院選挙は自民および与党の大勝利となりました。
今回の選挙で感じたのは日本の国内景気については「いざなぎ景気」超えが確実であり、戦後2番目の最長の景気拡大期にあるということもあり、日本の経済政策に対する国民の評価は低くないのかもしれません。
一方でやはり実感のない景気拡大であり、それと共にとても近視眼的な経済政策としか思えないというのが私の印象です。

「いざなぎ景気」「バブル景気」「今回」の指標を比べてみるとその理由が分かります。

1年当たりの実質GDPの伸びは、「いざなぎ景気」の間は11.51%。「バブル景気」は5.58%の成長。しかし、今回の景気回復は1.26%。かなり緩やかな回復です。

また個人消費の伸びも同じです。「いざなぎ景気」は9.63%。「バブル景気」は4.57%伸びました。しかし、今回の景気回復では0.41%。ほとんど伸びていないのです。

賃金の伸びはどうでしょうか?実質賃金の変化を見ると「いざなぎ景気」の頃は1年当たり8.2%上昇。「バブル景気」の頃は1.5%の上昇。しかし、今回の景気回復では増えるどころか0.6%減少しています。ゆるゆると景気回復を続けているけれども、勢い不足は明らかです。

このようにみると現状の好景気が実感を伴わないという理由がわかります。しかしもっと深刻なのは競争力です。これもよくマスコミで取り上げられますが、IMDの世界競争力ランキングの2017年版によると日本の競争力は26位となっています。ちなみに1989年(平成1)から1992年は日本の競争力は首位でした。

また全要素生産性をグローバル比較しても日本は90年代に生産性が伸びておらず89年を100基準にしたところ2013年には約104と、殆ど生産性が上がっていないこともわかります。
このような統計を見てもバブル崩壊以前と以降で日本の競争力がグローバル比較で弱くなっていることは確かでしょう。

私は競争力が下がった一つの原因が産業構造の変革が行われていないことだと考えます。バブル崩壊以降現在までで個別企業で爆発的に成長した企業が何社あるでしょうか?多分あの企業、この企業と片手で数えられる程度です。
一方でバブル崩壊以降つぶれていった大企業はあまりにも多い。産業構造の変革というのは結果的なものであり、その源泉になるのは新しい産業を支える個別企業が生まれてくることです。日本ではバブル以降その勢いがないのです。

一方で米国ではアマゾンしかり、フェイスブックしかり、アップルしかり、多くの巨大な新ビジネスが立ち上がっています。私はこの差が産業構造の変革やひいては競争力の格差につながっていると考えるのです。

日本は出る杭は打ちます。その代表的な事案がライブドアの元代表だった堀江氏の逮捕でした。法律を違反しているのだから逮捕することはやむをえなかったかもしれません。しかし
その当時のベンチャー企業を代表するような人物を逮捕し、ビジネスに戻ることを許さなかった日本的なやり方は多くの若い方に影響を与えてました。

私も2000年前後からベンチャー企業の経営や自身の企業を立ち上げましたが、2000年前半にはまだベンチャーを志望する多くの優秀な若い人間がいました。それが急激に大企業志向に回帰していきました。その一つのきっかけになったのが堀江氏の逮捕だったと考えます。

優秀な人材が集まる企業は成長します。成長する企業は新しい産業を作ります。そのダイナミズムが産業構造の変革を起こし最終的には企業や国の競争力の源泉になっていくのです。

政治はそれを上手く促す役割をしなければなりません。
起業の支援やベンチャーにお金が回る仕組みを作らなければ今後も優秀な人材は日本的カルチャーや日本的企業の中に埋もれ続けます。子育て支援もよいですが、将来の日本経済を支える新しい産業や企業を生み、育てることにもっと目を向けなければならないし、それを政策として打ち出している政党はありません。もっと言えば日本の社会全体が、あまりにも近視眼的になっていることに疑問を感じている今日この頃です。