編集者/ライターの池田園子が、週末起業家や個人事業主、経営者など、さまざまなスタイルで起業している女性にインタビューする連載です。

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アクセサリーは身に着けて気持ちが高揚するアイテムのひとつ。自分が心から気に入るものが見つかると、毎日が、そして明日が楽しくなる。そんなアクセサリーを作りたい、と話すのが、アクセサリーデザイナーの安藤範子さんです。
アクセサリーにたどり着く前に、化粧品業界とエステ業界、ふたつの異なる業界でキャリアを積んだ安藤さん。その経験は業界・業種は違えど、アクセサリー制作に確かに活かされている、と振り返ります。
美容好きな母の影響を受け、幼い頃からきれいな女性に憧れていた安藤さん。化粧品会社では、お客さまの肌悩みを聞き、化粧品の選び方やお手入れの仕方をアドバイスしたり、簡単なマッサージ&パックをしたりするなかで、お客さまから感謝の声を聞くのがうれしく、もっと深く学びたい、との思いからエステ業界へ。

「施術の技術はもちろん、お客さまに心地よく過ごしてもらうための表情や言葉選び、声をかけるタイミングなど、さまざまなことを学びました。私自身もエステに行くのが大好きだったので、お客さまの気持ちに寄り添うように仕事ができて、とても楽しかったです」(安藤さん)

まったく違う世界からアクセサリーの世界にひとりで飛び込んだ――そんな安藤さんの起業ストーリーをお届けします。

モノ作りに熱中。誰かに見てもらえるものを…と、たどり着いたのがアクセサリー

Q. アクセサリー制作を事業にしようと思い立ったきっかけはなんだったのですか

A. 3人目の子どもができたのを機に、仕事を辞めて家庭に入りました。はじめは久しぶりの赤ちゃんとの生活に追われていましたが、子どもが1歳を過ぎた頃から時間に余裕が生まれ、家で何か仕事ができないかな……と考え始めました。
そんなとき、偶然訪れた手芸屋「ユザワヤ」でデコパッチに出会ったんです。デコパッチは、お皿や雑貨に専用ペーパーと糊を使ってデコレーションして、オリジナル雑貨を作るというもの。人と同じモノがあまり好きではない私はとても感動した記憶があります。
それからいろいろなモノを作っていきましたが、誰かに見てもらう機会が少なく、どうしたら人に見てもらえるか考えた結果、雑貨ではなく、アクセサリーという身に着けるモノにしよう、と思いついて。
自分で作ったアクセサリーを初めて身に着けて出かけた先で、「素敵」「かわいい」などと褒められた喜びは今でも忘れられません。自分の好きなモノを身に着けているときのワクワク感を、他の方にも感じてほしいなと思ったのがきっかけですね。

3人の子を育てながらのアクセサリーデザイン。スケジュールと仕事内容は?

Q. ある日のスケジュールを教えてください

6時30分 起床、朝食作り&子どもたちを起こす
7時30分 子どもたち登校
8時から 自分の朝食
9時まで 家事
9時30分まで SNSの投稿&チェック
10時まで ニュースを見ながらコーヒータイム
10時から13時まで 制作
13時から 昼食&休憩
14時から 制作再開
16時から 洗濯物をたたむなどの家事&夕食のメニューを考える
16時30分から 下の子のお迎え&お買い物
17時30分から 夕食作り
18時15分から 夕食&テレビ
19時から 子どもの宿題&明日の準備
20時から 子どもとお風呂
20時30分から21時 布団の中で絵本を読んだりお話したりする
21時から22時 片付けなどの家事
22時から24時 制作の続き
24時 就寝

A. 上記は「制作」のみの日となっていますが、デザイン案〜試作〜試着〜制作〜SNS・ブログ告知など、すべてをひとりで担っています。
委託先へ送る場合は、梱包に発送、納品書・請求書作成、メールでの在庫チェックや商品の動向チェック、入金確認などの仕事も。ネット販売の場合は、商品の撮影、商品の説明文を入力、お客さまからの問い合わせ対応、お手紙、梱包、発送など、幅広い業務があります。
現在はひとり体制ですが、同じ想いを持った人とチームを組むのも楽しそうですし、できることが広がりそうだなとワクワクしています。アクセサリーに限らない、さまざまなカテゴリで、子どもや家族や恋人、そして社会にも大きなパワーを与える「女性の笑顔」を増やす仕事をすることが、大きな目標であり、夢でもあります。

身に着ける「あなた」にとって、特別なアクセサリーになってほしい、と願いを込めて

Q. 「シェリール」というブランド名やブランドに込めた思いはなんですか

A. シェリール(cherir)とはフランス語で、「あなただけの」「特別な」といった意味があります。ひとつひとつ手作りで色を作っているシェリールのアクセサリーが、あなたにとって特別なアクセサリーになってほしい――そんな想いからこの名づけました。
人生は晴れの日ばかりではありません。心が曇っているときも、雨天のようなときもあります。美しく混ざり合う色を見て、前向きになれる、笑顔になれる、自信が持てる――お守りのような、あなたに寄り添う存在になりたいと願っています。

手作りの色だから、ひとつとして同じ色や模様がない、世界にただひとつのアクセサリー

Q. シェリールで展開するアクセサリーのこだわりについて教えてください。

A. シェリールのアクセサリーは、さまざまな色が美しく混ざり合うパールやパーツを使って作っています。色はひとつひとつ手作りで、同じ色や模様がないところも魅力だと思います。同じデザインでも印象はガラッと変わるんです。
その人にとって、無難なアクセサリーではなく、身に着けると心が踊るような、そんなアクセサリーを目指しています。金具はあまり高価な材質のモノを使わず、手にとっていただきやすい価格設定にしているのも大事にしていることのひとつ。アレルギーの方や素材にこだわりたい方にはセミオーダーで対応しています。

ひとり時間を持てるママなら、「時間割」を作ってみよう

Q. 育児、家事と両立させる秘訣を教えてください

A. 子どもの年齢によって違ってくるとは思いますが、まだ幼稚園や学校に行っていない小さい子が家にいる場合は、その子の生活リズムに合わせて、仕事や家事をすることが自分にとって一番無理なくストレスなくできると思います。
子どもが幼稚園や学校に行っていて、ひとりの時間が持てる場合は、自分の時間割を作ると良いと思います。特にはじめは仕事への意欲があふれていたり、受けられる仕事の量がつかめなかったりして、家庭に仕事を持ち込んでしまいがち。そうすると子どもに負担がいったり、家事をできない自分にイライラしたりと、うまくいきません。自分の使える時間や自分の受けられる仕事量をよく見極めて、無理なく笑顔でいられるバランスを見つけることが、長く両立させる秘訣だと思います。

ママが家で仕事をするメリットはたくさん。注意点も知っておこう

Q. 「家で働く」魅力、逆に大変なことがあれば教えてください。

A. 子どもの行事や急な体調不良に対応しやすい点は魅力ですよね。笑顔で送り出し、帰りを待っていてあげられるのもメリットです。仕事をする時間を自分で決められて、24時間を自分のライフスタイルに合わせて好きなように組み立てることができます。
一方で、大変なことや注意しなければいけないこともあります。まず、身の回りに誘惑がたくさんあります(笑)。整理したい収納棚が目に入って気になったり、家事を片付けたくなったり、気がつけばダラダラとテレビを見てしまったり。
家にいるときでもオンとオフを区別するために、やはり時間割は有効だと思います。家族の理解も大事です。趣味ではなく、「仕事」と位置付けるからには、時間の使い方や仕事スペースの確保を認めてもらえるよう、話し合いは不可欠です。

お客さまの人生を華やかに、輝かせたときが何よりうれしいひとときに

Q. フリーランスのアクセサリーデザイナーとして活動するなかで感じている喜び、やりがいはなんですか

A. お客さまがメールをくださったり、SNSへ投稿をしてくださったりしたとき、喜びを感じますね。自分が「かわいい!」と思って丁寧に作ったアクセサリーを手に取っていただき、喜んでいただけることは、作り手にとって何よりうれしく、やりがいを感じます。その他、SNSで発信したときに、たくさんの反響があったときは、モチベーションアップにつながります。共感してもらえた、認めてもらえた、といったことが自信になります。
また、育児などでおしゃれから遠ざかっていた方が、シェリールのアクセサリーを身に着けてなんとなく楽しい気持ちになれた、またおしゃれをしてみようと思った、とお話ししてくださったときには、涙が出るほど幸せでした。これからも喜んでいただけるアクセサリーを作り続けていきたいです。

周囲への温かい眼差しがある安藤さんの手で生み出されるアクセサリーは、写真からも伝わるようにどれも温かみがあり、温度を感じるものばかり。経験はなくても「好き」から道は拓ける。そう教えてくれる事例といえそうです。

▽ 安藤範子さん

ハンドメイドアクセサリーブランドcherir「シェリール」デザイナー。色が混ざり合う不思議でやさしい瞬間を切り取ったようなアクセサリーが特徴。どんなときも元気と笑顔になれるお守りのような、「相棒」のような存在のアクセサリーを目指す。