安室奈美恵、ポルカ、リトグリ……音楽と人生が結びついた女性アーティストたち

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 当たり前の話だが、アーティストが生み出す音楽は、その人自身の人生とつながっている。アーティストが何を考え、何をやろうとしているのか。どう社会と関わり、どんな仕事をやり、そこでどんな変化や化学反応が生まれるのか。そういったことすべてが作品に強く反映されているのだ。今回は、特に人生と音楽が強く結びついている女性アーティストの新作を紹介。引退を発表した安室奈美恵のオールタイムベスト、映画『この世界の片隅に』の音楽で注目を集めたコトリンゴのオリジナルアルバムなど魅力的な作品ばかりだ。

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■安室奈美恵『Finally』 40歳の誕生日(2017年9月20日)に2018年9月16日をもって引退することを表明した安室奈美恵の初のオールタイムベストアルバムであり、(タイトル通り)事実上のラストアルバム『Finally』。小室哲哉プロデュースによる「Body Feels EXIT」「a walk in the park」、最新鋭のR&B、ヒップホップを取り入れた「GIRL TALK」「Love Story」、さらに「Showtime」(ドラマ『監獄のお姫様』(TBS系)主題歌)、「Hope」(アニメ『ONE PIECE』(フジテレビ系)オープニングテーマ)といった新曲などを網羅した本作(3枚組全52曲。しかも2014年までの既存曲39曲は新録バージョン)から伝わってくるのは、自分のスタイルを自らの意志で選び、栄光のキャリアを勝ち取ったひとりの女性の軌跡だ。際立ったボーカル/ダンスのスキルを磨き上げ、周囲に媚びることなく、自身の生き方を真っ当しようとしている安室奈美恵。その堂々とした態度、ストイックな姿勢こそが、四半世紀に渡って熱狂的な支持を得ている最大の理由なのだと思う。

■ポルカドットスティングレイ『全知全能』 2016年秋に発表した『骨抜きE.P.』のリード曲「テレキャスター・ストライプ」によって一気に注目を集め(2017年11月6日現在YouTube上のMV再生数は760万回超え)、今年4月に1stミニアルバム『大正義』でメジャー進出。“来年は爆発的ブレイク間違いなし”と評されているポルカドットスティングレイの1stフルアルバム。作詞・作曲、映像、プロモーション戦略までを手がける雫(Vo / Gt)は現役のゲームクリエイターでもあり、その制作スタイルはとにかくユーザー重視。“踊りたい”“歌いたい”“共有したい”“拡散したい”といったリスナーの欲求に応えることを第一義としたうえで、“音楽、映像を含めて自分のクリエイティブをすべて発揮できる場所”として、このバンドを機能させているのだ。承認欲求と上昇志向を隠すことなく、自らのセンスとテクニックを存分に活かし、シーンを席捲。その在り方そのものがポルカドットスティングレイの魅力なのだろう。

■Little Glee Monster『OVER/ヒカルカケラ』 9thシングル『明日へ』がオリコンチャートで自己最高位の2位を記録するなど、順調な活動が続いているLittle Glee Monster(リトグリ)。今年3作目となるシングル『OVER / ヒカルカケラ』からも、現在の彼女たちの状況の良さが伝わってくる。TVアニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(テレビ東京系)オープニングテーマ「OVER」は“何が起こるかわからない未来に向けて進んでいこう”というリトグリらしい前向きなメッセージを刻むアッパーチューン。そしてスガ シカオの作詞作曲による「ヒカルカケラ」は<7つも上の大人のあなた>との関係を描いたラブソング。いつも少しだけ背伸びしながら表現の幅を広げ続けている、リトグリの現在地がはっきり見える10thシングルだ。

■コトリンゴ『雨の箱庭』 昨年秋に公開された映画『この世界の片隅に』の音楽で第40回日本アカデミー賞優秀音楽賞など多くのアワードを受賞、(ようやく!)その才能に多くの人が気付いたコトリンゴ。『birdcore!』(2014年)以来、約3年ぶりとなるオリジナルアルバム『雨の箱庭』でも彼女は、高度な音楽性と純粋な創造性に溢れたポップミュージックを描き出している。「いろんなことが絡み合いながら/少しずつたくましく成長してゆく、お庭のようになればよいなと思いながら考えました」と“koniwa”と名付けられたレーベルからリリースされる本作には、ジャズ、クラシック、現代音楽、エレクトロニカなど自由に行き来するサウンドメイク(特にストリングスアレンジは秀逸!)、日々の生活のなかで起こる小さくて大切な事柄を映し出す歌がしっかりと息づいているのだ。こんなにも豊かなポップスに出会えたのは本当に久しぶりだ。

■あっこゴリラ『GREEN QUEEN』 “あっこゴリラ”の由来は、リズムで会話するゴリラに魅了されたから。もともとはドラマーでトラックも自ら制作。クラブ、ライブハウス、アイドルイベント、MCバトルとどんなフィールドでもガッツリ盛り上げる一方、アフリカやベトナムでMVを撮影するなど、その活動は変幻自在にして自由そのもの。やりたいことを好きなようにやる! というスタンスは、コラボ配信シングルを中心とした本作『GREEN QUEEN』にもしっかりと示されている。ソウルフル&ファンキーなフロウがカッコいい「黄熱病 -YELLOW FEVER- × STUTS」、オルタナR&Bとトラップで遊び倒したディープなトラックにやられる「ゲリラ × 向井太一」、ジェンダーを巡る偏見と誤解を一刀両断、“超越した性”を体現する「ウルトラジェンダー × 永原真夏(SEBASTIAN X)」など音楽性もメッセージもめちゃくちゃ強烈!(森朋之)