衆院選の厳しい選挙結果を受け、報道各社の取材に応える希望の党の小池百合子代表(読売新聞/アフロ)

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 10月22日に衆議院議員総選挙の投開票が行われ、自公与党が合わせて3分の2以上の議席を獲得する圧勝に終わった。その要因はさまざま考えられ、多くの分析がメディアを賑わわせている。ところで、この結果を政治的視点ではなくマーケティング的に分析してみると、また違った見方ができるのではないだろうか。今回の選挙結果について、立教大学経営学部教授でマーケティングが専門の有馬賢治氏に話を聞いた。

●“迷ったら定番商品”を崩せなかった野党

「立候補者の選挙公約」を「サービス商品の内容説明」に置き換えると、選挙結果をマーケティング的観点から読み解けると有馬氏は解説する。

「有権者は立候補者から商品を購入するわけではありませんが、公約に共感・同意した立候補者に自身の一票を投票するわけです。この構図は、サービス商品の取引と類似していますので、有権者心理は消費者心理に置き換えても考えることができます。つまり、立候補者の公約なども市場における一種のサービス商品だと捉えて眺めることができる訳です。政党の選挙公約を企業からのメッセージ、立候補者を個別のサービス商品のブランドに見立てて、有権者の投票行動を消費者のブランド選択行動にあてはめることで、マーケティング的にも選挙が分析できるわけです」(有馬氏)

 そして、消費者がサービス商品を選ぶ決め手については、こう説明する。

「有形の商品と違ってサービス商品は無形ですから体験しないとわからない部分が多く、消費者は品質を予測して購買することになります。これまでの消費者(有権者)の経験と、サービスを提供する企業(政党)実績の比較などから購買(投票)の採否が判断されるわけです。そのなかで、自民党が今回多くの議席を獲得できた理由は、“迷ったときは定番商品”という消費者心理が働いたからではないでしょうか。日常の買い物でも、企業が信頼できる場合は、新商品であっても心理的抵抗感が少なくトライアルしてみようと思います。一方、無名企業の類似商品の場合は、同じ価格帯だとしたら十分に吟味できる情報がないと、購買のための決定打に欠けてしまうことになります」(同)

●「排除」発言で小池ブランドの株暴落

 一方、他党の批判を中心的に訴えていた政党や、選挙直前に離合集散して明確な政策を打ち出せなかった政党は、その政党らしさを示す「ブランド」のアピールを有権者に伝えられなかったのでは、と有馬氏。さらに、国外情勢も与党の追い風になったようだ。

「ご存知の通り現在日本は北朝鮮の核に脅かされており、その状況も考慮して今後のかじ取りを託す政党や候補者を選ぶことを有権者は求められました。そのような状況下では森友学園、加計学園問題のような一部の国内の事象への関心よりも、不安定な国外情勢において総合的で安定的な政策判断ができる内閣を有権者は信頼し、期待した結果が今回の議席数ではないでしょうか」(同)

 麻生太郎副総理兼財務相が選挙戦の大勝利について、「北朝鮮のおかげ」と発言したのも、適切かどうかは置いておいて、本音なのは間違いなさそうだ。このような情勢下、苦戦する野党のなかでも、企業でいうところのブランドイメージを著しく損なったのが小池百合子東京都知事率いる希望の党だ。

「周囲に味方の少ない状況にもかかわらず都知事に当選した実力からもわかる通り、小池さんはグリーンのイメージカラーを前面に押し出したり、有権者目線で話をしたり、本来政治家としてのブランディングが得意な人でした。ですが、今回の『排除』発言のクローズアップで、小池ブランドを大幅に下げたことは間違いないですね。これは、社長の失言で世間の反感を買い、ブランドイメージを損なう企業と同じパターンです」(同)

 一方、そんな野党のなか、立憲民主党の躍進も。

「Twitterのフォロワー数が政党の公式アカウントのなかで最多になるなど、SNSを巧みに使ったことと、党首の枝野幸男さんが訴えた『草の根』的選挙戦が、トップダウン的イメージをつくろうとした小池さんとは対照的で、国民に寄り添うボトムアップ型のイメージを有権者に印象づけられたことが奏功した印象です」(同)

 党によって明暗が分かれた選挙戦だったが、情勢にうまく乗れた、もしくは「党ブランド」をしっかり主張できた政党や候補者が笑う結果となったといえそうだ。これを考えると、政治家もこと選挙戦においては、一般企業のマーケティングを参考にしてもいいのかもしれない。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)