【車はAIと相性が悪い!(中)】管理職のための難しい話 機械仕掛けの基本

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■機械仕掛けのメカニズムの基本 「DOHC(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)」を聞いたことがある人は多いと思う。これはエンジンの重要な形式で、吸排気バルブを開けたり閉めたりする部品だ。古くは、プッシュロットを介して吸排気弁を動かしていたのだが、エンジンが高回転になるにつれて「プッシュロットのたわみ」が問題になり、正確にエンジン回転に合わせて吸排気弁を作動させることが出来なかった。現在の熱効率をギリギリまで高めていこうとするエンジンでは、出来るだけダイレクトに吸排気弁を動かすことを求められる中で、SOHC(シングル・オーバーヘッドカムシャフト)となり、さらに現在のDOHCとなっていったのだった。

【前回は】【車はAIと相性が悪い!(上)】管理職のための難しい話 AIの誤動作が怖い

 現在でもエンジンの最高回転数は、バルブサージング、つまり吸排気弁が踊ってしまって、エンジン回転数に同期できなくなり、それ以上回らなくなる現象で決まってくる。つまり「プッシュロッドのたわみ」と「エンジン回転」の関係性は、スプリングの強さ、プッシュロットの材質の問題などが絡むので「計算式で正確には表現できない」であろう。設計のシミュレーションでは計算式で入力するので、計算不能な部分だ。おそらく現在では、経験値を計算式に置き換えて使用しているのであろう。材質・形状でも変化する無限の組み合わせを、全て計算式に置き換えられているとは考えにくい。

 機械式メカニズムには、どうしても「物理的な」制約が出てくる。タイヤが取り付けられるハブベアリングには大きな荷重がかかり、「消耗品」とも考えられている。そのタイヤの軸を受け止める「軸受」にベアリングが使われ抵抗を極力なくしている。タイヤは高速で回転するが、それを受け止める軸受けベアリング、つまり「ハブベアリング」には、わずかな隙間が必要だ。

 ハンドルを切ると前輪が曲げられ、コーナリング・コースを決めることが出来る。「パワーステアリング」がなかったころ、腕の力だけでハンドルを切っていた。新車から少し経つと、ハンドルの直進部分が軽くなってきて、直進していると少しだけ左右に振られていることに気付いた。常時使う直進部分のギヤだけが削られてきて、隙間が広がってくるのだ。この直進部分の遊びが気になり、ハンドルギアの隙間を調節してもらって狭める。すると今度は、カーブを曲がるためにハンドルを切ると、常時使わない部分にひっかかり、重くなって元に戻る力がなく、腕でハンドルを戻さねばならなくなる。これは、現在のパワーサポートがあるシステムでも、手ごたえは感じないが起きることなのだ。

 つまり、機械式仕掛けには劣化もあるのだ。電子部品にも劣化はあるが、それは半導体などの劣化であり、機械式メカニズムと本質が違う。機械式メカニズムでは動く部分は全て消耗品なのだ。

 このようなことをプログラムで組まれたタイミングで制御動作を試みても、機械部品が絡んでいる限りは、誤動作が起きる可能性があるのだ。現在は、人間が実際に感じて調整している部分が多大であると認識することだ。