ビッグローブは「SIM替え」市場の喚起に向けて人気俳優を採用したCMを展開

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 KDDIは傘下の格安スマートフォンサービスを活用し、グループ全体でスマホ顧客を囲い込む体制を固めている。「UQモバイル」は通信サービスの格安SIMと端末のセット販売に注力。「ビッグローブモバイル」はSIMだけを提供し、端末はそのまま使えるメリットを訴求する。メーンの「au」を含めて多様な戦略を推進し、スマホ顧客の包囲網を敷く。ただ、格安ブランドの強化策はもろ刃の剣でもある。au顧客を奪い兼ねないジレンマは付きまとう。

 「使い慣れた端末を替えずに毎月の利用料を抑えたい需要がある。それに応える『SIM替え』市場に力を注ぐ」。ビッグローブ(東京都品川区)の有泉健社長は力を込める。

 競争の激しい格安スマホ市場で戦う差別化策として、端末は替えずに格安SIMに入れ替えて毎月の利用料を抑える「SIM替え」の顧客に狙いを定めた。ただ、戦略を練る際に意識したのは競合相手だけではない。念頭にはKDDIグループ内でのすみ分けがあった。

 KDDIは1月にビッグローブを子会社化した。グループの顧客基盤を拡大し、その顧客に対しKDDIの多様な商材を提供する狙いだ。顧客基盤を拡大するにはグループ間の競合は避ける必要がある。このため「『au』や『UQ』にはない色付けを意識した」(有泉社長)と明かす。それが「SIM替え」だったというわけだ。

 一方、UQコミュニケーションズ(東京都港区)の「UQモバイル」は端末とSIMのセット販売を展開。メーカー製品のCPUなどをカスタマイズした独自端末の提供に力を注ぐ。

 2017年秋冬商戦には新たに2機種を投入した。UQはSIM単体の販売にも対応するが「端末とのセット販売の方が割合は多く、その割合は増えている」(UQコミュニケーションズ)としており、ビッグローブと顧客を分け合う。

 このほか、KDDIグループではジュピターテレコム(JCOM)が顧客向けに格安スマホ「JCOMモバイル」を展開する。「au」を含めた四つのブランドで顧客基盤を拡大する構えだ。

 ただ、傘下の格安スマホが存在感を増すことでau顧客の流出が加速するリスクは残る。「(顧客単価が下がるため)グループ内であっても『au』から格安ブランドへの流出は痛い」(KDDI幹部)というのが本音だ。このため格安ブランドでは、縄張り争いを回避しようとする動きも見られる。

 ビッグローブモバイルは10月、au回線によるSIMの提供を開始。NTTドコモに加え、au顧客も一部の端末はSIMロックを解除せずにSIM替えできる体制を整えた。ただ、ドコモ回線は固定通信サービスなどとセットで契約すると利用料を割り引く特典があるが、au回線は適用外だ。

 その理由について有泉社長は「au回線は提供し始めたばかりで帯域が潤沢な分、ドコモ回線に比べて通信速度の品質が良い。このため特典は用意していない」と述べるが、歯切れは悪い。au回線のSIMはau顧客からの流入の可能性が高いことから、積極的にau回線を訴求しない措置にも見える。

 ビッグローブモバイルは契約件数の目標について、20年までに100万件を掲げる。KDDIグループの顧客基盤を拡大するための必達の目標だ。
(文=葭本隆太)