クリスティン・リンス氏

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 自然エネルギー財団の報告書によると、欧州大手電力12社は2011―16年の間に、合計1億キロワット以上の火力発電所を閉鎖や売却した。これは日本の全電源の4割に相当する。再生可能エネルギーへの代替が進み、海外の産業界では大胆な構造転換が起きている。

 再生エネに関わる機関が連携する仏シンクタンク「REN21」は、「自然エネルギー世界白書2017」で「現在と未来の電力会社に共通点はなく、ビジネスモデルの変革が必要」と指摘。そして政策的には「電力、熱、運輸の各部門が連携できる体系的アプローチが必要」とした。

 どのようなビジネスモデルが再生エネの普及を支えるのか。日本企業には太陽光パネルなど機器単体を売る事業形態からの脱却が迫られる。

REN21事務局長のクリスティン・リンス氏に聞く
 ―日本は再生エネの後進国でしょうか。
 「日本は後進国ではない。16年の再生エネへの投資額は世界4位だ。日本の当事者が再生エネが少ないと感じるのは当然だが、外国人の立場から見ると日本は前進している。ただし太陽光発電に偏りすぎており、風力拡大の動きが鈍い」

 ―日本では再生エネのコスト低減で進んでいません。
 「電力会社は発電・送配電部門が分離されると多くの状況が変化し、再生エネの価値に気づくだろう。欧州の電力会社は、安価な電源になると見込んで再生エネに経営資源を投入している」

 ―再生エネの普及には、どのような政策が必要ですか。
 「日本の固定価格買い取り制度(FIT)は買い取り価格が高すぎため、再生エネは高いという認識が生まれた。電力会社が買い取り価格を決めるという入札制度は、コストを低減する効果がある。拘束力のある目標も必要。一番は、普及に向けた安定した枠組みだ」

 ―海外製の太陽光パネルの輸入増加に批判があります。
 「自国の産業の発展を考えるのは当たり前のこと。だが、機器の製造は人件費の安い新興国に移っていく。日本や欧州は蓄積した知見を統合すべきだ」

 ―セクターカップリング(分野連動)が重要ということですか。
 「その通りだ。冷暖房、交通などの機器全てをつなぐ、全体でエネルギーを効率化するシステム思考が、イノベーションを生む。日本と欧州のビジネス機会だ」

【記者の目】
 「自然エネルギー世界白書」によると16年、再生エネの導入量は前年よりも増えたが、投資額は減った。コスト削減の成果だが、機器メーカーは過当競争に入ったのかもしれない。自動車、冷暖房などのエネルギー機器を束ねるセクターカップリング型事業は、新しい市場をつくる可能性がある。日本企業も名乗りを上げてほしい。
(松木喬)