金融庁が入る霞が関コモンゲート

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 新潟県に本店を置く地方銀行、第四銀行と北越銀行は、経営統合の時期を当初計画していた2018年4月から10月へ半年間、先送りする。統合の前提となる公正取引委員会の審査が長引いているためだ。

 両行は持ち株会社、第四北越フィナンシャルグループを18年4月に設立し、経営統合することで基本合意していた。しかし、統合に関する最終契約を今年10月から18年5月に延期する。両行は持ち株会社にぶら下がった後、20年に完全な合併を目指している。

 両行が統合すると、新潟県内の貸出金におけるシェア(市場占有率)が5割超に高まり、融資先企業への貸出金利が高止まりする恐れがある。両行が統合しても、金融機関同士が競争する場面がきちんと維持されるかどうかを公取委はチェックしているのだ。

 地銀の統合をめぐっては、九州の地銀、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)と長崎県最大手の十八銀行の統合でも公取委から待ったがかかり、7月に無期延期を決めている。

 九州のケースでは、長崎県の親和銀行を傘下に持つふくおかFGが十八銀行と経営統合すると、長崎県内の融資シェアが70%超と高くなり過ぎることを理由に統合を認めない公取委との溝が、いまだに埋まっていない。

 ふくおかFGと十八銀行は16年2月に統合について基本合意し、17年4月に経営統合する予定だった。しかし、公取委の審査を通るメドが立たず、統合時期を10月まで半年先送りしていた。それでも、公取委が抱く「長崎県で銀行間の競争がなくなる」との懸念を拭えず、統合時期を無期延期することになった。

 公取委は、十八銀行と親和銀行の合併によって市場の寡占化が進むことを懸念している。長崎県は壱岐、対馬、平戸、五島など離島が多いが、離島ではシェア100%の独占地域も出てくる。公取委は、独占力を備えた1強の誕生で競争が阻害され、選択肢を失った利用者の負担が増すと判断したのだ。

 公取委が問題視しているのは、1強が圧倒的なシェアを握ることだ。長崎市内にはメガバンクが進出しているため圧倒的なシェアにならないが、ほかの地域は離島と同じように100%の独占状態になる可能性が高い。

 ふくおかFGの統合を、地銀の広域再編モデルケースにすることを考えていた金融庁の構想は挫折した。

●金融再編の推進者、森長官の挫折

 金融庁の森信親長官は、官邸の強い要請で留任し、3年目に入った。麻生太郎財務相、菅義偉官房長官の意向とされる。

 15年7月に金融庁長官に就任した森氏は、金融再編の推進者として知られる。地方銀行のトップに対して、ことあるごとに「経営統合は重要な選択肢」と迫り、大型再編の種を蒔いてきた。

 地銀は、人口減少や地域の産業の停滞といった根本的な問題を抱えている。今後10年でみると、経営環境はより厳しくなる。金融庁幹部は「ゆでがえるのような状況になる前に、将来像を考えてほしい」と地銀を説き伏せてきた。森氏が目指すのは、県境を越えた地銀の広域再編だ。だが、有力地銀の頭取は、懐疑的な見通しを示す。

「北越銀行に対して統合を“指導”したのは金融庁です。新潟を突破口にして、九州でも公取委に風穴を開けるという高等戦術ですが、うまくいくかは疑問です」

 別の有力地銀の元頭取は「第四・北越が2次審査入りしたと公取委が発表した時点で、ふくおかFGの案件はアウトだと直感した」と本音を漏らす。公取は7月に第四・北越の第2次審査入りを公表したが、この時点で審査の難航が予想されていたのだ。

「今回、(第四・北越が)延期を決めたのは遅きに失したかもしれない」との指摘もある。長崎に続いて新潟でも統合が頓挫すれば、金融庁が描く金融再編のシナリオは根本から崩れることになる。
(文=編集部)