学習にストップウォッチを取り入れるメリットとは?(写真 : eskay / PIXTA)

あなたのお子さんは「集中力」がありますか? 勉強でも仕事でも言えることですが、集中力があるのとないのとでは、かかった時間が同じでも結果に大きな違いが出てきます。その毎日の積み重ねが2年、3年、5年と進み、年月が経てば経つほど膨大な差になっていきます。

それがわかっている親としては、子どもの集中力のなさにイライラすることも多いと思います。ところが、そんな悩みをどの家にもあるたった2つのアイテムを駆使することで解決できます。

中学2年生の長男と小学4年生の次男のママであるEさんの事例でご紹介します。

ストップウォッチとタイマーを活用しよう


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Eさんの次男が3年生のときの様子はこうでした。勉強をなかなか始めない。始めてもダラダラしていて、計算ドリル1ページに30分以上かかる。1つ終わって休むとまた始めるまでに時間がかかる。夕食前から勉強を始め、夕食を挟んで、宿題と通信教材を全部やり終わるまでに2時間以上かかることもある。そんな毎日で、Eさんはイライラして叱ることが多かったのですが、あるとき私のブログ「親力講座」を読んでストップウォッチとタイマーを使ってみようと思い立ちました。

そして、まず取り組んだのが計算ドリルの攻略です。計算ドリルは1ページに20問あるのですが、「この子は20問を一気にやるのは無理」とわかっていたので、蛍光マーカーを使って5問ずつ枠で囲みました。そして、子どもに「最初の5問は何分でできるかな?」と聞きました。すると、「う〜ん、5分」との答え。Eさんが「じゃあ、目標タイムは5分。実際は何分でできるか、タイムを計るよ」とあおると、子どもも「待って、待って、まだ準備ができてない。消しゴムも出しておかなきゃ!」と俄然やる気モード。

そして、「用意、ドン」と始めたら、ものすごい集中力を発揮してあっという間に終了。なんと、タイムは1分30秒。Eさんが「すごいじゃん」と褒めると、子どももうれしそうな様子。丸つけをしてみると全問正解。Eさんが「はい、満点で25点ゲット」と言うと、「やった」とまたうれしそうです。

さらに、「次の5問はどうかな? 第2ステージだよ。新記録が出るかな?」「待って、待って……。はい、いいよ」「用意、ドン」ということでやってみると、今度は1分20秒であっさり新記録の達成。ところが、丸つけをしてみると1問間違えていたので、新記録は取り消しに。ここで親子で大いに残念がったのですが、何とも言えない一体感を感じたそうです。

そして、この調子で第4ステージまで進み、その後は毎回新記録が出て、しかも毎回満点。合計得点は95点ということになりました。かかった時間を合計すると全部でたったの5分17秒でした。

よかったことを言語化することが大事

そこで、Eさんは「あなた、すごい集中力があるね」と褒めました。すると、子どもも「えへん」という感じでうれしそうな様子。実は、こういうひと言が非常に効果的です。これによって「集中力って大事なんだ。自分は集中力があるんだ」というよい思い込みができるようになるのです。このように、子どもの頑張りに対して、何がよかったかをはっきり言語化してあげることが大切で、これを教育の専門用語で「価値づけ」といいます。

これをきっかけに、Eさんはストップウォッチの活用に目覚め、いろいろな使い方を工夫し始めました。計算ドリルの次に取り組んだのが通信教材です。これは計算ドリルのように似たような問題がたくさんあるわけではないので、Eさんは問題の数で区切っても意味がないと思いました。そこで、「この子の集中力は5分くらいしか続かない」とわかっていたので、蛍光マーカーを使って5分でできそうな量ごとに枠で囲みました。そして、実際にやらせてみると、予想が外れて5分よりかなり短い時間でできたり、逆に時間がかかったりすることもあるそうです。でも、子どもは以前よりはるかに集中するようになりました。

このように、Eさんは、通信教材をやるときしばらくはストップウォッチを使っていたのですが、あるとき思い立ってタイマーを使ってみました。というのも、通信教材ではいろいろな種類の問題が出てきて、難易度も違うので、「新記録を目指すというのはちょっと違うかな」と思ったからです。それより、「1つのステージを5分」という目標タイムを決めてあるのでタイマーのほうが向いているのではないかと考えたのです。そして、タイマーを使ってみての子どもの感想は、「ストップウォッチより緊張する」とのことでした。

ここまでの実例を見て、大切なポイントが2つあると思います。1つは課題を小分けして、1回ごとの量をマーカーで囲って明確に示すことです。「とりあえずこれだけやればいいのだ」とはっきりさせて、ハードルを下げてあげることが大事なのです。

大人の仕事でもそうですが、大量の課題を目の前にすると気持ちがくじけそうになります。ところが、少量ずつ区切って小分けすれば、できそうに思えてやる気が出てきます。

もう1つはストップウォッチとタイマーで時間を意識させたことです。ストップウォッチの場合は新記録を出したいという気持ちがモチベーションになり、タイマーの場合はブザーが鳴るまでにクリアしたいという気持ちがモチベーションになります。

次に、Eさんは、宿題でよく出る教科書の音読に集中させる方法を考えました。よくあることですが、それまではEさんの次男も、「はやく読み終わりたい」という気持ちから早口でいい加減な読み方をしていました。ですから、読み終わるまでの時間をストップウォッチで計るという方法では、さらに早口でいい加減に読むようになるのが目に見えていました。そこで、タイマーをセットして、5分間だけ集中して音読させてみました。すると、ゆっくりはっきり大きな声で読むようになりました。

急いで読んでも、どうせ5分間は読まなければならないので、早口で読む必要がないわけです。5分間では全部読み終わらないこともありますが、約束を守って途中でも終わりにするそうです。そして、次の日はその続きから読み始めます。ごくたまに、子どもが自主的に最後まで読むこともあるそうですが、Eさんから「どうせなら最後まで読みなよ」などとは言わないようにしているそうです。

できるという自信にもつながった

次に漢字の書き取りです。Eさんの子どもは苦手で、いつも途中でやめてしまい、手いたずらにふけったり漫画を読み始めたりしていたそうです。そこで、タイマーを使って、「2分書いたら2分休む」を繰り返す“サンドイッチ方式”にしてみました。すると、思ったとおりよく集中できるようになり、休み時間も入れて書き取りノート1ページを15、6分で書けるようになりました。それまでは1時間近くかかることもあったので、格段の進歩といえます。

この頃になると、子どもの中に「ストップウォッチやタイマーを使えばできる」というよい思い込みもできていたようで、「この自信も大きかった」とEさんは回想しています。

次に、勉強への取りかかり自体を早くするためにストップウォッチを使ってみました。次男は夕食前に勉強することにしているのですが、以前は夕方5時のチャイムで遊びから帰ってきてから、なかなか勉強を始められませんでした。そこで、遊びから帰ってうがいと手洗いを済ませた時点で、「さあ、今から勉強の用意をして、鉛筆が持てるまで何分かかるかな? ストップウォッチで計るよ。用意、ドン」とやってみました。すると、鉛筆が持てるまで45秒でした。

それから毎日計るようにしたら、しばらくは毎日新記録が出続けました。最終的には10秒前後に落ち着いていて、もうこれ以上早くするのは物理的に不可能という状態です。昨日は10.38秒、今日は10.57秒など、10分の1秒とか100分の1秒レベルの違いで盛り上がっているそうです。

さらにうれしいことがあって、弟の様子を見ていた中学生の長男も、自らストップウォッチとタイマーを使い始めたそうです。長男のやり方は、タイマーを使って30分勉強したら15分休むというサンドイッチ方式が多いそうです。同じくタイマーを使って、筋トレ10分、夕食30分、食後のゲームやスマホが60分、趣味の観葉植物の世話が10分、朝の登校の仕度が4分30秒などとやっているとのことです。

生活に変化が

そして、次男も4年生になった頃から自分で工夫をし始めました。朝、目覚まし時計で目が覚めたら、すぐタイマーを3分にセットして、タイマーが鳴ったらすぐ布団から出るようにしています。目覚まし時計だけでは無理だけど、自分のお気に入りのマイタイマーだと頑張って起きられるそうです。遊んだものを片づけるときは「3分で片づける。用意、ドン」、翌日の仕度をするときは「4分で明日の仕度。用意、ドン」です。最近では、自分でドリルや通信教材の問題を枠で囲んで小分けしたりもするそうです。

今、Eさんは言っています。「ストップウォッチとタイマーを使い始めてから、子どもたちの生活はかなり変わり、とてもうれしいです。ただ、正直なところ『今の子は本当に忙しいな。これでいいのかな』と思うこともあります。でも、同時に『まあ、仕方がないか。ダラダラするのを見て叱り続けるよりいい。それに、やるべきことを集中してやれば、自分の時間も生み出せるから』とも思います」

なお、子どもに自分専用のストップウォッチとタイマーをあげると、使いこなすのがうまくなります。選ぶときは子どもが使いやすいものを選んでください。子どもは、操作が難しかいとか文字が小さくて見にくいなどのちょっとした理由で、苦手意識を持ってしまうこともあります。

また、タイマーはデジタル式のものが多いですが、アナログ式のものもあります。「タイマー アナログ」をネットで検索すれば出てきます。アナログ式は、残り時間の量が視覚的にとらえやすいという長所があります。反面、60分計が多いということと、秒単位の数字が出てこないという2つの理由で、5分以下の短い時間は計るのには向いていません。ぜひ、グッズも工夫しながら試してみてください。