【車はAIと相性が悪い!(上)】管理職のための難しい話 AIの誤動作が怖い

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 今回は少々難しいお話である。AI自動運転が進む中で、自動車のような「機械式メカニズム」と「電子制御」は、元々相性が悪いと見ておくべきだ。現在の開発、品質管理の状態では、メカニズムの必然性から、想定外の不良が一定数発生してしまう。その理由をよく理解しておこう。

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 現在、メーカーにおける新車検査が「形骸化」していることが明らかになってしまったが、本気で新車検査する必要性があるのだ。自動車メーカーから形骸化した新車検査の見直し、つまり緩和方向での見直しを求める声が出てきているが、むしろ実質的な検査に強化しなければならないだろう。

 機械のメカニズムで動く部分すべてでは、ある程度の「隙間」が必要だ。例えば、ギアがかみ合って動いている部分で全く隙間がないと、動かなくなってしまう。シャフトと軸受けの間にも隙間が必要だ。ロットを繋ぐにも、つなぎ目が動く場合隙間が必要である。具体的な例では、アクセルペダルのクランク部品とのつなぎを締め過ぎると、動かなくなってしまう。また、ロット自身、部品自身の「たわみ」を考慮に入れなければ機械メカニズムは成り立たないのだ。

 この「隙間」(工学的には遊び)の必要性と、実際に部品加工するときの加工方法による「バラつき」と合わせると、机上のコンピュータ・シミュレーションの時に使う計算式が、現実と一致することはまずない。また、組み立ての誤差と、力が加わる方向性などを加味すると、「やってみるしかない」と言うのが現実だ。そこに現場・現物主義の必要性があり、少しでも油断すると「不良品」を作り出してしまうのだ。

 実際には、今回の日産自動車のように社員から、また経営陣から「まさか!」と声が出るような「意外な落とし穴」が発見されることが多い。後で客観的に見れば当然のことなのに、「どうして行ってこなかったのか!」と叱られるようなことだが、本人たちの視野には入っていないのだ。おそらくはカルロス・ゴーン会長の視野にも入っていなかったのだ。これが「品質管理」の実際で、この誤りを防ぐ努力は本当に「疲れる」作業である。

■今回は制御プログラムの問題点を除いて考えてみる

 機械の制御プログラムは、OSを使用しないようにしてきた。なぜなら動作が遅くなってしまうからだ。それはゲーム機に始まって、電子制御では「CPUの計算スピード」が問題になる。概念的にプログラムが正しくても、OSを介して思うように動かないゲーム機では興味が半減してしまう。そのためゲーム機では、昔から画面表示に特化し、スピードを上げたCPUを使用してきた。

 画面(ディスプレイ)は、元来CPUとは配線で繋がれた外付けの部品だからスピードが落ちるのだ。パソコンほどの部品の連結ならばIT技術者にも想像がつくが、自動車ほど多数の部品の連結では致命傷になりかねない。そのため、汎用プログラムは便利なのだが、余計な計算が増えてしまうOSを使うことは処理スピードが遅くなるので制御プログラムでは使用してこなかった。それは、機械式メカニズムの隙間を理解できる誤差ではないのだ。

 OSだけでなく、コンパイル言語を使わない場合が多かった。マシン語に近い、せいぜいマクロアセンブラでプログラムし、スピードを落とさない工夫をした。このようなIT技術者の常識では当然の感覚であるが、機械技術者にとっては、実は常識外、別世界の感覚なのだ。機械式メカニズムの動作誤差は、電子のスピードとは同じ感覚では捉えられない。そのIT感覚で組んだプログラムと、機械の動作誤差は時間的、寸法的に別世界であり、プログラムの概念だけでは完全な「机上論」に終わってしまう。

 この問題は、CPUのスピードが上がった現代でも、やはり注意が必要だ。また、プログラムのミス、つまり「バグ」の存在を注意しなければならない。今回はこのバグ問題はないものとしても、基礎的に存在する「機械式メカニズム」と「プログラム制御」での問題点を取り上げる。