共同記者会見を終え、米国のトランプ大統領(左)と握手する安倍晋三首相=6日午後、東京都港区の迎賓館(代表撮影)

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 トランプ米大統領による初のアジア5カ国歴訪の幕を開いた日本訪問は、「北朝鮮」「貿易不均衡是正」と並ぶ今回の歴訪の重要テーマである「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、米国が日本とともに主導的役割を果たしていくことを確認し、トランプ政権が目指すアジア政策の方向性を明確に打ち出す機会となった。

 今回のいわゆる「インド太平洋戦略」が元来、日本政府の発案である事実は、ワシントンで日米関係に携わる専門家などの間でも広く浸透しつつある。

 その上でトランプ政権が今回、日本に同調する形でこの戦略を推進する姿勢を打ち出したのは、日本の開国を促したペリー米海軍提督の浦賀来航や、18世紀末〜20世紀初頭に活躍した米歴史家、アルフレッド・セイヤー・マハンによる一連の海洋戦略論にみられるように、太平洋やインド洋の海洋国家同士による自由で開かれた通商圏の確立は、米国の歴史的なアジア戦略の根幹でもあるためだ。

 その中で今回、トランプ氏が日本を最初の訪問国に選んだ背景には、米国が「地域の安全と安定に向けた礎石」(ホワイトハウス高官)と位置づける日本との強固な連携の下でこの戦略を推し進めていく姿勢を印象づけ、この先に控えるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や東アジアサミット(EAS)の場で日米が主導して議論を展開していく思惑が込められている。

 トランプ氏は一方、6日に日米企業トップを前に行った演説で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について「正しい答えではない」と述べ、復帰の意思はないことを強調した。

 また、アジア情勢に詳しい日米関係筋は「インド太平洋戦略は中国の『一帯一路構想』の対立概念ではない」と指摘する。

 しかし、米国によるTPP離脱を奇貨として中国が経済圏の拡大を図っているのは明白な事実であり、アジア太平洋での米国の影響力回復は急務だ。2国間の「自由で公平、互恵的な貿易」を唱えるトランプ政権が、今回の戦略でこうした課題をどう克服していくのか、具体的な道筋は必ずしも明確でない。

 「中国は、今回の戦略はオバマ前政権の『アジア回帰』と大して変わらないとみている」(関係筋)との指摘も出る中、今後の戦略をどう実質的な成果に結びつけるのか、日米首脳の出方が注視される。(黒瀬悦成)