「日本のワークライフバランス、高度成長期のまま」海外ではkaroshiがおなじみに

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 10月上旬、今年が2回目の年となる2017年版「過労死等防止対策白書」(通称、過労死白書)が厚生労働省から公表された。その白書によると、仕事でのストレスなどが原因で起こった死亡事故と自殺未遂は合わせて191件、前年度の調査より2件の増加となっている。また、鬱などの精神的ダメージを受けた件数においては、なんと498件を数えている。

 これまでも、大企業の従業員が心身ともに疲れ果てて自殺したり、過労が原因で心臓発作などを起こして倒れたりしたニュースは、いくつも報道されてきた。電通の新入社員の過労自殺によってやっと重い腰を上げた感のある厚労省だが、白書を見る限り、日本の労働社会の風潮を変えていくにはまだまだ時間がかかりそうだ。

◆海外にも過労死や長時間労働はあるが……
 海外のメディアで過労死のニュースが伝えられるとき必ず、karoshi (death by overwork)と書かれる。英語圏でも通用する日本語は「sushi」「ramen」「tsunami」と色々あるが、「karoshi」もその一つとなっているのだ。英語には、過労死に当たる単語はない。そのため、日本語がそのまま使われ、英語の説明がつけられている。

 しかし、実は過労死は日本に限ったことではない。加えていえば、残業や長時間労働は日本だけの問題ではない。問題は、日本の長時間勤務が驚くほど一般化していることにある。海外でも長時間労働はあるが、日本には「仕事と私生活とのバランス」という観点が欠如していることが往々にしてみられる。

 ビジネス・インサイダー誌は、第二次世界大戦後の日本の目を見張るほどの経済復興は長時間働く労働力に支えられていたと、日本における長時間労働の歴史を振り返る。しかし、高度経済成長期が終わった現在でも「日本における仕事と私生活のバランス図は、まったく向上していない」と続ける。

 同記事によれば、アメリカでは労働人口の16.4%が週に49時間以上の長時間労働をしている。一方、白書によれば、日本では20%以上が長時間労働をしており、回答者の半数が有給休暇を取っていないとのことだ。

◆遅い政府の取り組み
 これらの問題に対し、プレミアムフライデーなどの政府の取り組みを紹介しているのが、シンガポール最大の新聞、ザ・ストレーツ・タイムズだ。同紙は、プレミアムフライデーに対しての批判や調整などが行われたことに対し、「たとえ結果がすぐに最適ではなかったとしても、労働と私生活のバランスをとるという『哲学(思想)を伝える』ことを目標としている」という、経済産業省のスポークスマンのコメントを伝えている。だが、同紙がその記事に書くように、「(取り組みは)少なすぎて、遅すぎる(too little, too late)」なのである。

◆人間の命と仕事
 この3月には、多くの感動をもたらすはずの国際的祭典であるオリンピックのスタジアムの建設を担当していた23歳の男性が、過労がもとで自殺している。過労死された方の肉親が涙ながらに語るように、人間の命より大切な仕事というのは存在しないのである。日本のライフスタイルはアメリカなど、欧米からの影響を非常に強く受けている。なぜ、労働面に関してはアメリカ化することがそんなに難しいのだろうか。