【編集部コラム】自信に満ちた鬼木フロンターレでも乗り越えられなかった壁

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▽タイトルに手が届きそうで届かない。川崎フロンターレはまたしても壁にぶち当たった。

▽11月4日に埼玉スタジアム2002で行われた2017JリーグYBCルヴァンカップ決勝のセレッソ大阪戦。川崎Fは0-2で負け、クラブ史上初のタイトル獲得を逃した。

「勝てなかったことは本当に悔しいですし、自分の力不足を感じています。何が何でも選手たちにタイトルを獲らせてあげたいという思いがありましたけど、なかなかそういう結果に結びつけることができず残念であります」

▽今シーズンから川崎Fを率い、「クラブに初載冠を!」との重責を託された鬼木達監督はC大阪との決勝戦後、そう敗戦の弁を絞り出した。

◆自信に満ちた決勝前日
(C)CWS Brains,LTD.
▽それもそのはずで、過小評価するわけではないが、決勝の相手は、自分たちと同じようにタイトルに無縁だったC大阪。Jリーグ最多タイトル数を誇る鹿島アントラーズでなければ、次点のガンバ大阪でも、浦和レッズが相手でもなかった。それだけに、悔しさは一入だったはずだ。

▽さらに付け加えれば、近年に経験したタイトルマッチという場数の面においても、C大阪よりも川崎Fの方に分があった。両クラブの監督と選手を交えた前日記者会見でも、鬼木監督はある程度の手応えと自信に満ちていた。

「今年、『絶対にタイトルを獲ろう』という思いの下、キャンプをスタートさせた。なので、タイトルの懸かった試合を戦えることを本当に幸せに思う。選手全員の力でここまで上がってきたので、是非ともタイトルを獲って、フロンターレの歴史を変えたい」

◆充実感と成熟度が自信に
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▽鬼木監督は、今シーズンから前任の風間八宏監督(現名古屋グランパス監督)の後任として川崎Fの監督に就任。風間監督の下で良くも悪くも“攻撃偏重”のチームに、キャンプ時から“激しさ”と“守備意識”の植え付けに着手した。

▽その頑張りは、シーズンが進むに連れて、選手の戦いからも見て取れるようになっていった。さらに、新加入のMF阿部浩之、MF家長昭博もフィットの兆しを見せ、鬼木監督自身も試合を追うごとに采配の部分で指揮官らしさに磨きがかかっていった。

▽充実感と成熟度が増した中で、チームとして掴み取ったC大阪とのタイトルマッチ。内容を追うばかりに2007年と2009年の決勝で涙を呑んできた川崎F一筋15年のMF中村憲剛の前日コメントからも、“鬼木イズム”の浸透度具合が感じ取れた。

「ここで勝つために1年間やってきたので、良い試合というよりも勝つ試合をしたい」

◆改めて痛感させられた力不足
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▽しかしながら、夢はまたしても儚く散った。結果は0-2で、チームにとって通算4度目の準優勝。試合後のミックスゾーンで取材陣のインタビューに応じた中村自身も、「正直、自分の中でもわからない」と何が足りなかったのか首をかしげるほどだ。

▽記者席から試合を見ていると、川崎Fの面々は動きが硬かった。その中で、DFエドゥアルドの処理ミスから大会史上最速となる47秒での失点。前日の取材対応で「一発勝負なので、立ち上がりはすごく大事になる。気合が入りすぎてもダメだし、テンションが高すぎてもダメ」と話していた中村の言葉が悪い形で的中した。

▽早々の失点は、リード後のベタ引きで守備に徹してきたC大阪の対応にも乗じて、川崎F陣営に焦りの気持ちを助長させた。ボールポゼッションを高めて相手の狭いスペースに鋭くパスを入れるが、一向にゴールをこじ開けられない。シュートチャンスが巡ってきたかと思えば、ボールは枠の外か、甘いコースにしか飛ばなかった。

▽その中で、鬼木監督は、3つの交代カードで流れを変えようと知恵を振り絞った。だが、MF阿部浩之を投入する際には、MF大島僚太を下げるのか、MFエドゥアルド・ネットを下げるのか、テクニカルエリアでやや迷う姿も。チーム全体で迷いが生じていた感が否めなかった。

▽そして、後半アディショナルには前がかりに出た隙を突かれ、カウンターからMFソウザにトドメを刺される一発を被弾。川崎Fのタイトルを懸けた戦いは、終戦を告げられてしまった。

▽改めて痛感させられた力の足りなさ。鬼木監督は試合後、「力不足」の具体性を求められると、「やはり1つは交代の部分も含めて、もっともっとパワーを出せたのではないかという思いがあります」と考えられる範囲で敗戦理由をそう導き出した。

◆真価が問われる今季残り3試合
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▽川崎Fには、明治安田生命J1リーグ優勝というタイトルの可能性が残されており、戦いを終えるにはまだ早い。首位に立つ鹿島との勝ち点差は「7」。残り3節ということを踏まえると、厳しい状況に変わりはないが、まだ逆転優勝の可能性がないわけではない。

▽代表ウィーク明けにホームで行われる第32節では、ガンバ大阪と対戦する。あとは、選手たちがこの敗戦を受けて、どう立ち直り、どう糧にして真の強豪へとのし上がっていくかが大事になる。鹿島だって、G大阪だって、浦和だって、あらゆるタイトルを簡単に手にしてきたわけではない。強豪にのし上がる背景には必ずタイトルマッチでの敗戦がある。

▽「今日の負けで全てが終わったわけじゃない。自分たちがやってきたことがなくなるわけでもない」と、自身に言い聞かせるように語気を強めた中村の言葉は正しく、C大阪とのタイトルマッチに敗れたからといって、チームとして築き上げてきたものが一瞬にしてリセットされるわけではない。

▽継続は力なり――シルバーコレクターという汚名を返上する時はまた必ずやってくるはず。このチームは既に他クラブのファンをも魅了する攻撃的なサッカーを体現している。足りないのは、壁にぶち当たった後のリアクション。今シーズンの残されたリーグ戦3試合の戦いぶりでチームとしての真価が問われそうだ。

《超ワールドサッカー編集部・玉田裕太》