難しいシュートは得意とする青木。イージーな決定機をしっかりモノにできれば得点数はさらに伸びるだろう。(C)SOCCER DIGEST

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[J2リーグ40節]岡山0-1名古屋/11月5日/Cスタ
 
 成長と課題のどちらもが、しかも色濃くピッチに現れた90分間だった。
 
 後半に岡山のロングスロー攻勢を受けて苦戦した名古屋は、前半に奪った青木亮太のゴールで久々の無失点勝利を得た。しかし、指揮官も述懐したように「もっと楽な試合にできるチャンスがあった」ゲームでもあった。
 
 それはそのまま「青木が」と主語をつけ足してもよい展開だったと言えるだろう。3度あった決定的なチャンスのうち、一番難しいシュートだけを決めた背番号23は「それ、みんなにも言われたんですよ」と苦笑いする。
 
 だが、1-0の勝利は、青木が1-0に“してしまった”ものだと表現しても、言いすぎではないほどの存在感を、彼は見せるようになってきてもいるのだ。
 
 青木が難易度の高いシュートを得意としてきたことは、今季ここまでで挙げた11得点を振り返れば一目瞭然である。ホーム長崎戦で挙げた身体能力を生かしたヘディングシュートに始まり、夏の5試合連続6得点はどれもまさしく“ゴラッソ”と呼ぶにふさわしいインパクト抜群なものばかり。
 
 しかし、変幻自在のドリブルテクニックからは、さぞシュートも技巧派なのかと思いきや、シュートはむしろパワー系。足の振り幅の小さいフォームから体幹の強さを生かしてボールを打ち込む故に、シンプルなシュートは意外に苦手な傾向がある。
 
 それはおそらく、成功率の低い場面のほうが思い切れるからだろう。岡山との一戦でも、前半と後半に1回ずつGKとの1対1があったが、一度はもたついてGKに阻まれ、もう一度はゴールの枠を大きく外している。普段の青木を見ていれば日常茶飯事なのだが、僅差の試合ではやはり決めてほしいという気持ちも強くなる。
 
 本人もそれは重々自覚しており、「ここからまたワンステップ上がれるように、ああいう決定機はしっかり決められるようにしたいですし、ここからの試合でも大事になってくると思います」と神妙。

 玉田圭司、小林裕紀、佐藤寿人と大先輩たちがお膳立てしてくれた得点シーンをアウトサイドでの難しいシュートで仕留めたのは見事だが、それができるなら、という目にも応えていかなければいけない選手だ。外した決定機の数を思えば、今ごろは得点王争いをしていてもおかしくないのだから。
 ただ一方で、岡山戦は青木の成長を実感する試合でもあった。

 特筆すべきは個人の判断力の面である。キックオフから青木は攻撃の際、極端なほどに中央寄りのポジショニングをとってプレーしていた。時には守備の局面ですら左サイド寄りでプレーしていることもあり、まるで個人の判断とは思えないほどの思いきりぶりだった。

 だが、これは彼がシーズンを戦ってきたなかでの“経験則”に基づくプレーだったというから驚きだ。
 
「3バックの相手は、ボランチの横のスペースが空くんですよ。そこでフリーになれるとシーズンを戦っていくなかで感じていましたし、岡山はワイドの選手があまりプレッシャーに来なかったので、中央よりにいればフリーになれるなと思っていました。そうやってプレーするためのバランス感覚は、身についてきたと思いますね」
 
 先の得点シーンは左サイドからのマイナスの折り返しをペナルティエリア左側のエリアで合わせたもの。フリーでのシュートだったことを思えば、青木の目論見は最高の形で結実したことになる。
 
 まだまだ軽いプレーの目立つ若手だが、J2のタフなリーグ戦のなかで臨機応変な戦い方を身につけてきたのはチームとしても頼もしいところだ。決定機を外すのは、それだけチャンスに顔を出しているということでもある。
 
「すべては自分たち次第」という哲学を持つチームでなくとも、“それ”を決めるか否かは自分次第。選手としての確かな進歩と、スコアラーとしての未熟さ、伸びしろを感じさせる男は、残り2試合の勝負どころで、どんな仕事を果たしてくれるのだろうか。
 
取材・文:今井雄一朗(フリーライター)