リーダーになるなら二回は海外勤務をやるべき

 ーそれは自社で20ー30代の頃から選抜して幹部候補教育していくのか、米国のように他社から“経営のプロ”としてCEO(最高経営責任者)を引っ張ってくるのか。柳井さんとか日立のCEOを引き受けますかね。
 「嫌だって言うんじゃない(笑)。まぁ、両方です。例えば米ゼネラル・エレクトリック(GE)は昔から自社で育てていくことを伝統とする素晴らしい会社だけど、『GEデジタル』を作った時から数多くの人材を外から引っ張り込んでいる。その経営資源をうまく使っていくために、GEだってそのほかの海外企業も、人材ミックスや組織改革を年中やってるじゃないですか。そういう試行錯誤をやっていかないと。日立でも、最近は若いうちに海外の子会社に送り込んでマネージャーをさせてみたりしているけど、まだまだトレーニングする機会が少ない」

 ー中西さんが米国のHDD(ハードディスク駆動装置)子会社の立て直しにトップとして送り込まれたのは60歳近くだったかと。
 「年齢が絶対というわけではないけど、50代じゃもう遅いよ。将来、リーダーになろうと思ったら二回は海外勤務をやるべきだ、と言ってます。一回は外国人のボスの下で働く、二回目は外国人のボスになる。僕の最初の海外は、欧州法人の代表。あの経験はすごく大きかった。工場出身者がいきなり輸出営業のファイナルポジションですから。1998年ー2000年はDRAMで食っていけなくなる半導体産業の変わり目の時で、標準品を売っていればいい従来型の輸出営業じゃダメだ、という想いからの人事だったと受け止めています」

 「世界のトップレベルの経営者は、デジタルエコノミーに限らず幅広いテーマで常に議論していますが、欧州駐在中は、米国とはまた違う独特の多様性を経験しました。当時の最大顧客はフィンランドのノキア。先方と10人くらいの会議をやると、日本人は僕一人で、ノキア側もフィンランド人は一人か二人で、エンジニアはデンマーク人、インド人だったり、購買はフランス人とか。外国人は結構できっこないことでも『できる、できる』と主張して、自分から仕事を取りに来る。逆に、日本人はできる仕事があっても、自分からは仕事を取りに来ない文化で、その差は大きいと思いますね」
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若い人に大きい仕事をやらせて欲しい
 ー中西さんは大きな仕事をしたいと思って日立に入社したとおっしゃっています。最近の若い人たちはそういうモチベーションを持っているように見えますか。
 「10年くらい前は、すごく内向き志向だと感じた時期もありましたが、最近は意欲の高い人が多いですよ、特に女性は。でも、入社した時に指導する人が、スキルばかりを教えると良くないと思っていて、若い人にこそ、大きい仕事をやらせて欲しい。そのほうが面白いんだよ。僕が最初に配属された大みか工場(茨城県日立市、現大みか事業所)は、伝統ある日立工場(同、現日立事業所)などからあぶれた人を集めてできたようなものだから(笑)、反骨というか自由にやらないと生きていけなかった。上司がなんといおうと、声を大にして、お客さんがこう言ってますから、と言えば通ってしまう雰囲気もあって。でも最近の大みか事業所は、IoTの主力拠点なのにエスタブリッシュになり過ぎているので発破をかけています。常に壊していかないとダメなんだよね」
経理のメカニズムから変えよう

 ーGEは2011年くらいからデジタル革命に向け企業カルチャーの変革に大きく踏み込みました。それでも最近はなかなか株価が上がらずジェフ・イメルトCEOの退任が発表されました。従来の損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)は、モノの生産や移動する数字が中心です。コネクティブな社会では企業価値を測る尺度も変わってくるのでは。