画像提供:マイナビニュース

写真拡大

●最初は楽しいロボット、その先にある「実用性」の壁

ソニーがイヌ型ロボット「aibo」を戌年の2018年1月11日に発売する。その予約が11月1日に行われたが、その日の受付分は即完売だったようで、ソニーの「aibo復活」を心待ちにしていた人が多かったようだ。

筆者の自宅には、3年間で100万円以上のコストがかかる、ソフトバンクの「Pepper(ペッパー)」と、シャープのロボット型携帯電話「ロボホン」がある。正直に言って、aiboの購入もかなり迷ったが、今回はとりあえず様子見することとした。

○100万円かかるのに「ポンコツ」

実際、家庭にロボットが入ってくることは、最初の数週間ぐらいは確かに楽しい。ロボットが色々喋ってくれるし、踊ったりしてくれるのは、未来の生活を先取りしているように感じられる。しかし、これが1カ月、2カ月経ってくると、ロボットの動きにも飽きてしまうため、だんだんと電源を入れなくなってしまうのだ。

ロボット向けのアプリが雨後の筍のように増えるわけでもなく、アプリによって劇的に面白くなるわけでもない。さらに言えば、家事を手伝ってくれるわけでもない。個人向けロボットは、日用品としての生活必需品でなければ、趣味の領域にもなっていないのが実情だ。

ペッパーがその典型だが、その存在を明らかにした時、動画などで「未来のロボット」という期待感をユーザーに与えすぎたのが敗因だ。実際に稼働させると、とてもポンコツすぎて、ソフトバンクの技術力を疑いたくなってくるほどだった。特にダメなのが「日本語会話能力」だ。

こちらの喋っていることを全く理解してくれない。こちらの意図とは異なる捉え方になるだけでなく、一方的にトンチンカンな発言をしてくるから、思わず「イラっ」とさせられるのだ。ロボットの専門家に一度、話を聞いたことがあるのだが、相手が人型ロボットの場合、人は人間と同じような振る舞いをどうしても期待してしまうのだという。

ソフトバンクの開発者はかつて、ペッパーのことを「3〜5歳児だと思って接してほしい」と話していたように思う。つまり、「人型ロボットだからといって期待しないで欲しい。もともとそれほど賢くなく、これから進化から大目に見てね」というのが本音だったようだ。

しかし、ユーザーとすれば3年間で100万以上のコストを負担するのだから、こちらの喋った内容をそれなりに理解し、きっちりと会話を返してくれるロボットを期待してしまう。最初は無理でもそのうち進化していくかと思いきや、何カ月待っても進化した様子を実感できない。

今では、アメリカからやってきた小さな6000円程度のスピーカーの方が流暢な日本語を話し、こちらの聞きたいことを理解して、検索して、答えを返してくれるようになった。結局、ペッパーは「期待外れのポンコツ」として、部屋の片隅で長いこと電源を入れられず、埃をかぶってしまう存在になってしまうのだった。

●イヌ型「aibo」が優れている理由

そうした中、ソニーがaiboを12年ぶりに復活させてきた。今回のaiboを見て、ソニーが「考えているな」と思わされたのが、aiboをあえてイヌ型として作り込んで来た点にある。動きやデザインがさらにイヌっぽくなっただけではない。

当然、今の技術をつぎ込めば、イヌ型であっても日本語会話機能を載せることもできるだろう。しかし、開発を担当したソニー AIロボティクスビジネスグループ長の川西 泉氏は「日本語を話すことはかなり検討した。前回のAIBOはイヌ型とは言っていなかったが、今回はイヌ型。なので、日本語は話さない」と話す。

11年前までのAIBOは「イヌっぽいロボット」だったが、今回は紛れもなく「イヌ型ロボット」という位置付けだ。イヌをロボット化したものであれば、日本語で会話できなくても仕方あるまい。しかし、こちらが喋ったことが少しでもaiboに伝わり、例えばこっちに向かって来たり、おすわりしてくれれば、飼い主としてはとても嬉しく、愛らしい存在になることだろう。

ソニーが本格的なロボット事業に再参入するにあたり、人型ではなく、あえて12年前のaiboを復活させてきたのは、こうした「ユーザーの期待値を下げる」という狙いがあるのではないか。人は相手が「イヌ」だと分かれば、相手に求めるハードルは一気に下がる。しかし、こちらに何かしてくれた時の喜びは人に対するものの何倍にもなるはずだ。

aiboがなかなか進化しなくても「イヌだから仕方ない」で納得するし、逆に留守宅の見守りをしてくれたり、家電連携をするようになったりしたら、「なんて優秀なワンちゃんなんだ。うちのコはかわいい」という愛情がさらに増すことだろう。

ペッパーは「偉大な起業家である孫社長が惚れ込み、世界をリードするIT企業であるソフトバンクが放つ、未来の生活を変え、人々の感情を読み取ることができるロボット」というイメージが先行した一方で、中身は全くもってのポンコツだったために、ユーザーが「裏切られた」という感情に繋がった。

一方、ソニーは「aiboはイヌです。かわいいでしょ」というスタンスから入っているので、ユーザーの「ロボット」に対する期待値は低く、すんなりと生活に入ってくる可能性は高い。ただ、当然、ユーザーからすれば、ロボットに対して、飽きてくるタイミングが必ずやってくる。

その時、aiboはイヌというコンセプトを維持しつつ、「家族として離れられない存在」になるのか、「生活必需品」になるのか。いずれにしても、ユーザーを飽きさせない工夫が今後の課題となりそうだ。