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「メンテナンス=維持管理」「リフォーム=改修・模様替え」、住宅産業界は新しい言葉を使っては、新しいニーズを掘り起こすことを常套手段としてきました。維持管理に始まる一連の言葉はカタカナ言葉の方が一般的ですが、これは業界の思惑だけでなく、そもそも日本に住まいの質を維持し高める表現が乏しいことが原因ではないかと思います。つまり関心が薄かったのだと思います。

しかし昨今話題のリノベーションという言葉は、業界の思惑はどうあれ、今後の日本の住宅を考えるうえで、なかなか重要な言葉だと思っています。リフォームとどう違うかの厳密な定義はありませんが、新しい価値の創造のようにとらえられていると思います。

○これからはリノベの時代、その背景

日本の住まいの耐用年数は欧米に比較しておよそ25年と極端に短いことが、世界から資源の無駄、温暖化の原因等と問題視されてきました。ヨーロッパの石造りの住まいと比較すると木造中心の日本の戸建て住宅の耐用年数が短くても仕方がなさそうですが、同じ木造中心アメリカの75年と比較しても1/3でしかありませんでした。政府は長年、日本の住まいを長持ちさせることに腐心し、長期優良住宅制度の創設や優良中古住宅に対して様々な優遇措置を施してきました。現在は住宅の性能は向上しましたが、優良中古住宅の健全な流通面では、まだまだ未成熟な段階です。維持管理や性能の優劣にかかわらず、いまだ一律築年数で評価されるのが現実で、中古住宅の多くは本来持つ価値よりも極端に値下がりしてしまうのが実情です。

社会が変化するのにともない、戸建て住宅も時代に合わせてリフォームが行われてきました。しかし残念ながら、広いリビングなどへのニーズもあり、柱や壁を取り払い、耐震性能は低下する方向のものが多く、震災時にはそうした劣悪なリフォームが悲惨な結果をもたらしてきました。こうした現状の中で、リノベーションと言う言葉は、新しい価値に目を向けた点で期待が持てると思っています。耐震性の価値も合わせてとらえられるようになると、日本の住まいの考え方も大きく変わると思います。

不動産という資産を活用するには、今後リノベーションは重要な要素になるでしょう。リノベーションという理念には、「価値」に着目していることから、きちんと維持管理をし、建物の質を維持・高めていく意味合いも含まれているように思います。過去に何度もご紹介していますが、工藤夕貴さんの「ハリウッドリフォーム」は本来あるべきスタイルを端的に表しています。

※「ハリウッドリフォーム」

○住宅金融支援機構の『フラット35リノベ』融資

所定の性能向上リフォームを行った中古マンションを購入する場合、または中古マンションを購入し、所定の性能向上リフォームを行った場合に適用される融資で、金利Aプランは10年間、金利Bプランは5年間、フラット35の金利が0.6%優遇されます。

性能向上とは省エネルギー性、耐震性、バリアフリー性、耐久性・可変性があります。マンションの場合は耐震性や耐久性は難しいですが、事例を見ると照明をLEDにしたり、節湯水栓等に変えたりすることで金利Bプランが適用されているようです。

○資産価値を高めるリノベーションの事例

高いコストをかけて、業者に頼んでリノベーションをすると、自分たちが生活している間は満足かもしれませんが、後々売ったり貸したりする際には、投資した金額に見合う価格とはならないかもしれません。

有利なリノベーションのポイントは……

(1) 自分でできる範囲はDIYを厭わない

(2) 省エネ等、光熱費の節約できるもの、寄与するものを選ぶ

節水型・節湯型の機器や設備、2重サッシ・ペアガラス(※1)など※1 本来ガラスは共用部分なので、ペアガラスの場合は要注意。ガラスの種類は延焼上、法的に決っている場合があります。

(3) 一般的にも便利で快適と思えるものを選ぶ

例えば、幹線道路や鉄道に面していて音が気になる場合などは、2重サッシはメリットがあります。また、住まいを建て替える際の一番の要因は住まいの収納の量や使い勝手だそうで、特にマンションは収納が不足しがちで、しかも簡単に増やしにくいが特徴です。住みながら知恵を絞って使いやすい収納を工夫してみましょう。

○【事例】

■ 収納量の多い洗面化粧台

洗面化粧台の鏡裏の収納は、是非全面収納になっているものを選びましょう。洗面まわりは奥行きの浅い収納が多く必要です。

■ 高機能キッチン

食洗機・コンベック・浄水器・アイレベルバー・スライド収納・家電収納・巾木収納(脚立等)・IHなどを組み込んだキッチンなど。特にキッチン家電(炊飯器・ポット・電子レンジ・ミキサー・コーヒーメーカー・トースターなど)をきちんと収納できることがポイントです。

■ 収納の中の高機能化

使いにくい枕棚等を取り外し、ハンガーパイプを上下2段にすると収納は倍増します。奥行きが押し入れタイプのように850程度ある場合は、前後に2列ハンガーパイプをつけられます。高機能と言っても、細かく仕切りや棚をつけるよりは、むしろ逆にそうしたものは取り外して、ハンガーパイプを増やして、床周りはキャスター付きのプラスチックケースを置く方が使いやすいものです。キャスターが付いていれば、季節の入れ替えや防湿剤や防虫剤の管理も簡単です。

■ 洗面脱衣室の収納

洗面脱衣室はこまごまとしてモノがいろいろあります。アメニティグッズ、洗濯関連の洗剤やグッズ、下着、リネン、各種ストック品など、本来多くの収納が必要です。洗面化粧台を収納量が多いものに変えるだけでなく、家族の下着などの収納場所も洗面脱衣室にあると家事が楽になります。しかし洗面脱衣室に豊富な収納があるプランはほとんど見かけません。巾1センチ単位でオーダーできる組み立て収納もありますので、隙間を有効に活用ください。ポイントは安易な隙間家具を使わず、スペースに合わせて作りつけるか、サイズを細かく設定できる市販のシステム収納等を活用することです。隙間感を感じさせない収納がお勧めです。

多様性がますます広がると思われるこれからの時代、持ち家でも、将来も住み続けるとは限りません。買い替えを前提としてマンションを購入する場合もあるでしょう。立地の良いマンションを購入し、住みながら細々としたところを工夫していけば、価値も下がらず有利に売却できるかもしれません。割安感のある中古マンションを購入し、リノベーションで価値を高め、住み替えの時に高値で売ることを目指して少しずつステップアップしてみてはいかがでしょうか。それが成り立つ時代になってほしいものです。

<著者プロフィール>

佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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