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現在熟年世代の持ち家率は約80%です。以前は大都市への若者世代の人口流入も多く、若い世代は自分たちの住まいを確保する必要がありました。ですが、今は地方の人口が縮小し、また少子化もあり、都市部でも空き家が問題になる時代です。

若い世代は当然新たな生活スタイルがあり、必ずしも親が建てた家が自分たちのスタイルに合致しているとは限りません。昔は「多少不便でも、多少狭くても、ひとまず家が欲しい」だったと思いますが、現在は自分たちのスタイルが第一となっていると思います。また、「夫の両親の持ち家に住むよりは、賃貸でも自分の実家の近くで暮らしたい」が、女性の本音でしょう。そうして住まいが余っていきます。

○もし、使っていない住まいがあるなら

住宅には、使っていなくても固定資産税や維持管理費が必要です。建物だけでなく、庭などの手入れも相当な費用が掛かります。外観の維持管理は、防犯や住環境維持の面からも、怠ると隣近所からクレームがくることもあります。

思い出もあるでしょうが、対策は早めが肝要です。また、平成27年5月に施行された「空き家対策推進法」では、管理状態が悪い特定空き家に対して固定資産税の特例を付与しないことが盛り込まれています。人が住む住まいは固定資産税が1/6になっているのです。つまり危険な家屋を放置すると固定資産税が6倍になる可能性があるのです。

この対策は「自分が使う」「貸す」「売る」「しばらくそのままにする」の4つです。「貸す」は貸せるかどうかの市場性が問われます。賃貸や民泊などの市場性がない場合は、早々に売却して、多少なりとも売却益が発生したら、その資金の運用を考えてください。自分で資金を投じて取得した物件でない限り、不労所得の側面もあるので、なんとなく消費に使ってしまうのではなく、しっかり運用して資産形成につなげることが大切です。

○親の住まいを相続したら

「空き家対策推進法」では、相続により空き家になった住まいを売却した場合、譲渡益から3,000万円を控除できるようになりました。ただし、建物付きで譲渡する場合は耐震基準を満たす建物であるか、耐震リフォームを行って売却する必要があります。そうでない場合は更地にして売却することが条件です。

親の住まいの活用法は売却も含めて上記の4タイプ考えられます。相続人のライフプランニングを作成し、どの方法が最も資産形成に有利かを判断するのがベストです。ライフプランニングを正確に作成する労力は必要ですが、労力を厭っては、資産形成はできません。ライフプランニングを作成すると自分たちの弱点、つまり貯蓄残高が少なくなる地点がわかります。その部分を補強するには、相続財産をどう活用するのがベストかを考えます。単に最大の利益は何かの問題だけでなく、弱点をカバーするのにどの方法が最適かを考えます。また、売却して現金を手にしたら、いつの間にか消費に消えてしまうタイプであるのであれば、売却は先に延ばして当面賃貸等の活用を考える方が得策の場合もあるでしょう。

○親が健全な時が対策のチャンス

親の住まいは親が今後どうしたいかがポイントで、本来子供の出る幕はありません。それでも、一時期友人からの年賀状が判を押したように「介護の日々です」だったことからもわかるように、老後は子供を巻き込まないで過ごすのはなかなか難しいのが現実です。親を介護するために仕事を辞めて、子供の老後が貧困状態らに陥ってしまうことが社会問題にもなっています。

これからの時代は夫婦で働く必要があることから考えても、子供が親の介護ができる時代ではなくなりつつあります。そこで頼りになるのが資産である住まいです。親が心穏やかに暮らすためにも、親の老後が子供の安定した老後を奪わないためにも、住まいの活用は事前に話し合っておく方が賢明です。早い時期ほど、親の判断力も準備のためのエネルギーも十分で、対処がしやすいものです。老後の対策をせずにいざとなったら、子供の生活を脅かすようでは問題です。親の今後の暮らし方として、下記の事例は考えておく必要があります。ポイントは在宅で介護サービス等の利用で追いつかなくなった場合は施設に入らざるを得ない前提で住まいをどうするかです。

このまま死ぬまで自宅で過ごしたいのか、介護が必要になったら施設に入居するのか

夫婦どちらか一人になったらどうするのか

片方が要介護になったらどうするか

夫婦ともに要介護になったらどうするか

とは言っても、親に老後の話をするのは、気が重いものです。そこで、そうした話をする絶好のチャンスをご紹介しましょう。

定年時がチャンス、住まいを老後用に改善しよう

多くは自分たちの持ち物も一部実家に置いているのではないでしょうか。親が定年ということは、これから第2の人生に突入するということです。同時に60歳はまだまだ若く、現役の機敏さも判断力も持ち合わせています。実家にある自分たちの持ち物を処分しがてら、親が快適に暮らせるように断捨離を手伝ってみましょう。その機会に今後のことを話せばスムーズです。

親が大掃除の支援を頼んできたら

大掃除に駆り出されるようになったら、親の体力気力も衰えてきたということです。できれば大掃除だけでなく、初夏の衣替えの際にも、大掃除とモノの処分を手伝い、今後のことを話しあっておきましょう。大掃除を手伝うと、びっくりするくらい、日々の掃除が行き届いていないのがわかります。不健康ですし、掃除が行き届かない要因のひとつにモノがあふれていることがあります。定期的に断捨離を繰り返すことによって、親に将来のことを考えさせるきっかけになります。

親の介護が必要になったら

最初のころはさほど介護は大変ではないでしょうが、手伝っていくうちに介護度も上がり、次第に負担になります。最初が肝心で、介護が必要になったときが、しっかり話し合うチャンスです。

親の資産は親が今後の生活に活用するのが第一ですが、もしそれを受け継げるのであれば、最大限活用し、資産形成につなげましょう。田舎の住まいを処分するのに苦慮しているニュースを耳にしますが、田舎に住みたいニーズも少なくはないのです。維持管理をしっかりして、対策は早めが得策です。

<著者プロフィール>

佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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