セレッソ大阪がYBCルヴァンカップ初制覇。チーム一丸で初のタイトルを獲得した【写真:Getty Images】

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チーム力を底上げした「ルヴァン組」の存在

 4日に行われたYBCルヴァンカップ決勝。セレッソ大阪が川崎フロンターレとの熱戦を2-0で制し、クラブ史上初のタイトルを獲得した。悲願達成までの道のりは決して平坦ではなかったが、カップ戦の存在がチームの結束を一層強めた。決勝に出場したセレッソの選手たちが胸に秘めていた思いに迫る。(取材・文:舩木渉)

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 セレッソ大阪は4日、川崎フロンターレに2-0で勝利を収めた。舞台はYBCルヴァンカップの決勝戦。ついに長年の悲願だったクラブ史上初のタイトルを獲得した瞬間だった。

 これまで数々の名選手たちがセレッソにタイトルをもたらそうと奮闘してきたが、あと一歩のところで足踏みするばかり。近年はタイトル争いからこぼれるばかりか、J2での日々も経験した。そうやって積み重ねられてきた歴史を、今季のチームは見事に塗り替えて見せた。

 過去と比べて今季のセレッソに備わっていた一番の大きな違いは「一体感」ではないだろうか。どこかレヴィー・クルピ監督時代の奔放さが残っていたチームに、大熊清氏(現チーム統括部長)からバトンを受け取ったユン・ジョンファン監督は「規律」を浸透させた。

 トップチームはU-23チームの一員としてJ3を主戦場にする若手も含めれば40人近くにもなる、Jリーグ屈指の大所帯。さらにベテランからルーキーまで年齢の幅が広い集団に規律を植えつけるのは極めて困難だっただろう。しかし、それでもチームは一丸となった。そのために重要だったのがルヴァンカップだったのである。

 今季のセレッソは、J3を戦うU-23チームとは別に、J1リーグ戦での出場機会が乏しい選手たちを中心として「ルヴァン組」とも呼ばれる層が形成されていた。そこにはベテランの茂庭照幸や酒本憲幸、関口訓充、丹野研太をはじめ、若い秋元大地、木本恭生、新加入の福満隆貴らも含まれる。彼らにとってもルヴァンカップはリーグ戦で出番を得るための重要なアピールの機会になっていた。

 さらにU-18所属の若手なども起用しながら、毎試合のようにメンバーを変えてグループステージを4勝2分無敗の2位で切り抜け、北海道コンサドーレ札幌とのプレーオフステージも2試合合計スコア3-0と完勝。準々決勝では浦和レッズを撃破し、準決勝でガンバ大阪とのダービーも制した。

背負った責任の重さ。「ルヴァン組」への感謝

 だが、ユン・ジョンファン監督は決勝で現実的な選択を迫られた。タイトル獲得のためリーグ戦組中心のフルメンバーで臨む決断を下すか、「ルヴァン組」の尽力に報いるか。過去にセレッソの選手として目の前でタイトルを逃した経験を持つ指揮官が選んだのは前者だった。試合後の記者会見で、その理由を説明した。

「今日の試合のメンバーはすごく悩みましたが、タイトルを獲るためには何かを犠牲にしないといけないと思い、こういうメンバー構成になりました」

 最初は過密日程の対策と、より多くの選手にチャンスを与える目的で作られた「ルヴァン組」だったが、「ルヴァンカップに出場していた選手たちの走る姿、そして戦う姿勢が、リーグ戦に出ている選手たちにも大きな影響を及ぼした」と指揮官が語るほどにチームへの貢献度は高かった。

 結局ルヴァンカップ準決勝までで出場時間上位の5人、木本(12試合、1050分)、田中裕介、秋山大地(ともに10試合900分)、茂庭(9試合、803分)、リカルド・サントス(10試合、779分)のうち決勝の舞台でスタメンに残ったのは木本のみ。他のメンバーはキャプテンの柿谷曜一朗を筆頭に清武弘嗣、杉本健勇、山口蛍らリーグ戦で出場時間の長い面々だった。

 タイトル獲得を任された面々は、特別な思いを胸にピッチに立った。「ルヴァン組」から最後を預かった身としての責任と、それにともなうプレッシャーがあったと選手たちは明かす。

「(ルヴァンカップは)ベンチに1回も入っていなかったので、本当にここまで連れてきてくれた、ルヴァンで戦ってくれたメンバーに申し訳ないというか。しっかり責任を果たして、頑張らなアカンなというのはあった。負けたら本当にどんな顔すれば…顔見せられへんなと思っていたし、そういう不安は自分の中にあった」

 こう語るのは決勝の開始1分にゴールを決めた杉本である。今季リーグ戦19ゴールのエースは「(ルヴァン組には)本当に感謝していますし、相当悔しいと思いますし、だから絶対に俺らの方が気持ち強いと思っていましたし、それは1人ひとり思っていたので、今日必ず勝ってから、勝って、メンバーに報告したかった」と、ルヴァン組への感謝を語る。チームの結束が勝利を呼び込んだ。

「変わるかどうかはこれからの自分たちしだい」(清武)

 夏場には長期離脱を経験し、ルヴァンカップは準決勝まで3試合・136分間しか出場していなかった清武弘嗣も「ユンさんも今回の決勝のメンバー選考はすごく悩んだと思う」と指揮官の決断に理解を示し、「僕たちが感謝しなければいけないのはルヴァン組のメンバーがここまで戦ってくれたこと。そういうメンバーに僕たちは感謝しなければいけないと思いますし、本当に感謝しています」と杉本に同意する。

 一方、決勝はベンチスタートとなった「ルヴァン組」の1人、田中は試合から一夜明けてインスタグラムで「1戦1戦試合を重ねる中で、自分達が輝く場所はここにあるんだ。必ずタイトルをチームにもたらすんだ。その気持ちだけで戦ってきました。(中略)このメンバーで必ず結果を出したい。セレッソのために星をつけたいと思いプレーしてきました」と率直な思いを明かした。

 田中をはじめとして決勝の舞台でチャンスを得られなかったメンバーから思いを託された選手たちは、一丸となって戦い、責任を果たした。セレッソの選手たちの「感謝」は心の底から出てきた言葉だった。

 懸命に努力する選手たちを信じて起用し続けてきたユン・ジョンファン監督は「全選手が互いに助け合って、よく戦っている姿を見たら、本当にいいチームになっている気がします」と胸を張る。

 セレッソの選手たちは、初タイトルでクラブに歴史を刻んだ。表彰台からの景色を見て、ユニフォームのエンブレムに星をつける。この勝利の経験がもたらす財産はとてつもなく大きい。大舞台や重要な時に弱いと言われ続けていたチームは、常勝軍団へと変われるのだろうか。「セレッソがここまで激しくて戦える集団になったのは、ユンさんのおかげ」と語る清武は、これからもタイトルを獲得し続けるためには、これまで以上に1人ひとりの責任が重くなると考えている。

「変わるかどうかはこれからの自分たちしだいですし、またこれから星を増やしていけるのは今いる僕たちしかいないと思う。今年はまだタイトルを獲るチャンスがありますし、これからの残り1ヶ月半は(真の力が)試される。ここで満足したら終わりですし、また厳しい戦いが待っているので、これからだと思います」

 次なる目標は来年のACL出場権獲得と、天皇杯優勝だ。2018年元日、再び埼玉スタジアムの表彰台からの景色を眺めることができるだろうか。責任と感謝をチームで体現したセレッソは、ルヴァンカップ制覇で未来への一歩を踏み出した。

(取材・文:舩木渉)

text by 舩木渉