パリ、セーヌ川河岸に位置し、オルセー美術館やコンコルド広場から目と鼻の先にあるブルボン宮殿(下院の議事堂)。足早に歩くシャキッとしたスーツ姿の政治家たちを横切り、5分ほど石畳の道を歩くと辿り着いたのが、今回の取材先、女男平等担当副大臣の勤務地。白い立派な建物に緊張しながら足を踏み入れ、案内されたのがこの建物で一番重要な部屋。ドアを開けると迎えてくれたのが、オシャレな着こなしが印象的な女性でした。

今回、訪ねたのが今年5月に発足したフランス内閣で、女男平等担当副大臣を務めるマルレーヌ・シアパさん。2児の母、ブロガー、34歳の若さという異例の経歴をもち、女性がより良く生きやすい社会づくりのために奮闘するパワフルな女性。そんな彼女が、政治家として活躍するまでの道のりを伺いました。

マルレーヌ・シアパさん/女男平等担当副大臣

23歳で経験した「働くママ」の苦労

―ブログ兼ネットワーク「Maman Travaille(働くママ)」を立ち上げた経緯を教えてください。

私には2人子どもがいるのですが、1人目は23歳で出産しました。当時は広告会社で働いていて、朝早くに出勤し、夜遅くまで働くという生活。一方、保育所が子どもを預かってくれるのは18時頃までだったので、娘の世話をするために会社を辞めました。

そんなとき、私と同じように多くの同僚たちが仕事と家庭の間で葛藤していていることに気づいたんです。それで、働くママが効率よく毎日を過ごせるアドバイスを交換できる場を作りたいと思い「Maman Travaille(働くママ)」というブログを立ち上げました。夫婦間でのバランスの保ち方、保育所の空きスペースを見つける方法など、ママの悩みへのアイデアをみんなで分け合いました。

ブログは次第に働くママのネットワークとなり、1年に1回スピーカーを招いたイベントを開催し、政治家とママたちが交流する場を設けるようにもなりました。設立して約10年、今日ではフランス中に約1万人のメンバーがいる大きなネットワークになりました。

―若いママとして大変だったことはありますか?

当時は週に2回だけしか娘を保育所に預けることができなかったのですが、ブログの立ち上げや本の執筆で忙しく…。なので仕事の場など、どこに行くのにも娘を連れて行きました。すると子どもを連れているのは私だけということが多く、その場にいる人たちから「君の態度は真剣じゃない」と非難されることもありました。でも、子どもがいて、仕事をしないといけない。そんな状況で、これ以外に方法はありませんでした。

―その後も活動は広がり、子育て、ブログ兼ネットワークの代表、ジャーナリストとしての活動、小説やエッセイの執筆活動など、精力的に働かれていました。そんな中、バーンアウト(燃え尽きること)してしまいそうになったことはありましたか…?

自分自身が元気でないと、子ども、そして周囲の人に良いエネルギーを与えることができない

多くの女性は莫大な役割、そしてそれに伴ったストレスを抱えて日々を送っています。家庭、仕事、育児に自分のエネルギーのすべてを捧げ、自分自身の幸せや健康を考える余裕がなくなってしまう。それに、女性として美しくいたいのに、思い通りに自分をケアできないのはとても悔しいことです。

多くの女性がそんな状況ですべてをこなせない自分に自信を失ってしまい、バランスがうまく取れなくなって様々なことに不安を感じてしまう…。そこに降り注ぐのが、模範的な母親で居ないといけないという社会的なプレッシャー。私自身も、バーンアウトしてしまった経験があります。

だから、女性たちに少しでも罪悪感を取り除いてほしいと思っています。週に1度くらい、デリバリーの食事を頼んでもいい。料理を作らないでいい代わりに、ママたちが1日でも夜をリラックスして過ごせることが大切なんです。

ママだから、女性だからという意味でなく、すべて何もかもしたいことを叶えるのは、どんな人にとってもほぼ不可能。今の自分の生活にある状況を思いっきり楽しみ、少し余裕をもつためにも、何かを諦めることも必要だと思います。母親として、初めにまず自分のケアをしてから、子どものケアをしないといけない。もし自分自身が元気でないと、子ども、そして周囲の人に良いエネルギーを与えることは不可能です。

そんな私にとって元気の源は、大好きな執筆活動をしたり、「Maman travailles」のメンバーたちと話すこと。そうすると、とてもエネルギーが沸いてくるんです!

ママのネットワークでの活躍が認められ、異例の政界入り

―その後パリから約1時間の都市、ル・マンの副市長も経験していますね。

家族でル・マンに引っ越した時に、ちょうど市長が私の活動についての新聞記事を読んでくれていて。男女平等についての意見を聞きたいと言われ、会うことになりました。当時私は政党に入っていなかったので異例でしたが、それがきっかけで市政に携わることになりました。

ル・マンでは男女平等に関する行政サービスを開いたり、女性のためのフォーラムを実施するなどしました。

エマニュエル・マクロン氏(現フランス大統領)との出会い

―エマニュエル・マクロン氏と出会った時のお話を教えてください。

2016年にル・マンで開催したイベントに、まだ大統領になる前のマクロン氏を招待したんです。そこで、男女平等に関する統計データを基に私が分析して制作した書類と、自分が執筆した本を彼に贈りました。この出会いがきっかけでその後、マクロン氏の大統領選のキャンペーンにおいて、男女平等に関する政策の構想を任されるようになりました。それからの1年間は、何十ものワークショップをしにフランス中をまわり、私たちの目標を一生懸命伝えました。2017年にはマクロン氏が当選し、その後は現職(女男平等担当副大臣)に任命されました。

フランスの女性が生きやすい社会に向けて

―フランスの男女平等を実現するための、今後のプランを教えてください。

キャリアでの男女平等、性的暴行や性差別的暴力との闘い、街角など公共の場のセクハラ防止をメインに、取り組んでいます。

キャリアでの男女平等

・評判の悪い会社をトレーニング

男女平等に関する道徳が最も不評の10社に連絡をとり、平等についてのトレーニングを受けてもらいます。もしトレーニングへの参加を拒否した場合、会社名を公表するという仕組みです。

・保育所の透明化

フランスでは3歳から公立の学校(無料)に通います。一方、フランスでも保育所は空きスペースに限りがあります。

そこで、担当者によるコネクションを使った入園などの不正を防ぐため、子供を保育所に割り当てるシステムを透明化にする仕組みです。

・仕事の分野での性差

フランスでは、業界によって大きな性差があります。デジタル、情報学の分野での仕事は女性が少ないです。そして、もっと女性にこの分野へのトレーニングや教育をしていくべきだと思っています。女性が自分で会社を設立し、男性と同じ給料を得れるようなプランを築いていかないといけません。

セクハラ対策

・公共でのセクハラ行為

街角など公共の場でのセクハラを、その場で処罰できる法律の制定に向け取り組んでいます。

「政治に苦手意識を感じないでほしい」

―一般的に、政治に苦手意識を感じいる女性が多いかと思います。女性が暮らしやすい社会への願いを込めて、メッセージをお願いします。

政治の世界では、たしかに活動的な女性は少ないかもしれません。でも、「政治は難しい」と言っていると、女性は政治から遠ざかったままです。それに、出産のほうが政治の活動よりも大変だと思います。幅広い意見をもつため、政治の世界には男性と同様に女性が存在するべきです!

「女性が生きやすい社会」をつくりたい…!という真摯な想い。それこそが、大きな課題を実行すること、新しい道に進むことにも勇気を持って挑める理由なのかもしれません。

【マルレーヌさんから学んだ勇気をもって生きる秘訣】

・失敗を流さない。失敗を振り替えることは次の行動を成功させる早道。

・自分をケアすることで、周囲を幸せにすることができる。

・決めた目標は必ず達成する。