渋谷駅周辺の全景(「Wikipedia」より)

写真拡大

 今、東京の各地で大規模な再開発計画が急ピッチで進んでいる。その多くは東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を目指して開発されており、あと数年もすれば、東京はまさに様変わりすることになりそうだ。

 不動産への投資熱も高まり、まるで“五輪バブル”とでもいうべき状況に突入している。しかし、政府は景気回復をアピールするものの、経済成長は伸び悩み、好景気の実感は薄い。さらに、少子高齢化の進行によって住宅やオフィスの需要は先細りが避けられない。こうした状況に鑑みても、東京再開発のすべてが成功するとは限らないだろう。

 そこで、今進められている東京再開発のエリア別の評価を不動産コンサルタントの長嶋修氏に聞いた。

●「品川新駅エリア」は国際交流都市に

 東京の大動脈ともいえるJR山手線に、約50年ぶりの新駅が誕生する。現在の品川〜田町間に建設され、20年に仮営業が開始される予定だ。

 新駅の周辺には、JRの車両基地があった13ヘクタールほどの土地を再開発することでオフィスやマンションなどが建設されるという。JR東日本と都市再生機構による大規模な再開発プロジェクトとなる。ちなみに、この新駅のデザインを手掛けるのは隈研吾建築都市設計事務所だ。長嶋氏は、「もっとも有望」と語る。

「新駅のメリットは『近さ』です。羽田空港へのアクセスも良好ですし、隣の品川駅までわずか約0.9kmという距離。新幹線はもちろん、リニアの始発駅となる予定の品川駅と合わせて考えると、このエリアは東京の軸足のひとつとしてだけでなく、国際交流都市としても定着する可能性が高いでしょう」(長嶋氏)

 オフィスやホテルなどの商業施設が完成すれば、「誰もが注目する一大都市になる」(同)と予測する。

●「渋谷駅周辺エリア」は大人が遊べる街に再生

 この品川新駅に比べるとやや劣るが、大規模なビルの建設ラッシュでカオス状態となっている渋谷駅周辺の再開発も有望だという。

 まず、東横線跡地を利用し、18年秋にオフィスやホテル、商業施設が集結した巨大ビル「渋谷ストリーム」が誕生する。そして、現在の渋谷駅は3つの超高層ビルが複合する「渋谷スクランブルスクエア」に整備される。地上47階建ての東棟が19年に開業し、高層部には展望デッキが設置されて駅前のスクランブル交差点を見下ろせるようになるという。

「駅の乗降客数では品川に抜かれると思いますが、後背に田園都市線と東横線を抱える渋谷の強さは将来にわたって健在。オフィスが足りずに他駅へ分散したIT企業などが再度集積する可能性もあり、かつてのような文化的な魅力を取り戻せば、さらに強さを発揮するはずです」(同)

 以前ほど若者が集まらなくなり、流行の発信地としては衰退傾向にある渋谷エリアだが、新たなオフィスがオープンすることでIT企業などのビジネスパーソンが増え、大人が遊べる街として再生する可能性も高いようだ。

●「東京駅周辺エリア」は休日の賑わいがカギ

 オフィスビルの丸の内ビルディング、通称「丸ビル」は今年9月で建て替え後の開業から15年を迎えた。この丸ビルを筆頭に、この間の東京駅周辺の再開発によって建て替えられたオフィスビルは20棟以上に上る。

 さらに八重洲方面では再開発計画が目白押しで、八重洲口前には3つの超高層ビルが建設される予定だ。27年に完成予定の「大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業」では、地上61階、高さ約390mのオフィスビルが建つ。完成すれば、大阪・阿倍野の「あべのハルカス」を抜いて日本一の高さとなる。

 また、長らく修復・改装工事が続けられていた東京駅も、丸の内駅前広場の整備工事を残すのみとなっている。

「丸の内エリアは不動のオフィス街。開発が進むにつれて、魅力はさらに増すと思います。三菱地所が『丸の内再構築』を打ち出しており、商業施設などの充実によって休日も賑わうようになるかどうかがカギになりそうです」(同)

●都内の「五輪関連エリア」はインフラがパンク?

 名物のイチョウ並木、そして日本のスポーツの聖地として知られる明治神宮外苑も、新国立競技場の建設に伴って再開発が進められている。

 また、ほかの東京五輪関連施設でいえば、晴海に建設される五輪選手村が五輪開催後に5650戸のマンションとして売り出される予定だ。

 しかし、長嶋氏は「神宮外苑エリアは施設が新しくなるだけなので、特に大きな変化はないでしょう」と語る。

「ただし、晴海を含めた湾岸地区については、選手村だけでなく多くのタワーマンションなども建設が予定されているので、都心で働くニューファミリーの需要が高いと思います」(同)

 需要があるなら再開発は成功となるはずだが、急激に人口が増えると周辺の生活インフラがパンクしてしまうリスクもある。

「湾岸地区は駅などの整備・増築が遅れているので、すでに通勤ラッシュ時の混雑などが問題になっています。また、保育施設や学校といった子育て関連の施設不足も指摘されており、そうした不安が払拭されるかどうかがポイントになるでしょう」(同)

●「虎ノ門エリア」は超高層ビル3棟が立ち並ぶ

 虎ノ門周辺では、森ビルの虎ノ門ヒルズ 森タワーの隣接地に超高層ビル3棟が建設される予定だ。

 その3棟は、それぞれ「(仮称)虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」「(仮称)虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」「(仮称)虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」と名付けられ、「ステーションタワー」は20年に開業予定の東京メトロ日比谷線の虎ノ門新駅(仮称)と一体で開発中。「ビジネスタワー」は地下3階、地上36階のオフィスビルで、住居棟となる「レジデンシャルタワー」では約550戸の住宅が供給されるという。

 ほかにも、神谷町駅に近接した約20万平方メートルのエリアには、森トラストが国家戦略特別区域の特定事業として進める「東京ワールドゲート」が建設される予定で、「国際都市機能の中枢を担う」と鼻息が荒い。

「東京の摩天楼都市化を目指す森ビル肝煎りの大規模開発で、オフィスとしての魅力は十分ですが、問題は住まいとしての魅力です。『虎ノ門で暮らす』という魅力をどのように創出するかが、現時点では未知数です」(同)

 03年に開業した六本木ヒルズを筆頭に、かつて森ビルが進めた六本木の再開発事業は「ヒルズ族」と呼ばれる富裕者層を生み出した。虎ノ門でも、その再現を狙っているのかもしれないが、いきなり富裕層が急増するとも思えない。

 再開発が終わってみたら、「住んでいるのは中国人ばかり」という別の意味での「国際都市」になっている可能性も捨てきれないのだ。

 この虎ノ門周辺に限らず、何千億円もかけた再開発の成否を判断するには、数十年単位の時間が必要だ。ただし、“五輪バブル”の揺り戻しが直撃すれば、開業当初から閑古鳥が鳴くという事態もあり得るのかもしれない。
(文=ソマリキヨシロウ/清談社)