鉄鋼、輸入制限措置に警戒感
 鉄鋼分野では米通商拡大法232条(国防条項)に基づく輸入制限措置に米国が踏み切るかどうかに、日本を含む鉄鋼輸出国が神経をとがらせている。

 同条項は米軍需産業を衰退させ、国家安全保障上の脅威となる海外製品の輸入を制限する権限を、大統領に与えている。トランプ大統領は4月、同条項に基づき鉄鋼輸入の実態調査を商務省に指示。商務省が18年1月半ばまでにまとめる調査結果を踏まえ、同年4月半ばまでに対応策を決める。

 日本の鉄鋼業界も調査の行方を「注視している」(日本鉄鋼連盟の進藤孝生会長=新日鉄住金社長)が、目立った進展はない。トランプ政権が法人税率引き下げなどの税制改革を優先しているためとされるが、商務省が開いた公聴会や大統領宛ての書簡で「輸入制限に反対する意見が多かったことも影響している」(日本の業界関係者)と見られる。

 反対意見は地元の製缶業界やファスナー業界、鋼材輸入業者などにも広がっている。大統領はこうした情勢を見極めた上で結論を出すと見られ、今回の訪日で鉄鋼貿易が議題になる公算は小さい。

 輸入制限をめぐる判断には、最大の標的とされる中国の動きも影響を与えそうだ。北朝鮮に対する制裁措置で国際社会の協調体制が求められている今、中国を刺激するのは得策でないとの判断に傾くとの見方がある。中国共産党大会の閉幕を受けて同国政府が、輸出主導から内需主導の成長モデルへ転換する姿勢を鮮明にした場合も、米国の批判の矛先が鈍る可能性がある。

エネルギー「日本にプラスの話しかない」
 市場開放や規制緩和など摩擦が目立ちがちな日米関係だが、エネルギー業界では米国産液化天然ガス(LNG)のアジア向け輸出などでの連携に期待が集まっている。トランプ政権はLNGの輸出促進を掲げており、大手都市ガス首脳は「日本にはプラスの話しかない」と話す。

 LNGの輸出ではカタールが世界の3割を占め、豪州、マレーシアの3カ国で5割を超える。資源輸入国は価格や条件交渉で不利な立場にある。売買で売り主が買い主に第三者への転売を禁止する仕向け地条項に代表されるように制約が多い。

 米国は仕向け地条項を撤廃して輸出を拡大している。世界1位のLNG輸入国の日本としては米国産LNGのアジアへの普及を後押しして、LNG契約を多様化することで安定した市場づくりを主導する狙いだ。

 現在、日本が輸入しているLNGは価格が原油に連動している。投機対象でもある原油価格はボラティリティが高く、LNG価格もリスクにさらされていた。一方、米国産は「ヘンリーハブ」という指標に代表されるように、ガスの需給によって価格が決まるため、事業者は燃料を安定的に調達できるメリットがある。

 日本政府はアジアでのLNG普及に官民で総額100億ドルを支援していく方針を表明している。LNG船の受け入れ基地や発電所などの投資計画への日本企業の参画を促していく方針で、うまく進めば広範囲に恩恵がありそうだ。