海外で働く理想と現実

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日本を飛び出して海外で働いてみたい、そんな思いを持つ人がいます。その理由は何でしょうか。日本は息苦しい、日本はこれ以上の経済成長が望めない、自分を高めてみたいなど、さまざまでしょう。もちろん、ポジティブな理由であれば良いのですが、それが単なる逃避である場合も少なくありません。

語学力のいらない海外就職?

さらに、海外で働くには最大のハードルとして言葉の壁があります。それでも、英語も現地の言葉も不要な仕事があるとすればどうでしょうか。水谷竹秀の『だから、居場所が欲しかった。:バンコク、コールセンターで働く日本人 』(集英社)は、そんな外国語が不要な海外の職場で働く日本人たちを追ったルポルタージュです。なぜ、語学力が不要なのかといえば、彼らが対応するのは日本の企業が海外に設置したコールセンターのためです。家電製品の操作方法などのカスタマーサービス、通信販売の受付、さらには苦情受付など、一日中電話口に向かい合う仕事です。日本でそうした仕事をイメージするとなんだか息苦しさがあるかもしれませんが、本書で記される現場は服装髪型も自由でゆるさがあります。時給は600円ほどなので日本の最低賃金を下回りますが、物価が安いのでなんとかなる世界があります。

スキルアップは見込めない?

しかし仕事は完全にマニュアル化されており、単調な日々が続きます。スキルアップはまず望めない職場です。なぜ、そうした場所に人が集まるのか。これが本書の問いであり、著者は、それは「居場所」ではないかと仮説を立てます。人間は仕事をはじめ人間関係の中でしか生きられません。そのため居場所として、海外に外国語不要な日本の職場がある。そうした現実を知るためにもまずは手にとって損はない本です。さらに本書は海外のコールセンターから別の仕事をはじめた人たちについても追っています。海外就職、世界就職の実態を知る本としてもおすすめです。