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もくじ

ー M3 その時代のベンチマークとして
ー ガチンコ勝負の2台 M3 vs RS4
ー トルク重視のRS4 高回転型のM3
ー 拮抗するM3とRS4の動力性能
ー (番外編)M3のもう1台の的 CLK63

M3 その時代のベンチマークとして

M3はこれまで、BMWが掲げる高性能かつスポーティなイメージを内外にアピールするある種のショーケース的な役割を背負ってきた。

初代M3が登場してからの20年間、常にポルシェに比肩する性能を示して数々の伝説を創り上げ、自動車業界の最高レベルに君臨し続けてきた。

歴代のM3は各々その時代のベンチマークとして他社のクルマと比較され、判定基準として重用されてきたのである。

今までわれわれが見て、触れて、実際にステアリングを握ってきた歴代M3と同様、この新しいM3も時間をかけてじっくりと吟味すべきクルマだろう。

しかし、少なくとも最初の時点では、ひとつ前のモデルに比べてどれだけ良くなっているか、多少の疑問を抱かざるを得なかった。

というのも、この新型M3は言うまでもなく現行3シリーズのクーペを基本としており、そのベースは先代に比べてサイズが大きくなっただけではなく、重量が大幅に増加していたからだ。

コンセプトカーとしてジュネーブ・ショーでプレビューが行われてからわずか4週間後には第4世代のM3に関する情報のほとんどが明らかになった。

ここではまず、BMWから与えられたプレスリリースとスペック、そして事前情報を元に新型M3について解説することにしよう。すべては推測の域を出ないことを予め断っておく。

ガチンコ勝負の2台 M3 vs RS4

ご覧のとおり、素晴らしいルックスを持つ新型BMWの前には、2005年の発売以降、われわれの心を捉えて離さない1台のクルマが立ちはだかっている。

そう、アウディRS4だ。この筋骨たくましいルックスの怪物サルーンはスリリングなまでにエンジンパワーを効率よく路面へと伝え、しかも驚異的に速く、そしてドライビングは純粋に愉しい。

2台を隣り合わせに並べてみても、それぞれがガチンコのライバルであることはすぐには分からないかもしれない。少なくとも基本的なボディスタイルはまったく異なっている。

M3はまずクーペとコンバーチブルが発売されることが決定済みで、後者には3シリーズのオープンと同じく電動折り畳み式のハードトップが採用される。

これに対して、RS4はセダンとワゴンしか用意されていない。しかし、近い将来、この2台は真の競争相手となるべく宿命づけられている。

Mディビジョンがセダンを開発しているのはすでに明らかであるし、さらにM3としては初となるワゴンバージョンが後に控えている。一方のアウディ内部でも、新たに2ドアのRS5と、RS5カブリオレの計画が着々と進んでいるようだ。

将来のことを先取りするのはこのくらいにしておこう。ここで論ずるべきはM3とRS4の基本的な相違である。

まず、どちらも大人4人が乗れて十分な量の荷物を積載できるだけの車内空間を備えている点において共通している。高いポテンシャルを秘めつつ信じられないほど実用的で、日常のアシとしても十二分に使い物になるという点もいっしょだ。

寸法的にも、両者の間にはそれほど大きな違いはない。全長1418mm、全幅1817mm、全高1418mmと、BMWのほうがアウディよりもそれぞれ30mm長く、1mm広く、3mm背が高い。寸法上で注目したいのはM3のホイールベース(2761mm)で、これはRS4に比べて96mmも長い。

M3のエクステリアは細部に至るまでコンセプトカーを忠実に反映したものになっている。たとえばM6と同様にカーボンファイバーで補強されたプラスティック製ルーフの採用は、前後重量比を最適化し、かつ重心を下げるのにひと役買っている。

外見はRS4に比べて明らかに派手で、その筋肉質な造形は威嚇的ですらある。

トルク重視のRS4 高回転型のM3

新型M3の第一の特徴は、旧モデルに使われていた3.2ℓ直列6気筒エンジンに代わって搭載される4.0ℓのV型8気筒エンジンだ。

開発責任者のゲルハルト・リヒターは「ゲームに残るためには単純にもっと大きなエンジンが必要だったのです」と、理由を述べている。

すでにM5用の5.0ℓV10エンジンの熟成が進んでいるので、弟分に当たるV8が同じ90度のシリンダーバンク角やその他多くの要素を共有している事実は別に驚くべきことではない。

このV8ユニットはMディビジョンのエンジニアリングが誇る傑作だ。

4ℓ級のエンジンとしては信じられないほど軽量で、単体重量は先代の直6に比べて15kgも軽い202kgにおさまっている。最高出力は420ps/8300rpm。これは現在でもZ4 Mに使われている旧型の直6より77psも高い値である。

最大トルクも旧型より3.6kg-mアップしており、40.8kg-mを3900rpmで発生するが、6500rpmまで回してもまだ32.6kg-mが確保されている。

しかしRS4のエンジンも負けてはいない。こちらはS4用の4.2ℓ90度V8をベースに、内部部品の徹底的な軽量化を図りつつアウディ自慢の直接筒内噴射システムを盛り込んだもので、最近の記憶に残っているどのアウディのエンジンよりも際立って緊張感の高い性格に仕上がっている。その結果は?

M3と全く同じ420psを、しかも500rpm低い回転数で発生する。

アウディのエンジンで特に光るのはトルク特性である。5500rpmで43.8kg-mと、それは新型M3をなんと3.0kg-mも凌駕しているばかりか、39.4kg-m(BMWの最大値より1.4kg-m少ないだけ)を、わずか2250rpmから得ることができる。

しかしBMWにはひとつ明確に有利な点がある。それは車体重量だ。1585kgという値はアウディより65kgも軽い。その結果、M3のパワー・ウェイト・レシオは1トン当たり265psとなり、RS4は少々見劣りする1トン当たり254psとなっている。

拮抗するM3とRS4の動力性能

新型M3は依然として後輪駆動を遵守しているが、油圧制御式Mデファレンシャルの改良により、極限的な状況ではリアホイールのどちら側でも100%のロックアップが可能になっている。

これに対してRS4は、アウディ自慢のトルセン四輪駆動システムで武装。どちらも6段マニュアルが現時点では唯一の選択肢だが、BMWは目下、別の選択肢としてデュアルクラッチ式トランスミッションを開発中らしい。

ストレートでの全開加速の面では、両者の間に違いと言えるようなものはほとんどない。新型M3は間違いなく、V8エンジンが持つ潜在的能力を最大限に発揮するようなギア比設定がなされているはずだ。

公称の0-100km/h加速タイムは4.8秒(先代比マイナス0.4秒)と強烈で、加速能力に不満な点はほぼ存在しないに等しい。そして、驚くべきことは、アウディがすでにRS4でまったく同じタイムを叩き出しているという事実である。

ちなみに、両者とも最高速度は250km/hでリミッターが作動するようになっている。

歴代のM3のライバルに対する最大のアドバンテージは、優れた反応の敏捷なハンドリングであった。最新のM3ではフロントのトレッド幅を22mm広げ(1538mm)、さらにリアを14mm広げて(1539mm)本当の意味でアグレッシブなスタンスとなっている。

サスペンションは今まで通りの、マクファーソン・ストラットのフロントとマルチリンクのリヤという組み合わせだが、そのジオメトリーは大幅に変更された模様だ。硬さのレベルを3段階に可変できる電子制御ダンパーが初めて(オプションで)用意されるのもトピックだ。

さて、新型M3は、かくのごとき洗練を極めた各部品を統合して、過去21年間に築いてきた伝統を見事に継承することになるのだろうか。

われわれの結論はしばらく待っていただきたいが、スリリングな運転を実現するファンダメンタルがきちんと揃っていることについては、ほとんど疑問の余地はなさそうだ。傑出したRS4と比べてもすべてが完全に互角と結論づけていいだろう。

(番外編)M3のもう1台の的 CLK63

新型BMW M3が注意しなければならないのはアウディRS4だけではない。

この420psを発する4.0ℓV8を搭載した新型と今年後半に一戦を交えようとしているメルセデス・ベンツが1台存在している。それは、非常にスペシャルでとてつもなく高額なCLK63 AMGだ。

ブラック・シリーズと名づけられたこのモデルは、特別に開発された少量生産のAMGモデルで、昨年、左ハンドル版のみが販売されたSLK55 AMGブラック・シリーズ同様、通常のAMGモデルよりも上位に置かれることになる。

先のニューヨーク・モーターショーで公開されたこのクルマは、AMGが新たに投入した6.2ℓのV8を搭載し、最高出力は507ps(つまり標準モデルのCLK63 AMGよりも19ps増強)に達している。

その他の注目点としては、メルセデス・ベンツのF1用セーフティカーで使われているアグレッシブなルックスのカーボンファイバー製ボディキットや、リミテッドスリップデフ、強化された冷却系、アップグレードされたブレーキ、19インチ・ホイール、それに前後それぞれ265/30と285/30のピレリPゼロ・コルサなどが挙げられる。

CLK63 AMGの0-100km/h加速はわずか4.1秒で、最高速度は標準モデルを50km/h上回るなんと299km/hと発表されている。価格はまだ明らかになっていないが、1500万円以上は確実と見られている。

同様に現在開発中で、来年にも登場してくるのがアウディのRS5だ。最近発表されたS5をベースにしたインゴルシュタットの新しい四輪駆動クーペは、現行のRS4と同じ420psの4.2ℓV8エンジンを搭載するはずだ。

さらにはレクサスも、この秋に発売されるミュンヘンの新たな高性能のヒーローを苦境に追い詰めるべく、406psの5.0ℓV8を搭載する新型のIS-Fを開発中で、これは来年1月のデトロイト・モーターショーで発表されるはずだ。

AUTOCAR JAPAN誌 50号