イランでタカ派が勢いづいている(写真:Nazanin Tabatabaee Yazdi/TIMA/ロイター)

核をめぐる交渉やその他の2国間関係について、米国とイランの意見が一致することはほとんどない。だが、イランの保守強硬派と米政権のタカ派との間には、逆説的な協力関係がある。トランプ米大統領はイラン核合意に批判的な姿勢を示したが、これは政治勢力拡大を目指すイランの強硬派を喜ばせる動きだ。

イランの保守強硬派は長年、米国との融和路線を批判してきた。強硬派に言わせれば、体制変革とイスラムとの戦いにしか関心がないのが米国だ。

思ってもみない勝利を手に入れた

そうした見方に導かれて、イランはロシアや中国との連携を深めた。しかし、核開発に関連した経済制裁によって経済が崩壊の危機に瀕したため、強硬派は国際協調を迫られることになった。

政治の腐敗や不正に加え、石油価格下落や水不足、失業者の高齢化といった構造問題によってイラン経済はすでに弱体化していた。そこに中国とロシアが制裁決議に加わったことで、保守強硬派の立場は危うくなりつつあったのだ。

だが今や、国際協調路線に対する保守強硬派のいらだちや落胆は消え去った。トランプ氏が核合意の破棄をも辞さない構えを見せたことで、強硬派は思ってもみない勝利を手にしたのである。

国際社会と協調して核合意をまとめ上げたイランの穏健派、ロウハニ大統領が国内政治の求心力を高め、経済問題への取り組みを強化すると公約したのは有名だ。

ロウハニ師の政治目標は崩壊の危機に

背景には、ロウハニ師が「イスラム革命防衛隊」(最高指導者・ハメネイ師直轄の軍事組織)の勢力を押さえ込もうとしていることがある。革命防衛隊はイラン経済の相当部分を支配し、力をつけている。だが、トランプ氏が核合意を批判したことで、ロウハニ師や穏健派の政治目標は崩壊の危機にある。

確かに、核合意締結後もイランのミサイル開発は続いているとの批判はあるだろう。しかし、米国が一方的に核合意を破棄したからといって、イランの核開発や地域不安定化の動きを食い止められるわけではない。むしろ、合意によって封じ込めを狙っていた、まさにその動きを、イラン政府が再開するのを助長するだけだ。

トランプ氏のUターンによって、イランと米国の軍事対立の可能性がよみがえったのである。