メスの脳(左)はオス(右)より小さいがニューロンの数は多い(「CSHL」のプレスリリースより)

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男脳と女脳の違いについては、様々な研究やウンチクがあるが、「大きさでは男だが、中身では女」という、男性にとってはトホホな研究がまとまった。

米の歴史ある医学研究所コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(CSHL)が、マウスの実験だが、メスの脳の方が大部分の領域で脳神経ネットワークが発達していることを明らかにした。オスが勝っていたのは「性欲」の領域だけという二重にトホホな結果だった。

マウスの実験でオトコが勝ったのは「性欲」だけ

研究成果は医学誌「Cell」(電子版)の2017年10月5日号に発表された。「CSHL」のプレスリリースによると、「CSHL」は1890年に設立された、米国でも有数の医学専門の民間研究機関。約600人いる研究員のうち8人がノーベル賞を受賞している。

今回の研究では、「qBrain」(注:brainは脳)という同研究所が独自に開発した脳の構造を立体的に調べる特殊な装置を使った。この装置は、3D(3次元)画像を使い、生きた脳の分野ごとの立体マップ(地図)を作ることができる。脳には、電気信号を発して情報の伝達と処理を行なう脳神経細胞(ニューロン)が無数にある。1つ1つのニューロンが枝分かれして、別のニューロンとつながり、複雑な脳神経ネットワークを形成し、脳全体の情報処理を行なっている。

「qBrain」は画面上で1つ1つのニューロンに着色し、神経ネットワークを立体地図で表示する。そればかりか、AI(人工知能)が1つ1つのニューロンの色の点を数え、全体の数を正確に計算する。ニューロンは、マウスの小さな脳でも千数百億個あるといわれ、これまで数えることは不可能だった。それに成功したことから、研究リーダーのパーヴェル・オスティン准教授自身が「予想外の驚くべき結果が出ました」と衝撃を受けたほど、脳の男女差の違いが明らかになった。

もともと今回の研究は、自閉症や統合失調症、アルツハイマー病などの発症メカニズムを探り、治療に役立てることが目的だった。そのため、自閉症のモデルマウスを使い、脳の全分野の立体マップを作り、脳神経ネットワークを視覚化して、健康なマウスと比較することが狙いだったのだ。

人間の男女の脳にもマウスと同じ差がありそう

ところが、脳の全分野の立体マップができあがると、次のことがわかった。

(1)脳の大きさ(容積)はオスの方がメスより大きい。
(2)脳全体で約600の領域に分かれていることが判明した。そのうち590あまりの領域はオスとメスで共通だが、11の領域でオスとメスの間で明確に違いがあった。
(3)性差があった11の領域とは、生殖や子育て、社会性、攻撃、防御反応など生きるうえで欠かせない行動(主に本能)を担当する分野だった。
(4)そして、脳の大きさではオスの方が勝っているが、ニューロンの数では11の領域のうち10の領域でメスの方が勝っていた。
(5)オスが唯一、メスよりニューロンの数が多い領域は、射精を促す性欲に関する分野だけだった。

今回の結果について、オスティン准教授はプレスリリースの中でこう語っている。

「マウスの脳のマッピング(地図化)から、まったく予期しなかった性差が明らかになりました。射精という男性特有の例外を除いて、男性より女性の方が、生殖、子育て、社会的行動などの全般的な分野で、脳神経ネットワークがよく働いていることがわかりました。今回の発見はあくまでマウスの研究ですが、人間の男女の脳にも同様の違いがある可能性を示唆していると思います」