チーズを使って彫刻を楽しんだり、ミニチュアのチーズを作る職人はいる。けれど、自身の作品は「チーズの肖像画」だと言い切り、2011年からひたすらにチーズの絵ばかりを描きつづけた<cheese artist>は、世界にたったひとりだ。

この職業を名乗る人物とはまだ出会ったことがないと、Mike Geno本人も言うけれど、万が一他にも該当するアーティストがいたら、こっそり教えていただきたい。

彼のすごいところは、ただチーズを描いて飾っているだけではなく、全米のご当地チーズを網羅するために、こんなマップをつくってしまったというところ。

画像はスクリーンショットなので、実際に触ってみたいひとはコチラから。

見ての通りこの全米地図から、気になる州をクリックしてみると、こんなチーズ一覧ページにジャンプする。試しに、「NY」をポチッ。

彼のイラストと一緒に、ファームの名前や製造者の名前だけでなく、作り方や味の特徴までびっしり。6年かけて、彼はひたすらにチーズについて調べあげ、チーズギークの心を掴み続けるアーティストとなった。

この地図を使ってファームを周りながら、アメリカ横断なんてしてみたときには、舌が肥えて普通のチーズでは満足できなくなりそう……。すでにとんでもない情報量だけれど、まだ完成はしてないのだとか。これからも日々のチーズとの出会いが、ここに増えていくだろう。

「飢え」からはじまった
フーディスト人生

それはまだMikeが大学院生の頃。友人とアトリエにいるときに、お金がなくてまともにご飯を食べれない日が続き、限界が来ていたのだろうか。「いますぐステーキが食べたい……」と力なく呟いたらしい。

それを聞いた友人は、後日彼を自宅へ招いた。「お金はないけれど」そのセリフと一緒に、目に飛び込んで来たのは、壁中に飾られた、油絵のステーキやドーナツ、寿司など彼の大好物だったというのだ。

駆け寄って、いますぐかぶりつきたい衝動に駆られたに違いない。嬉しい反面、それは拷問のようにも感じただろう。だからこそ、「いますぐこのご馳走を食べられる生活に変えたい」と、猛ダッシュで家に帰り、握ったのは油絵の筆。

極限まで空腹と戦っている人が描いた「食べたいもの」は、クラスメイトや先生を驚かせるクオリティだったらしい。その反応を見るや否や、ネットで3万円前後の値段をつけ売りに出し、見事に彼はご馳走を食べるだけの利益を渇望から生み出した。

「絶対にステーキを食べてやる!」と、心に決めてからそれが実現するまでは、ボタンを押すだけだったかのように容易で、あっという間だったと彼は笑う。

飢えから生まれた、食べ物だけを描く『Foodist』人生はこうして幕を開けたのだった。

食べたいものを描いて売りに出し、願望を実現する日々。空腹から生まれる原動力で制作を続けていくなかで、彼は「チーズ」が最高のパートナーであることに気がついた。

いつでも食べたくて、かつ最も食欲をそそる絵が描ける。それに気づいてからは、もうよそ見ナシ。一心にチーズだけを選び続けて『Foodist』から『Cheesist』へ。

さすがに飽きてきたのでは…?と聞いてみたら、「このさき一生、手放すつもりはないよ」と大げさな愛を語られてしまった。

今日も筆を握る彼の手のひらは、チーズの匂いが染みついているに違いない。

Marin French Camembert
sequat cheese
Epoisses Berthaut
Challer hocker
Licensed material used with permission by Mike Geno,(Instagram)