ワンルーム投資は「年金代わり」になるか

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■「節税でお得」と強弁できるのか

最近よく相談を受ける事例のひとつが、新築ワンルームマンションへの投資話だ。電話で勧誘されたり、営業マンに直接アプローチされたりと、パターンはいくつかあるようだが、いずれも「節税になる」「ローンを払い終われば、家賃収入が年金代わりになる」といった言葉が売り文句らしい。

本当にそれほどお得な投資なのか。結論を先にいえば、「検討にすら値しない」というのが率直なところだ。

以前とある筋から、実際の勧誘に使われたワンルームマンション投資の説明資料を入手したことがある。都内のワンルームマンション(1軒約2600万円)を3軒セットで購入し、賃貸物件として運用するというスキームだった。

想定される家賃収入を、単純に物件の購入価格で割った「表面利回り」は4%ほど。しかし実際には、月々のローンの支払い、火災保険料や管理費など物件の維持に必要な経費、さらに固定資産税がかかってくる。自分が住むための物件ではないから、いわゆる住宅ローン減税の対象にもならない。入手した資料では、月々のローンや管理費等の支払いが、家賃収入を上回っていた。つまり、毎月の収支はなんと赤字になってしまう。

業者の説明によれば、ローン返済の利子分や管理費、物件の減価償却分などを経費とし、給与所得との合算で確定申告を行えば、所得税の還付が受けられて黒字になるという話だったらしい。だが、家賃収入を上回る支出が発生するのは確実で、税金の戻りをあてにしないと大赤字になる投資は、はたして「節税でお得」と強弁できるのか。

■成功者であれば一顧だにもしない

年金代わりになるという文句も、大いに疑わしい。35歳からの30年でローンを返済するとして、手元に残るのはローン負担の分目減りした老後資金と、築30年の老朽物件だ。新築時と同じ家賃では借り手はつかないだろうし、リフォームすればその費用の回収にまた時間がかかる。

いやになって売りに出しても、投資用ワンルームマンションはほかのタイプの物件より買い手がつきにくく、その分買い叩かれやすい。最近のマンション市場が高値圏で推移していることを考えれば、10年後には売り値が購入価格の半額以下になっていてもおかしくない。

地方でのセミナーで参加者から相談された中に、ある一家のご主人が、家族に黙って東京のワンルームマンションに投資していた事例があった。

一家で自宅の建て替え話を進めていたところ、問題の投資のローンが残っていたせいで新しいローンの審査が通らず、発覚したらしい。ご主人はそれこそ「老後の足しに」と思ったのかもしれない。だが、遠隔地だからと物件を見もせずに投資を決めただけあり、立地も収益性もいまひとつ。しかもその時点での売り値はローンの残債分にも満たず、老後資金を取り崩して穴埋めしなければ売ることもできない状況だった。

投資金額が大きく、流動性も低い不動産投資には、ほかの金融商品とは異質のリスクがある。業者の口車に乗らない自信がないなら、そもそも手を出すべきではない。

「サラリーマン大家」の中でも達人と呼ばれる人々は、常に勉強や物件見学を怠らず、プロも顔負けの鑑識眼と熱意をもって物件を選び、資金計画を立て、管理している。不動産投資を心から愛するそんな彼らも一顧だにしない案件が、新築のワンルームマンションなのだ。

(ファイナンシャルプランナー 深田 晶恵 構成=川口昌人)