日本で生まれたやまとことば 言葉が持つ『力』を改めて考える

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さん。先生の日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…様々な『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

言葉が乱れると国力が落ちる…ということ

名古屋大学を中心とした研究グループが、10月21日に日本人として初めて飛行機で台風(21号)の『目』の中に入り直接観測したというニュースを見ました。『目』の中心では青空が拡がり、周囲には壁雲と呼ばれる層の厚い積乱雲がそそり立ち、周囲は風速80メートル近い猛烈な風が吹いていたとのことでした。渦巻く真っ白な雲と、真ん中にぽっかりと空いたブルーの『目』。地上では大変な風雨が吹き荒れていても、高い空から眺めてみると美しいのです。

台風に見舞われた日の衆議院選挙。政治的なことはともかくも、あれよあれよという間に創造と破壊と、また創造があり、台風がすぎた後に(一体あの騒動は何だったんだ?)と思う人もいたことでしょう。そして、今回はまさに『言葉』の持つ力、『言霊』を見せつけられた選挙でもありました。その言葉とは、『排除』です。

言霊とは、言葉に宿っている霊力のことです。言葉にはその意味を実現する力があると、古くから信じられていました。

「敷島の やまとの国は言霊の幸はふ国ぞ 真幸くありこそ」

万葉の歌人である柿本人麻呂のこの歌にあるように、日本という国は言葉の力によって幸せがもたらされる国、と考えられてきました。

言霊というとオカルト、迷信というイメージを持つ人もいるかもしれません。でも日ごろ使っている言葉が、私たちの心や、相手の心に与える影響、印象を考えると、言葉が単なる記号でなく温度を持ったものだということが分かるでしょう。その温度こそ、言葉のエネルギーなのです。

日本で生まれたやまとことばには、相手を思いやる気持ちがこもった言葉、感謝や祈りがこもっている言葉が多くあります。「おかげさま」という言葉には、相手だけでなく森羅万象、見えない力に支えられて…という深い感謝の気持ちが宿っています。「ありがとう」という言葉には、相手への感謝と、あたりまえのことなど1つもないのに与えてくださったという、森羅万象、神仏への感謝の気持ちもこもっているのです。「有り難う」と漢字で書くと、その意味がよく分かります。

「言葉が乱れると国力が落ちる」

「言葉が乱れると政治家の言葉が軽くなる」

出典を失念してしまったのですが、国学の本にこのような言葉がありました。国力とは、軍事、経済ではなく、文化のことです。軍事や経済は政治の力でどうにかなるでしょう。でも、落ちてしまった文化度は、一人ひとりが自分を高めていくことでしか回復しないのです。そして、心がざわざわした時には、丁寧な言葉遣いを意識します。すると、心は落ち着きます。これも、言葉の持つ力です。

『排除』という言葉を発した人が排除される。言霊です。今回の衆議院選挙の台風の目はどこにあったのか。快晴で、風も吹いていない台風の目の中。もしかしたら、圧勝した自民党だったのか。もっと高い見地に立って眺めてみる…政治にも、私たち一人ひとりにも必要なことかもしれません。

作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー

[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
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⇒ 単行本「大人の結婚」