13試合の長丁場を無敗で乗り切り、頂点に立ったセレッソ。プラストウ記者がキーワードに挙げたのは集中力、一貫性、選手層の厚さの3つだ。(C)SOCCER DIGEST

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 なにより特筆すべきなのは、セレッソの大阪が13戦負けなしで頂点に立ったという事実だろう。まさにフルマラソン。いや、駅伝に近いか。スカッドをフルに活かした、見事な戴冠劇だった。
 
 世界的に見ても、この日本のルヴァンカップは特異だ。出場資格があるのはJ1の18クラブで、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)に出場する4チームは準々決勝からの登場となる。シードされていない14チームがまず、4つの枠を争う過酷な戦い。セレッソはグループステージ(B組)を4勝2分けで乗り切ったが、それでもプレーオフに回らざるを得ず、北海道コンサドーレ札幌をなんとか振り切ってベスト8にたどり着いた。イングランドのFAカップなら、プレミアリーグのどのチームでも6試合に勝てば優勝できる。これだけの長丁場のカップ戦は、世界のどこにも見当たらない。
 
 セレッソはそのグループステージで、4-4のドローゲームを除く5試合で無失点。負けないことでチームはテンションを高く保つことができたのだろうし、チームの潜在的な力を証明した大会だったと言える。集中力、一貫性、そして選手層の厚さ。キーワードはこの3つだ。
 
 とくに川崎フロンターレとの決勝戦では、集中力が決め手になった。開始早々の先制点はセレソにとってもゲームプランにない唐突なプレゼントだっただろう。肝になったのはそこからの高度な守備の連動性だった。慌てることなくフロンターレの攻撃をブロックし、後半になるとその強度はさらに上がり、どんどん堅固なものになっていった。終盤の2点目は、こうした粘り強い守備で耐え凌ぐチームによく起こるシーン。ご褒美のようなものだ。ファイナルを戦う上で、完璧な試合運びだったように思う。
 
 両チームともこれまで無冠ということで、話題を集めていた決勝戦。それにしても、フロンターレはツイていない。今世紀に入ってから間違いなくJリーグを代表するクラブのひとつなのに、なぜタイトルとは無縁なのだろうか。不思議でならない。多くのサポーターはきっと、こう呟いているだろう。「いったいなぜこうも毎回?」と。

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 余計な慰めに聞こえるかもしれないが、思い悩む必要などないとわたしは思う。フットボールのゲームの結果とは、1試合、1試合の展開次第で変わるし、勝利するための確実な方法や法則などはない。フロンターレは強い。これが揺るぎない事実。メンタル面の弱さも感じないし、闘争心や勝利への渇望が欠けていたとも思わない。選手たちは全力を尽くしただろう。結果が出ない時もある。理由を探す必要などないのだ。
 
 9月のJ1リーグで、フロンターレはセレッソを5-1で下した。一番のポイントはここにある。つまりはゲーム展開。フロンターレの長所がもっとも発揮されるのはカウンター攻撃だと考えるが、この日の埼玉スタジアムでは開始早々に失点したため、ゲームはあっという間に難しくなった。逆にセレッソにとっては、願ってもない展開になったというわけだ。
 
 中村憲剛のスルーパス、三好康児のドリブル、小林悠のバイシクルキックはいずれも素晴らしかった。それでも、攻撃は同じパターンの繰り返しが多くなり、ビッグチャンスはほぼ作れないままだった。あれだけの守備をされたら、そう簡単には崩せない。普段の力を出し切れなかったのが敗因と言ってしまえば簡単だが、彼らは十二分に敢然と立ち向かったと思う。本当に紙一重の一戦だったのだ。
 
 あのチームスピリットがあるかぎり、フロンターレは強豪であり続けるだろう。初タイトルもそう遠くはないと、わたしは信じている。
 
取材・文:マイケル・プラストウ(ワールドサッカー誌)

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著者プロフィール
マイケル・プラストウ/1959年、英国のサセックス州出身。80年に初来日し、91年からは英国の老舗サッカー専門誌『ワールドサッカー』の日本担当となり、現在に至る。日本代表やJリーグのみならず、アジアカップやACLも精力的に取材し、アジアを幅広くカバー。常に第一線で活躍してきた名物記者だ。ケンブリッジ大学卒。