昨年は県予選の準決勝で敗れた仙台育英。今年はタフに戦い抜き、全国行きの切符を手に入れた。写真:小林健志

写真拡大 (全2枚)

 高校サッカー選手権宮城県大会決勝が11月4日、ユアテックスタジアム仙台で行なわれた。試合は仙台育英が30年ぶりの選手権出場を目指した東北学院に1-0で勝利。5年ぶり32回目の優勝を飾り、選手権の出場権を手に入れた。

 仙台育英は32分、キャプテンのDF石川巧実のロングスローからDF後藤万輝がバックヘッド。これがネットに突き刺さり、後半は東北学院の反撃を受けながらも、粘り強い守りで相手に得点を与えなかった。
 
 毎年、仙台育英は県予選の優勝候補に挙げられ、インターハイもここ2年連続出場しているが、なぜか選手権だけは過去4年間勝てなかった。最後に出場したのはOBでプロ3年目のDF熊谷駿(甲府)が1年生の時までさかのぼる。その後はベスト8やベスト4止まりで、昨年も準決勝・仙台商戦で後半アディショナルタイムに同点とされ、延長戦で逆転を許して敗れるというこの上ない悔しさを味わった。

【PHOTO】2018Jクラブ・新卒入団&昇格内定〜高校・ユース編
 
 勝負強さを身に付けなければ、選手権には行けない。そのために仙台育英は様々な改革を断行。城福敬監督がまず手を付けたのはスタッフの入れ替えだった。昨年より、2年前までベガルタ仙台ジュニアユースでコーチを務めていた内田貴之氏をスタッフに加え、フィジカルトレーニングなどの改善に取り組んだ。さらに今年からモンテディオ山形などでGKコーチを務めた笹原義巳氏を招聘し、「選手を盛り上げるモチベーションビデオを作ってくれる」という女性スタッフも加入。Jクラブでも実績のあるコーチングスタッフなどをチームに招き、指導体制を充実させた。

 そして、次に行なったことが徹底的に競争を煽る作業である。
「例えば、決勝に出ていた佐藤一輝は夏までは調子に波のある選手でした。9月末にイタリアU-19セリエB選抜が来仙し、ユアスタで試合を行なった際、彼はメンバーからも外す予定でした。ところが直前で2年生の選手が負傷したためベンチ入りさせ、試合の最後で出したところ2点取ってくれました。それを大きな自信にしてくれたので、最終的にレギュラーを掴みました。そうやって競争を明確な形で見せることにしたのです。メンバーを外されてへこたれるのか、這い上がるのか。たかがサッカーと思わずに踏ん張れる子は社会人になってもうまくいきます」

 城福敬監督は競争に食らいつこうとする選手を積極的に起用し、仙台育英は戦う集団に変わっていったのだ。
 こうした城福監督の思いに選手たちも応える。「今年の3年生はこれまで以上にまとまりと自覚があります」と、今ではキャプテンの石川が、その団結力の強さに胸を張るほどまでになった。過去数年はどこかチームに一体感を欠く向きもあったが、今年の仙台育英は団結力が強く、最後まで粘り強く戦える集団に変貌。プリンスリーグ東北では、これまで勝てなかったベガルタ仙台ユースに終了間際のゴールで勝利する試合もあった。
 
 こうした団結力を持った集団になったのは、強い気持ちでチームを引っ張る石川の存在が大きい。石川は鹿島アントラーズジュニアユース出身。14年には日本クラブユースサッカー選手権(U-15)で優勝も経験するなど、順風満帆のサッカー人生を歩んでいた。ところがその大会終了後。石川はユースへの昇格見送りを通達された。

「見返したい」
 悔しさを抱え、大会時に声をかけてくれた城福監督の下へとやってきた石川。過去2年は選手権に出場できず悔しい思いを味わい、インターハイも2回出場したものの、いずれも初戦敗退だった。
 
 特に今夏のインターハイは地元宮城県開催だったこともあり、悔しさは大きかった。
「地元開催のインターハイで初戦敗退した時、もう1回変わろう!3年生が中心となってやっていこうと話をしました。悔しさをバネにして、力に変えていきたいのです」
実直な石川の訴えにチームメイトも応え、過去4年達成できなかった選手権出場を成し遂げたのだ。

 
「今日から新しい競争が始まります。全国大会でメンバーに入る保証は誰にもありません」とこれから再び競争が始まることを石川をはじめ、チーム全員が分かっている。

「目標は日本一です。東北新人大会で選手権優勝した青森山田高に0-2で敗れましたが、この相手にもチャンスがあると思い、青森山田を超えようという話をずっとしてきました」

 たくさんの悔しさをすべて力に変えてきた主将が牽引するチームであれば、それも夢ではないだろう。勝負強さを手にした仙台育英は、青森山田に続く東北勢優勝を目指す。