2年ぶりの選手権に挑む矢板中央。目ざすは過去最高の8強を超える成績だ。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 栃木の名門校が全国の舞台に戻ってくる。
 
 11月4日、選手権の予選決勝が行なわれ、佐野日大を3-0で下した矢板中央が栃木の代表校に決まった。
 
 一昨年まで3年連続で冬の大舞台に姿を見せていたが、昨年はインターハイに出場するも、ここ10年で6度の出場を誇っていた選手権は出場を逃した。チームは雪辱を果たすべく新たなスタートを切ったが、春先から県内でよもやの苦戦を強いられる。新人戦こそ準優勝だったが、関東大会予選は初戦でPK戦負け。覚悟を持って挑んだ直後のインターハイ予選でも、準決勝で敗退してしまう。とりわけこの敗北は、「しっかりと練習をして挑んだだけにかなりショックだった」と稲見哲行(3年)が話すほどの大ダメージだった。
 
 とはいえ、今年のチームが実力不足なわけではない。高橋健二監督が「それぞれ高さやテクニックがある」と言うように、個性豊かな選手たちがずらりと居並ぶ。指揮官が「堅実な選手」と評する主将の稲見、同じく「ハードワークができる」と語る松井蓮之(3年)のダブルボランチ。最終ラインを束ねるCBの白井陽貴や最前線に入る190cmの大型ストライカー・望月謙の2年生コンビ。センターラインだけではなく、他のポジションにも頼もしい選手たちが控える。事実、予選開幕前の時点では県リーグ1部で首位を快走。ライバルを寄せ付けない強さを県内では見せていたのだ。
 
 しかしトーナメントになると、チームは勝負弱さを露呈してしまい、頂点に立てなかった。負のスパイラルから抜け出すきっかけとなったのは、インターハイ予選敗退後の出来事だ。チームリーダーのひとりである松井は当時をこう振り返る。

「準決勝で真岡に負けたことは大きかったし、あれがみんなの気持ちを高ぶらせた。あの日は本当に『もうだめだ』見たいな感じだったので」
 
 奈落の底に突き落とされた矢板中央。その時、偶然目にしたものがある。部室の壁に書いてあった言葉だ。

「冬こそ自分たちが笑う」
 
 最初は、誰が筆を走らせたものか分からなかった。ただ、そのメッセージは今の自分たちにしっくり来るものだった。稲見もこれを見て、決意を新たにしたという。
 実はこの言葉、2代前の主将・星キョーワン(現・駒澤大)が2年前の夏に書いたものだった。

 当時、彼らもインターハイ予選で敗れ、冬に向けてもがいている真っ最中だった。その時に星が悔しさを忘れないために部室の壁に書き記したという。それを稲見は仲の良い2つ上の先輩・斎藤亮輔から教えてもらうと、選手権への想いがより一層高まり、その熱は仲間にも波及した。
 
 以降、チーム内は自発的なアクションに満たされていく。稲見も2年生に忌憚のない意見を求め、活発な対話が繰り返されるようになった。チームは緩やかに上昇曲線を描いていったのだ。
 
 そして、迎えた予選決勝。矢板中央は昨年の本大会で準決勝に進出した県下のライバル・佐野日大を見事に撃破する。歓喜が弾け、すべての苦難が報われた。ただ、これが終わりではない。あくまで目ざすのは、2年ぶりの大舞台での成功だ。

「去年は佐野日大が県代表として素晴らしい結果を出してくれた。そこに追いつけるようにやっていきたい」(高橋監督)

 佐野日大はベスト4入りを果たした。矢板中央が狙うのも、過去最高の4強を超える大躍進だ。

取材・文:松尾祐希(サッカーダイジェストWeb編集部)