『ONE-PIECE』87巻(尾田栄一郎/集英社)

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四皇「ビッグ・マム海賊団」と人殺しや戦争を請け負う悪の軍隊「ジェルマ66」の政略結婚に巻き込まれ、連れさらわれてしまったサンジ。それを知ったルフィ達はサンジを連れ戻すべく、ビッグ・マムが治める「万国(トットランド)」の本拠地「ホールケーキアイランド」へ潜入。四皇の部下に邪魔をされたり、サンジの葛藤があったり、様々な試練をかわしながら、ルフィの同期である「最悪の世代」カポネ・“ギャング”ベッジと手を組むことになった。両者が手を組んだ目的はお茶会をぶっ壊すこと、そしてビッグ・マムの暗殺。結果、ベッジが企てた暗殺作戦は途中まで成功し、ママが無防備になるまで至ったものの、ママの規格外すぎる強さによって作戦の最後で失敗。失敗した挙句に逃げ場も失った一同は絶体絶命のピンチに陥ってしまった。

■サンジの貫いた騎士道

 11月2日に発売された『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)87巻は、絶体絶命の大ピンチを脱出するところから物語が始まる。作戦に失敗した一同は、ベッジの「シロシロの実」の能力によって造られた大要塞「大頭目(ビッグ・ファーザー)」に逃げ込んでいた。強固な要塞は大砲にもびくともしない防御力を誇るが、ママの攻撃には耐えられない。このままではベッジも、ベッジの中にいる一同も死んでしまう。そこでベッジは唯一逃げ出す方法を考えた。自身の能力を一度解き、要塞から人間に戻る。要塞から人間に戻っても、城の中にいる一同が外に漏れだすことはない。人間に戻って、飛行能力のあるシーザーに運んでもらえば、全員が助かるのではないかと考えたのだ。

 しかし外にはビッグ・マムの猛者どもがいる。シーザーがガスになって空を飛ぼうにも、武装色をまとった攻撃でいとも簡単に撃ち抜かれてしまう。この作戦さえも不可能かと思われたそのとき、一緒に救出されていた「ジェルマ王国」の国王ヴィンスモーク・ジャッジがサンジに向かって口を開いた。「なぜ助けた?」。

 幼少の頃、ヴィンスモーク家はサンジを苦しめ続けた。サンジがヴィンスモーク家を逃げ出して13年が経ち、すでに縁は切れたはずだった。しかし思い出したように政略結婚に巻き込み、再びサンジを苦しめた。本来は憎くてしょうがないはずのヴィンスモーク一家を救い出したサンジに疑問を持ったのだ。ジャッジの問いに対するサンジの答えは

 父親が悲しむ……

 だった。サンジにとってジャッジは縁を切った存在。つまり父親でもなんでもない。本当の父親とは、「オールブルー」の夢を笑わず、命をかけて飢餓から守り、料理と闘いと騎士道を教えてくれた「海上レストラン バラティエ」のオーナー・ゼフだったのだ。

 血を分けた実の家族の死をあざ笑う程度の小せェ男になったのかと…呆れられる。あの人に顔向けできねぇ様な生き方は…おれはしねぇ!!!

 その強い決意と共にサンジは憎きヴィンスモーク家を救った。このセリフを語るサンジには、ゼフに負けるとも劣らぬ気迫と信念を感じる。どこまでも己の生き方である「騎士道」を通し続けるサンジに憧れを感じる一幕だった。

 そして「お前はおれの父親じゃねェっ!ヴィンスモーク・ジャッジ!」と続けるサンジの怒号に負けるように、ジャッジは今後一切、サンジにも「東の海」にも関わらないことを誓った。さらに今回の騒動のけじめをつけるべく、ジャッジをはじめとするヴィンスモーク一家は、ベッジとシーザーが空へ逃げるまでの護衛を買って出た。憎きヴィンスモーク家を救出したサンジのお人好しすぎる行動は、自身を救う結果へとつながったのだった。

■風紀を失い続ける「SBS」

 このあと、ビッグ・マムの魔の手から逃れようとする一同だったが、事態は一層混沌を極めることになる。ママの“食いわずらい”の発作が起きてしまうのだ。さらに、絵に描いたような悪女・プリンに微笑ましい変化が生まれる。それがどのような変化なのか、ここからさらにどのように物語が展開していくのかは、ぜひ本書でお楽しみ頂きたい。

 今回は大人気コーナー「SBS」の模様も少しだけご紹介しよう。87巻でも尾田先生は自力で「SBS」を始めることができず(今回は「唐草うさぎ年のY」さんの飼い猫の「ニャー」という鳴き声によって始まってしまった)、「スムージーの足をなめたい」という変態が現れ、海軍本部元三大将と藤虎の4名を女人化したキャラが描かれ、相変わらず風紀を失い続けている「SBS」。しかし、なかには素晴らしい質問もあった。「ポートガス・D・アヤナ」さんからの質問だ。その質問を要約すると、「ベッジの息子・ペッツは幼くしてヒゲが生えているようだけど、じゃあ下の毛はどうなっているの?」というもの。それに対する尾田先生の回答の一部を載せよう。

 ドロロロロロヒゲロロロロチン毛ロロあるよロロロロロロ……!!教えませーん!!

 うーむ……今回の「SBS」も最高でした。

文=いのうえゆきひろ