11月1日、2018年用年賀はがきの販売が全国で始まりました。
SNS流行りの昨今、手書きの近況が書かれた年賀状をもらうと嬉しいものですが、賀状には普段使わない文字のハンコが押してあることがあります。よく見るとそれは、まるで象形文字のような文字であることが多いですね。
個人の印鑑や社判などでも見かけるこうした漢字の書体、これを「篆書」(てんしょ)といいます。
篆書は漢字の書体の一つで、古代中国から神聖な文字とされてきました。今回は、年賀はずきの発売にちなみ、奥深い漢字の歴史を少しのぞいてみましょう。

来年は戌年(いぬどし)。「謹賀新年」の篆刻をあしらう


神聖な文字・篆書

中国で漢字が「発明」されたのは、おおよそ3500年前のこと。この文字は亀の甲(腹側)に彫られた占いに使われたので、「甲骨文字」(こうこつもじ)と呼ばれます。
これが1000年近くにおよぶ長い歳月をかけて、現在と似たかたちに整理されたのが「篆書(小篆:しょうてん)」です。中国初の統一王朝「秦(しん)」の始皇帝が、紀元前3世紀にこの書体を中国全土に公布したのでした。
現在の漢字に直接つながるという意味では、篆書はいわばもっとも古い漢字のスタイルです。中国では文字(漢字)は「神」(天)から人に与えられるものだと考えられていましたから、篆書は、漢字が誕生した時の姿をとどめる、つまり天に近い神聖な文字だと考えられてきたのです。
ところが、篆書は象形文字の要素を強く残し、字画が煩雑で、大量の文章を書くには向いていません。
ですから、篆書は日常の文字として次第に書きやすいように、「隷書」(れいしょ)に変化していきます。隷書は新聞の題字などに今でも使われます。それでも、神聖な権威づけが必要な場面としては篆書が特別に使われてきたのです。

【謹賀新春】【嘉祥陽春】の隷書体


篆書のアート「篆刻」を年賀状に

たとえば石碑の上部に刻まれる題字などにも多くの場合篆書が使われました。
石碑や書物に「題」をつける行為は、天に向かって物事を「述べる」という意味を含んでいますから、それは神聖な文字である篆書が使われたのです。
日本でも、契約書や登記書に篆書を彫った印鑑が使われる習慣が残っているのは、このような考えが引き継がれているといえます。お札にも裏表に「総裁之印」「発券局長」という印鑑が印刷されていますし、パスポートの表紙にも「日本国旅券」という篆書が使われています。
現在日本でも一般的に使われる「楷書」(かいしょ)は、篆書よりも500年以上遅れて登場した書体です。
中国では17世紀ごろになると、この篆書を素材にした「篆刻」(てんこく)が書や絵画と並ぶ、独立したジャンルになりました。日本でも篆刻を趣味にしている人は多いですし、日展にも「篆刻」の部門があります。
「篆刻のすすめ」といった感じの手引書は日本でもたくさん出版されています。書道用品店に行けば安い印材と印刀は簡単に手に入ります。この機会に「篆刻」に挑戦してみてはいかがでしょうか。

金印「漢委奴国王」も篆書