ivankatrump公式Instagramより

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極めて対照的な両店

 どちらかと言えば、ネット系が「イヴァンカ」と書き、新聞やテレビなどは「イバンカ」と書くらしい。もちろん来日中のイヴァンカ・トランプ氏(36)のことだ。

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 11月2日に到着し、4日午前に離日。極めて慌ただしい日程の中、イヴァンカ氏が食事をした2店が話題になっている。

 イヴァンカ氏は2日の夕方、ユナイテッド航空で成田空港に到着。米駐日大使の出迎えを受けた。ここからテレビ局の報道を追ってみよう。

 まずフジテレビ系列のFNNの「イバンカさんが来日 訪日日程は短縮へ」によると、イヴァンカ氏は車でホテルに移動した後、《2日夜は、都内の料亭で夕食をとることになっている》と報じた。

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 その料亭だが店名は非公表の扱いだったようだ。しかしテレビ朝日系列のANNが報じた「懐石料理に『ワンダフル』 イバンカ補佐官が来日」を見ると、映像で「つる中」という看板が映りこんだのが分かる。

 更に3日午後6時半には、安倍首相と高級レストラン「星のや東京 ダイニング」で夕食を共にした。こちらは正式に発表されたようで、各メディアが一斉に報じている。

 2日の「つる中」が米国大使館を中心とした身内の会食で、3日の「星のや東京 ダイニング」は日本政府が開催したものだろう。偶然にも好対照な店が並んだ格好になる。それも話題となった一因のようだ。

食ベログでは正反対の状況

 何が対照的なのか。例えば「食ベログ」を見てみよう。日本屈指の高級料亭たる「つる中」(東京都港区赤坂2丁目)の場合、何と食ベログに記載がない(2017年11月4日現在)。

 対して「星のや東京 ダイニング」(東京都千代田区大手町1丁目)は、あの星野リゾートが経営する日本旅館のメインダイニングという位置づけで、当然ながら食ベログには記載がある。ちなみに星は3.58という評価だ(同前)。

 料理も異なる。イバンカ氏は「つる中」で「KAISEKI」料理を堪能したとインスタグラムに投稿した。イヴァンカ氏は敬虔なユダヤ教徒のため豚肉は使わなかったはずだが、あとは正統派の和食が供されたに違いない。対して「「星のや東京 ダイニング」は自身を《日本旅館が贈る「Nipponキュイジーヌ」》と規定している。要するに極めて日本風のフレンチということになる。

 現在の食ベログでは、東京のフレンチは「カンテサンス」(品川区北品川6丁目)が1位。ミシュランの三ツ星でもある。警備など様々な制約もあるだろうが、安倍首相は「日本のフレンチ・ナンバーワン」を選ばなかった。オバマ大統領には三ツ星の「すきやばし二郎」で会食したことを考えると、色々に考えさせられる。

 両店の個性は、新聞や雑誌など約150紙誌を過去30年以上にわたり収録したデータベース「G-Searchデータベースサービス」に店名を入力すると、さらに際立つ。

橋本、森両首相が愛した「つる中」

 まず「星のや東京 ダイニング」の新聞、雑誌記事の検索結果はゼロだ。そこで「星のや東京」にすると、241件のヒットがあった(11月4日現在)。だが、その大半は経済ニュースとしての文脈になる。

「【きょうの人】星野佳路さん(53)東京・大手町に「高級温泉旅館」開業目指す 」(2013.06.14・産経新聞)

「星野リゾート:東京・大手町に温泉旅館 和にこだわり露天風呂も」(2016.07.21・毎日新聞)

 一方の「つる中」は246件(同前)と出るが、赤坂の料亭とは無関係の記事も含まれている。検索結果の3件目に出るのは「誠備事件最終弁論がムシ返した――加藤翬(あきら)逮捕「つる中謀議」の伝説(渦中の人たち)」という渋い経済事件を伝える記事だ。出典は週刊文春、1984年11月15号になる。

 96年に橋本龍太郎氏が首相の座に就くと、「つる中」は首相動静に登場する。典型的な例は、96年3月26日の《(午後)6時2分、東京・赤坂の日本料理屋「つる中」。瀬島龍三氏ら「龍の会」メンバー》だ(1996.03.27・産経新聞)。

 瀬島龍三氏は、大本営参謀から伊藤忠商事に転身し、“日本のフィクサー”の異名もあった。橋本首相は「つる中」で瀬島氏が結成したという「龍の会」メンバーと会食を重ねている。

 2000年に首相となった森喜朗氏の動静欄にも「つる中」が登場する。代表的なのは00年12月11日《(午後)6時39分、東京・赤坂の日本料理店「つる中」。政治評論家の細川隆一郎氏と会食》という具合だ(2000.12.12・朝日新聞)。

“個性派”の財界人も「つる中」に登場

 05年8月10日に朝日新聞が「(ニッポン人脈記)「国家再建」の思想:13「石原選挙」裏で支える」という記事を掲載している。「つる中」の登場部分を引用させてもらおう。

《「つる中」会と言って、東京・赤坂の同名の料亭に集まる財界人の会があった。新日本製鉄の永野重雄、フジ・サンケイグループの鹿内信隆、東急グループの五島昇、日本精工の今里広記らが常連で、中曽根や石原を呼んだ。作家の今東光や山岡荘八、将棋の升田幸三らも顔を出した》

 幹事役とでも言うべき元新聞記者が当時を回想して言う。

《「財閥系は保守本流とつながっている。しかし、つる中に集まったのは個性派の人たちで、官僚支配とアメリカ従属の政治に反発していた。中曽根さんや石原さんに期待していたんです」》

 だが新聞記事では、森首相以後「つる中」の登場は途絶する。国会から近いこともあり、赤坂の料亭は「夜の永田町」だった。ピーク時には60店の料亭があったとされるが、現在は数店に減少している。

 著名な「赤坂 金龍」も2009年5月、リニューアルして再出発。「歴代の首相で訪れたことがない人はいない」と言われた「口悦」は今年(17年)3月31日に閉店となった。

 そんな中、トランプ大統領の“右腕”ともされるイヴァンカ氏が来日初日、かつての料亭政治の「味」を堪能。そして翌日には安倍首相と共に、いわゆる「Omotenasi」の接遇を受けたことになる。

週刊新潮WEB取材班

2017年11月4日 掲載