メキシコ海軍のMi-8 ヘリ。  U.S. Navy photo by Photographer’s Mate Airman Jeremy L. Grisham(Public Domain)

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 米トランプ大統領の意向で北米自由貿易協定(NAFTA)が廃止される可能性がある中で、メキシコは新たな巨大市場を探している。EU、BRICSなどが対象になっている。

 そして、こうしたメキシコの置かれている現状に目を付けたのがロシアである。ロシアはメキシコがユーラシア経済連合に加盟することを誘っているのである。(参照:「Animal Politico」)

 ロシアのデニス・マントゥロフ通商産業相は10月23日、ロシア企業50社の代表を同行してメキシコを訪問した。そのとき、そのロシアがラテンアメリカ市場で重要な基盤に成れると同時に、ユーラシア経済連合との取引の入り口になることを表明したという。マントゥロフ通商産業相と同行した50社とは飛行機、ヘリコプター、船舶、自動車、自動車部品の製造業者そして農業とエネルギー分野の業者の代表らであったという。

 これは、メキシコの企業にとっても、ビジネスの拡大戦略においてロシアはひとつの柱になれると見られている。それは、農牧産品のメキシコからの輸出そして自動車産業の分野においてロシアへの投資ということも対象にできるという考えからである。(参照:「El EconomistaAmerica」)

 すでに、メキシコーロシア両国の間で農牧畜部門における取引の合意をするための検討が進められている。その内容はメキシコから牛肉、豚肉、鶏肉、乳製品をロシアに輸出し、ロシアからは小麦、肥料、農業機械などを輸出するというものである。(参照:「El Universal」)

◆ロシア製ヘリがメキシコで生産される!?

 また、メキシコはロシアのヘリコプターのメキシコでの生産に以前より関心を示していたという。メキシコはこれまで1994年から2002年までロシアのヘリコプターMi-8を11機とMi-17を24機購入したという実績があり、1年前にはMi-8を改善したMi-17V-5を3機購入している。軍部でロシアのヘリコプターには満足しているという。

 さらに、メキシコは今年、新型Mi-17の購入に関心を示しているということがロシア側からの情報として明らかにされている。また、ロシアはメキシコでそれを生産してラテンアメリカ市場で販売するというプランを持っているという。その一貫として最新型のMi-38とMi171A2をラテンアメリカ市場での販売を広めたいとしている。(参照:「Sin Embargo」)

 このように、ロシア製ヘリコプターを使用して評判が良いということ以外にも、メキシコがロシアの航空機により親近感を持つ理由がある。それは、メキシコのInterjet航空がロシアのSukhoi Super Jet 100を主要機材として使っているという理由からである。

 ロシアはこの機種の部品をメキシコに提供して現地で生産するということも、デニス・マントゥロフ通商産業相がメキシコ訪問中にメキシコの将軍シエンフエゴス防衛相とグアハルド経済相との会談の中で話し合われたそうだ。(参照:「Info Difensa」)

 しかし、メキシコという米国の直ぐ裏庭で、ロシアが軍事用ヘリコプターを生産するというのは米国にとっては受け入れ難いことだろう。しかし、ロシア側の狙いはそれだけではない。なんと、メキシコに戦闘機Mig-35を売りたがっているのだという。

 現在、世界29カ国でMig-29は使用されているという。Mig-35は勿論、それを上回った性能を持っている戦闘機だ。MiG社のジェネラル・マネジャーイリア・タラセンコがフォーブス・メキシコ誌からの質問に答えて、経済的に他国のライバル機と比べ20%安価であると指摘している。

 また、戦闘機として、中国JF-17、米国F-16、そしてフランスラファールと、どれも効率性及び価格においてMig-35よりも劣っているとも語っている。また同氏はメキシコの航空機の85%は米国資本と関係し、5%から7%がヨーロッパ資本で、残りはメキシコのそれであると述べた上で、MiG社は世界のトップに位置しており、顧客への長期にわたっての協力体制にあり、製品そのものを提供する以外に、自動性能システム、優れた操縦訓練、アフターサービスなどを総括したプログラムを提供していることを挙げている。(参照:「Forbes」)

 ロシアの狙いは、ヘリコプターの現地生産から始まって、徐々にメキシコ政府と軍部にロシアの戦闘機の購入を説得させて行こうとしているようである。米トランプ大統領の登場で、メキシコはこれまで輸出の85%を担っていた米国への依存から離れて行く姿勢を徐々に強めている。

<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。