朝晩の冷えが厳しくなると、体調不良を訴える人が少なくない。医療関係者でも、この時期を“危険な季節”と警戒を促す。
 「冷え性は女性特有のものと思われがちですが、それは間違いです。ある調査では、6割以上の男性が“自分は冷え性ではないか”と感じているほどです。また、年を取れば新陳代謝が低下して、自分で気づくほど冷えを感じますが、厄介なのは男性で若者から中年層の場合、冷えた状態が普通だと思ってしまうこと。自覚していないと、知らず知らずのうちに全身の機能が低下してしまうのです」(医療ライター)

 医学博士の内浦尚之氏は、「健康な人であっても、気温の変化に対しては徐々にしか適応できない」と警告を鳴らす。
 「例えば、朝晩の冷えで体温が1℃下がれば、約37%もの免疫力が低下すると言われているのです。すると抵抗力が衰え、ウイルスや細菌に対して負けやすくなってしまう」(同)

 さらに、自律神経のバランスが崩れ、血管が収縮して血液が詰まることもある。
 「そうなると心筋梗塞を起こし、胸を締め付けられるような痛みに襲われ、ひどい時には意識まで失ってしまいます。脳の血管が詰まれば脳梗塞に陥り、呂律が回らない、食事中に口から物をこぼす、簡単につまずくなどの予兆が起こって倒れることもあります。軽度の人でも、階段を上がっただけで息切れして胸に痛みを感じる、狭心症になる場合があります」(同)

 体が冷えることで、こうした血流障害を起こし、そのことが正常な細胞に対して不利に働き続け、病気を引き起こさせるのだ。また、免疫を担っている白血球についても、システムが崩壊されるなどの様々な影響が出て、病が重度にまで進んでいくという。
 「冷えから体を守るためには、体調管理をしっかりして、交感神経と副交感神経のバランスを保つことが重要になってきます。この二つの自律神経が乱れると、病院での検査で体の異常が発見されづらくなる。というのも、診断で自律神経失調症や不定愁訴症候群と間違われることも多く、精神安定剤など間違った処方を受けることがあるからです」(同)

 いずれにしても、体が冷え低体温症になると、血管が収縮して血流が滞留するようになる。血液は全身の細胞に酸素や栄養素を運び、二酸化炭素や老廃物を回収する役目を担っているが、これが不十分になると細胞で合成や分解を正常に行えず、活動が一気に低下してしまう。すると老廃物が体内に溜まり、血流がさらに滞留して冷えも進むという悪循環を生み出す。
 社会医学研究センターの村上剛主任が、さらにこう付け加える。
 「人間が生きていく上で必須の栄養素である酵素は、体内温度37℃〜38℃、体表温度35℃〜38℃で最も活発に働きます。それが、体の冷えによって酵素の働きが著しく低下すると、糖やコレステロール、中性脂肪などがスムーズに分解されなくなり、肥満や糖尿病、脂質異常症、動脈硬化といった生活習慣病のリスクを高めるのです」

 低体温症の全国調査をまとめた「日本救急医学会・熱中症に関する委員会」の三宅康史氏は、冷えの段階について、以下のように説明している。
 「人体の中心部の温度は、通常だと36℃〜37℃程度に保たれていますが、それが36℃を切ると低体温症と診断します。当初は皮膚の表面の血管の収縮から鳥肌が立ち、熱を得るための筋肉の収縮から体がガタガタと激しく震え始めます。そして、体熱の喪失が発熱を上回ると、中心温度は33℃以下になる。しばらくすると体の震えは止まるが、意識障害からもうろうとなり、支離滅裂なことを口走り、呼びかけにも反応しなくなります」
 にわかには信じ難いことだが、さらに恐ろしいのは30℃以下に体温が下がると“半昏睡状態”に陥り、脈拍も微弱となって、そのままいけば心肺停止、つまり死に至るというのが低体温症なのだ。