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もくじ

はじめに
ー クルマはつまらなくなったのだろうか?

BMW M3スポーツ・エボリューション編

ー 世界が送った「熱視線」 いまは?
ー 軽やかに高回転域へ トルク不足払拭

フォード・シエラRSコスワース編

ー シエラRSコスワースは「夢のクルマ」
ー 直線加速で圧倒 ただし重心高のネガも

メルセデス・ベンツ190E 2.5-16編(10月5日公開予定)

ー 190E 歴代最高のエンジニアリング
ー スピード/スリル バランスの妙

おわりに

ー 3台の中でどれを選ぶのが得策なのか

フォード・シエラRSコスワース編

シエラRSコスワースは「夢のクルマ」

ホワイトのボディが眩いシエラRSコスワースは、M3同様、グループAカテゴリーのレースに勝つべくして生まれた戦闘マシンで、決して見てくれだけのスポーティカーではない。

巨大なリアウイングは20kgものダウンフォースを生み出し、実践のレースの場で大きな武器となった。ちなみに、1987年に登場したコスワースRS500でそれは2枚羽根へと進化し、100kgという驚くべきダウンフォースを獲得している。

発売当時、シエラRSコスワースはエンスージァストにとってまさに夢のようなクルマだった。最高速度240km/h以上をマークする300万円台のクルマなど前代未聞だったのだ。

今回われわれはフォードUKがコレクションとして保管している貴重な個体を借り出した。ジェリービーンのような特徴的なボディに巨大なリアウイングの組み合わせは今見ても異様で、テールゲートに貼られたRSコスワースのロゴやボンネットのエア抜き用ルーバーといったディテールも、いかにも’80年代的で泣かせる。

刺激的なエクステリアに比べると、インテリアは直線基調のまったく退屈なデザインで、肩透かしを食らうことになる。おまけに表面素材には安っぽいプラスティックが多用されているから、かなり拍子抜けだ。M3スポエボや190E 2.5ー16の洗練されたキャビンとはまるで世界が違う。

しかし、サポート抜群のレカロ・シートにすっぽりと収まり、理想的な配置のABCペダルを確認すると印象は一気に好転する。そしてスパルタンなブースト計やルームミラー越しに見える巨大なリアウイングを眺めていると、インパネの安っぽさなどどうでもよく思えてくるのだ。

ならば走りだそうではないか。

直線加速で圧倒 ただし重心高のネガも

RSコスワースのステアリングを握ってしばらくの間は、後方視界のあまりの悪さに、恐怖に怯えながら控えめに走った。しかしそれもつかの間。このクルマのステアリングの確かな手応えや、鮮やかなまでの回頭性の良さ、そして刺激的な動力性能に触発されて、気がつけばほとんど全開に近い状態で走っていた。

M3スポエボと190E 2.5-16に比べて、RSコスワースの直線加速は明らかに速い。3000rpmに達すると、ターボはフルブーストゾーンに突入し、その瞬間、テールを激しく沈み込ませながら地の果てめがけて突進していく。

その反面、鋳鉄ブロックにアルミヘッドを組み合わせた4気筒エンジンが発生する騒音は興ざめだ。M3スポエボと190E 2.5-16のエンジン音は軽快かつ耳に心地よいが、RSのそれは、まるですり減った針でレコードを回しているような雑音にすぎない。

コーナリングでは、他の2台に比べて重心位置が極端に高いネガが顔をのぞかせる。ロールが大きく、アンダーステアも強く現れるので、速く走らせるためには相当の度胸と、時として強引に振り回すテクニックが必要とされる。RSコスワースには現代のよくできたハッチバックが失ってしまった「気」が宿っている。それに乗り手が呼応して、初めて本領を発揮するのである。

RSコスワースの誕生から1年後(それまでに6000台ものRSコスワースが生産された)、大型のターボチャージャーを備えたRS500コスワースがデビューした。このグループA仕様は、2.0barのブースト圧で実に550psを発生したという。

スタンダードのRSコスワースを走らせただけで、わたしにはグループA仕様のRS500コスワースがどのようなクルマだったか容易に想像がつく。たったの204psでも、このクルマは当時のツーリングカーの雰囲気を存分に愉しませてくれるのだ。

だが、公道では後方から迫ってくるパトカーにはくれぐれもご用心を。ルームミラーの大半は、ウイングによって遮られてしまっているのだから。