Yunomi、KiWi、Kai Takahashi……次世代のポップシーンを牽引するプロデューサーたち

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 Perfumeが8月30日にリリースしたシングル『if you wanna』をはじめ、最近J-POPシーンにおいてもフューチャーベースという言葉を聞くことが増えてきた。フューチャーベースとはクラブミュージックにおけるサブジャンルのひとつで、キラキラしたシンセや歌声を切り刻んだカットアップ、コードに焦点をあてている点が特徴的だ。

 このジャンルは2013年ごろからWave Racer、Lido、Flumeといったプロデューサーを筆頭に大きな流行となり、例えば最近世界的なヒットを遂げたThe Chainsmokersなどは、フューチャーベース“以降”の存在と言えるだろう。ここ日本でも、クラブミュージックを中心に活動していたプロデューサー、DJなどの間で流行した。また、日本で流行した背景には、ピッチをあげたボーカルや次々とエモーショナルに展開していく楽曲構造が、いわゆる“電波ソング”や声色の高いアニメのセリフなどと親和性が高く、ブートレグ的にアニメの要素を取り入れたプロデューサーが続出したことも一因としてあった。

 その後フューチャーベースや同時期に入った類似的なジャンル・ ジャージャークラブの流行は一旦の落ち着きをみせ、それぞれのプロデューサーたちは自らのアーティスト性やオリジナリティを確立しながら、それぞれのアプローチを続けた。そんな中、Perfumeが先述のシングルを発表し、wi-ndsの橘慶太も自身がトラックメイクを始めたことをきっかけにフューチャーベース的なエッセンスを取り入れた楽曲「Time Has Gone」を発表。DEAN FUJIOKAも自身が出演するドラマの主題歌「Let it snow!」で同様のアプローチを見せている。つまり、J-POPシーンにおいても、フューチャーベースの風が吹き始めているということだ。

 本稿ではそうした状況も踏まえながら、フューチャーベースやトラップなどの先鋭的なサウンドをポップミュージックへと昇華させているプロデューサーを紹介する。ここで挙げるプロデューサーたちは、いずれもジャンルが生まれた当初からそのアプローチを取り入れ、オリジナリティーのあるサウンドとして洗練させてきた。さまざな経験を積んだ彼らが次のポップシーンを担うことになるのはそれほど遠い出来事ではない。

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■Yunomi

 Yunomiは札幌出身のDJ/トラックメイカーだ。アイドルグループCY8ERへの楽曲提供のほか、ラブリーサマーちゃん、花澤香菜、虹のコンキスタドール、アンテナガールなどのリミックスを手がけており、後述のYUC’eとともに〈未来茶レコード〉を主宰している。レーベル始動に伴いシンガーのnicamoqを招いてリリースした『ゆのもきゅ』は、iTunesエレクトロニックチャートで1位を獲得しており、記事作成時点(10月27日付)でも1位の座を守っている。

 彼のサウンドは、フューチャーベースやトラップのシンセやビートを主に使った音圧の高いダンスミュージックに加え、独特な和のエッセンスを感じさせるメランコリーな音色を随所に差し込み、記名性の高いハイブリッドなポップミュージックとして成立させている。また、楽曲ごとに変わるボーカリストも彼の世界観を形作っている。頻繁に参加するのは、先述のアルバムでも参加しているnicamoqと、先日メジャーデビューを果たしたトラックメイカー/シンガーのTORIENAだ。両者とも“アニメ声”のようなキュートな声色を持っており、それぞれの楽曲に付随するストーリーを想起させる。

 Yunomiが幅広い層から支持を受ける要因のもう一つが、きあとによるイラストだ。Yunomiのアイコンや歴代のアートワークもほぼ彼女が手がけている。楽曲の世界観をそれぞれで再現した可愛らしいイラストによって、Yunomiの楽曲がアニメソングのようにスッと伝わってくる。こうした世界観の徹底した構築が彼の楽曲をキャッチーなものにしている一因なのは間違いない。

 ウェルメイドなポップソングとして、先鋭的なサウンドをパッケージングする。その面においてYunomiは次代のプロデューサーたちを引っ張っていく存在になりそうだ。

■YUC’e

 YUC’eは、先述の通りYunomiと〈未来茶レコード〉を共同主宰するトラックメイカー/シンガーだ。レーベル始動に際してリリースした「Future Cake」は、Spotifyの日本バイラルチャートでなんと10日連続1位を記録している。

 フューチャーベース的なサウンドの濃度で言えば、Yunomiよりもダンスミュージック的なアプローチが多い。しかしボーカルの刻み方や、展開の緩急のつけ方はキャッチーにまとまっており、そこに彼女の歌声が加わることでポップソングとしての強度を持っている。YUC’eはまだキャリアとしては浅いものの、昨今の若手プロデューサーの中では、ポップシーンへと羽ばたいていく可能性を感じさせる一人だ。

 また、YUC’eは、シンガーとしてもAiobahn、Nor、Yuigotなどの若手トラックメイカーの楽曲に参加することも多い。自身の作品でも作曲からボーカルまで全て自分でこなしており、シンガーとしての経験が今後プロデュースワークでも生かされることがあるのか期待したいところだ。

■KiWi

 KiWiはAZpubshoolとCOR!Sの2人のトラックメイカーによるユニットで、COR!Sはシンガーとしても活動している。トラップを基調にしたハードなビートとファンタジックなメロディの掛け合わせは、KiWiならではのサウンドといえる。その特異性が目に付いたのか、SkrilexとJack Uとしても活動するDiploのレーベル<Good Enuff>から「M・A・Z・E」をリリース。さらにtofubeatsも参加したDiplo & His Friendsというミックス企画に参加するなど、海外からはすでに高い評価を獲得。また、日本においてもガールズダンスユニットDEVIL NO IDに楽曲提供するなど、徐々にポップシーンからの注目を集めている。

 彼らはYunomiと同じく、“KiWiランド”と呼ばれる徹底的な世界観を押し出している点が特徴的だ。徹底的に煮詰めたコンセプトを通すことで、先鋭的な楽曲も絵本のような親しみやすさをもって伝わってくる。楽曲の中で鳴らされている音は、トラップを基軸にした強度を持つダンスミュージックだが、“KiWiランド”を通した物語やCOR!Sの歌声、キャッチーなメロディによって大衆性を帯びたポップミュージックへと昇華させている。

■Tomggg

 千葉県在住のトラックメイカー。“おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンド”という表現がよくあるが、まさにTomgggにはその表現がよく当てはまる。キラキラとしたキュートなサウンドに、先鋭的なクラブミュージックの要素を取り入れ、Tomgggにしか出せない世界観を構築している。

 最近では、10月10日にMaison book girlの矢川葵をシンガーに招いたシングル『ON THE LINE』を<Maltine Records>からリリース。同作では彼のオリジナリティーを維持しながらも、不安定に変化する泡のようなリズムや複雑なコード進行など、実験的でありながらポップソングとしてまとまった完成度の高さを見せている。また、声優/シンガーの中島愛が10月25日にリリースしたシングル『サタデー・ナイト・クエスチョン』のカップリング曲「はぐれた小鳥と夜明けの空」では、女性シンガーソングライター・ボンジュール鈴木とともに作詞・作曲を担当し、Tomggg自身は編曲も手がけた。その他にもハッピーくるくるや、禁断の多数決にも加入しているMONICOへの楽曲提供など、プロデュースワークも精力的に行っている。

 また、彼のアートワークを手がけるKazami Suzukiと、VJでのアニメーションを担当している大橋史とのライブセットも魅力の一つだ。映像と音楽の表現を追求するイベント『VRDG+H』で披露しているライブセットや、同プロジェクトを主宰しているプラットフォーム『BRDG』で公開されている「nakaniwa」からは、次世代の映像制作チームとしての可能性も感じさせる。

■Kai Takahashi

 Kai Takahashiは、LUCKY TAPESというバンドのフロントマンとしても活躍するプロデューサーだ。バンドではROCKを主体に、ディスコ、ファンクなどブラックミュージックの要素を取り入れたいわゆるシティポップ的な楽曲を得意としている。そういった面ではこれまであげたプロデューサーとは少し毛色の違う経歴の持ち主だが、ソロワークスではフューチャービーツ〜フューチャーベースのエッセンスを、ポップミュージックの枠組みの中で昇華させている。LUCKY TAPESではすでに洗練されたポップソングを作ることに定評のある彼だが、ソロワークではそこで得たスキルを存分に発揮させながらも、先鋭的な要素を取り入れることに成功している。

 2015年にリリースしたEP『Soda Pop』以降、ソロワークでは目立った活動がなかったが、最近では向井太一「FLY」のプロデュースや、韓国の女性シンガーソングライターOOHYOのリミックスを手がけており、再び精力的に活動しているようだ。すでにバンドとしては国内でも高く評価されていることからも、その手腕がうかがえる。まだ、ソロワークとしてはあまり実績があるわけではないが、今後もバンド活動ともに注目しておきたい人物だ。

 多種多様なプロデューサーが実験的な試みや音楽的に素晴らしい活動を行っているが、本稿ではフューチャーベース/トラップ・ムーブメントの勃興を肌で感じながら、ポップミュージックへと洗練させているプロデューサーとして上記の5組をあげた。フューチャーベース自体はすでに海外ではメインストリームの音楽となり、次なるジャンルを模索する方向へと向かっているが、ここ日本では様々なジャンルと結びつくことによって独自の進化を見せている。Yunomiの“Kawaii Future Bass”のようなスタイルはその典型例だ。

 冒頭に書いたように、J-POPとしてフューチャーベースやトラップを取り入れていく動きはさらに加速している。その流れのなかでも彼らの鳴らす音楽は、日本独自の新たなポップミュージックの形を提示している。世界のポップシーンにおいてもEDM以降の音楽を模索する動きが続いているように、彼らの活動がJ-POPシーンに変革を呼び込むことになりそうだ。(山田勇真)