富士電機の山梨製作所のパワー半導体生産ライン

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 富士電機がパワー半導体の事業拡大に向け、アクセルを踏み込む。2017―20年度の4年間で500億円規模の増産投資を実施し、23年度までに売上高を17年度見込み比5割増の1500億円規模に引き上げる計画。これまで同社はパワー半導体について規模拡大には消極的だった。自動車の電気自動車(EV)化の流れが戦略を一変させた。

 富士電機はパワー半導体事業で、17年度に設備更新などの基盤整備用途での100億円超に加え、170億円の追加投資を決めた。18年度も基盤整備用途の100億円規模にプラスし100億円規模を投資する計画。

 「(パワー半導体事業の)売上高を100億円増やすためには、同額の投資が必要」(北澤通宏社長)。17年度の同事業の売上高見込みは約1000億円。23年度に目指す1500億円に向け、19―20年度も基盤整備とは別に、それぞれ100億規模の増産投資に動く見通し。

 投資対象もウエハーを加工する前工程を担う松本工場(長野県松本市)や山梨製作所(山梨県南アルプス市)、組み立て・検査の後工程を手がけるマレーシア工場などまで幅広い。

 半導体ビジネスは多額の設備投資が必要になる一方、需要変動が激しく赤字リスクも高い―。半導体分野出身の北澤社長は、そのビジネスの怖さが身に染みている。

 それだけに従来は「パワー半導体は、主力の電力制御機器のコア部品として重要視している。その事業単体で大きく伸ばそうとは思っていない」と明言。売上高の上限を1200億円とイメージし、その範囲内で先端製品を生産するための設備投資を行っていく戦略を示してきた。

 そんな北澤社長の背中を押したのは、自動車業界の世界的なEV化の流れ。EVに搭載するモーターを制御するためにはパワー半導体が不可欠であり、需要が確実に伸びる。

 自動車は一度受注できれば変動が少ない。また富士電機が重視する、車の駆動系に搭載するパワー半導体のプレーヤーは、ほかに三菱電機、独インフィニオン・テクノロジーズなどに限られ、競争環境も安定している。

 富士電機はすでに日本や中国で製品出荷を開始した。また欧米の自動車メーカーや大手自動車部品メーカーと本格受注前のスペックイン活動を進めている。

 北澤社長は「(パワー半導体の売上高イメージ1200億円に)プラス700億円も視野にある。プラス300億円(の売上高1500億円)を目指すという計画は相当固い数字」と話す。ロボットなど産業機器向けの需要が強いことも追い風だ。

 ただパワー半導体で自動車分野を狙うのは他のメーカーも同じ。東芝が展開を積極化しているほか、中国では国家規模で半導体産業の育成に取り組んでいる。

 またEV時代には、思わぬ自動車メーカーが台頭し、富士電機の主要取引先メーカーが没落する可能性もある。富士電機には今後、投資リスクを低減する仕組みづくりが欠かせない。
(文=後藤信之)