北朝鮮──その深部とポテンシャルを探る

写真拡大

自国民に人権侵害を行った北朝鮮の官吏数百人分の情報を、韓国政府が収集、確保したと聯合ニュースが報じている。

それによると、昨年10月10日に開設された法務省の北朝鮮人権記録保存所(以下、保存所)はこれまでに、北朝鮮国民が受けたり見たり聞いたりした人権侵害の事例をまとめた「北朝鮮人権加害者カード」245枚を作成したという。

同所は昨年9月4日に施行された「北朝鮮人権法」に基づき設置された。検事3人を含めた12人の人員からなり、統一省から提供される脱北者の聞き取り調査書を分析している。

北朝鮮の体制による人権侵害がいかに凄惨なものであるかは、「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書に収められた数々の証言からもうかがい知ることができる。

それでも、この報告書が人権侵害のすべての側面を網羅しているわけではない。北朝鮮では、人権侵害を通り越した虐殺事件や、ムリな工期設定による大規模な労働事故なども起きている。

(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」

そうした出来事については、もちろん情報公開などされていないから、複数の脱北者の証言を総合しなければ全容を描くことができない。そのような証言の掘り起こしは、主に民間団体やメディアが担ってきた。しかし北朝鮮人権法が成立したことにより、ようやく韓国政府が動き出したのである。

今回リストアップされた加害者のほとんどが、国家保衛省(秘密警察)と人民保安省(警察庁)所属の人員だ。被害の事例は暴行、拷問にとどまらず、強姦などの性犯罪、強制妊娠中絶など人道に対する罪も含まれている。法務省は加害者の名前、所属機関に加え、モンタージュ写真まで確保している。

このようなデータは、いつか北朝鮮の体制が崩壊するようなことがあれば、その後に行われることになる刑事訴追の基礎的な証拠として活用される。いわば人権犯罪者の「手配書」のようなものだ。

統一省のペク・テヒョン報道官は9月30日、このプロジェクトについて「北朝鮮の人権状況を把握する努力の一環として法律に従って調査している」と述べ、資料が統一後の刑事訴追の根拠となるかとの質問に、「統一後の過去の清算問題は、その時になってから検討する」と答えた。

1961年に西ドイツ(当時)が設立した国家司法局中央記録センターは、東ドイツ(当時)における4万件以上の人権侵害事例を収集し、ドイツ統一後の1990年から東ドイツ政府関係者に対する刑事訴追、被害者への補償などに活用されたことで知られる。