近所のコンビニで「3歳の子どもが、カップのカフェオレが入っている小さな冷凍庫のスイッチを切っていたみたいで『4060円弁償するか、来るたびに(一回溶けた)カフェオレ買ってください』と言われた」という母親の投稿がSNS上で話題です。スイッチに触れていたのは間違いないものの、防犯カメラなどの確たる証拠はないのに「あの僕しかいない」となったそうで「ちょっと一方的すぎる」「店の勝手な決めつけ」などの意見が上がっています。

間接事実に関する証拠で損害賠償の可能性

 この母親は結局、弁償せずに済んだようですが、こうしたケースで仮に子どもがスイッチを切ったという決定的証拠がある場合、母親の法的責任とはどのようなものでしょうか。外井法律事務所の鹿野智之弁護士は次のように話します。

「民事上、母親は監督義務者として損害賠償責任を負うことになります(民法714条1項)。ただし、今回のケースでは、店員も子どもがスイッチを触っているのを見ていたようなので『過失相殺』で減額される可能性があります。なお、母親がいたずらを命じたような特殊な場合でない限り、刑事責任を問われることはありません」

 それでは、今回のように子どもがスイッチを切ったという決定的証拠がなければ、母親は損害賠償責任を問われることはないのでしょうか。

「損害賠償が認められる上で、スイッチを切った瞬間の映像といった直接的な証拠は必ずしも必要ありません。子どもがスイッチを切ったという事実を間接的に推認できる事実(間接事実)を積み重ねることでも足ります。したがって、間接事実に関する証拠があれば、損害賠償責任を問われる可能性があります」

 今回のケースで「間接事実」を具体的に挙げると、スイッチを切った可能性がある時間帯における以下のような事実です。

(1)子どもがスイッチを触っていた事実

(2)ほかにスイッチに触れた者がいなかった事実

「今回のケースでは(1)に関する証拠として、子どもがスイッチのふたを開け、手を入れていた様子が映った防犯カメラ映像が存在し、後からその部分の映像データが母親に提供されていたようです。(2)に関する証拠についても、間違えた場合のリスクを承知の上で特定の客に責任追及をする以上、店側は、ほかにスイッチに触れた者がいないことを確認できる映像も押さえていたことでしょう。これらの証拠をもってすれば(1)(2)の間接事実を立証しうることから、今回のケースでも、直接的な証拠がなくても損害賠償責任が問われる可能性はあったと思います」

 もっとも、店は通常、ほかの客が映っている防犯カメラの映像を開示することはできません。第三者のプライバシーや個人情報に配慮し、行政の「防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン」などを踏まえて、店の内規でそうなっているからです。今回のケースでも、店側としては、ほかの客が映っている可能性が高い(2)に関する前述の証拠を開示することができず、「子どもがやった」との確信を裏で持ちつつも交渉レベルでは手詰まりとなり、その結果、母親は請求を免れたと考えられます。

同じことが自分に起きたらどうする?

 この母親は「保険が適用されるかもしれないのでカメラの映像を提示してください」と店側に迫りましたが、こうした状況ではどのように振る舞うのが最善なのでしょうか。

「今回のような不法行為の立証は、損害賠償請求をする側に課されているので、相手方は証拠を握っているはずです。真偽について確信がない場合に証拠提示を求めることは、適切な対応と言えるでしょう。個人賠償責任保険が使える可能性があるのであればなおさらのこと。その上で、納得できる証拠が出てこなければ請求を拒否し、出てきた場合は店側の過失も持ち出しつつ、店と賠償額などを協議するのがよいと思います。フランチャイズの場合、店の対応に問題があれば本部のお客様相談室などに相談することも考えられるでしょう」

(オトナンサー編集部)