10月27日に渋谷で開催された「スポGOMI」。参加した社員は真剣そのもの(筆者撮影)

東急グループは鉄道だけでなく、不動産、ホテル、百貨店、広告など多種多様な事業に広がっている。「Bunkamura」などの文化施設も抱え、渋谷を拠点にさまざまな文化・芸術の情報を発信している。その東急グループの各社が渋谷の街を舞台にゴミ拾いで競い合うという。

今回開催されたのは「スポGOMI大会@渋谷」というイベントだ。「スポGOMI」というのは、まだ、あまり耳慣れない言葉だが、従来型のゴミ拾いに、「スポーツ」のエッセンスを加え、どちらかというとネガティブなイメージのゴミ拾い”作業”を、”競技”へと変換させた日本発祥の新しいスポーツだ。

具体的な競技内容は、1チーム4人が、あらかじめ定められたエリア内で、制限時間内にゴミを拾い、ゴミの質と量でポイントを競い合う。一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブが、2008年より普及活動を行っており、昨年は、ロシアやミャンマーなど海外でも大会を開催したという。

「ゴミ拾い競技」の狙いとは?

10月27日午後3時20分、集合場所となった渋谷駅近くにあるオフィスビル前の広場に、渋谷の近隣に事業所のある東急グループ30社からエントリーした、51チーム206人の”選手”たちが集結した。


開会式であいさつする東急電鉄の野本弘文社長(筆者撮影)

本大会の目的は、渋谷の街の美観を保持するという目的はもちろん、グループ社員間のコミュニケーション促進を図ることも目的としており、異なる会社の社員同士で組んだ”混成チーム”も見受けられた。

開会式冒頭であいさつに立った東急電鉄の野本弘文社長は、「東急グループにとって渋谷は、わが家同然。街も家も”美しく””楽しい”が今後のキーワード。楽しい街を創るべく、(東急グループは)渋谷駅周辺で、いろいろな開発を進めているが、渋谷を訪れるお客様に、美しい街で楽しんでいただくためには、われわれが率先して行動しなければならない」と話し、選手たちの士気を高めた。

そして、あいさつの最後で、野本氏が優勝チームには、10万円相当の商品が授与されることを口にすると、会場からは大きな歓声が上がった。

続いて、大会の企画・運営で協力するソーシャルスポーツイニシアチブ代表理事の馬見塚健一氏から、ルールの説明が行われた。制限時間までに会場に戻り計量することや、集めたゴミの量だけでなく、質によってポイントが変わることなどが説明された。たとえば、紙や雑誌、弁当・食品容器などの「燃えるゴミ」は100gで10ポイントであるのに対し、「たばこの吸い殻」は100gで100ポイントと高得点が稼げる仕組みになっている。


東急グループ30社からエントリーした、51チーム206人の”選手”たちが集結(筆者撮影)

競技エリアがとても広いのも、大きな特徴だ。北は代々木の陸上競技場付近、西は井の頭通り、東は表参道の青山通り手前、南は渋谷駅周辺までを含む広大なエリアが競技フィールドに指定されている。各チームは、制限時間内に戻りさえすれば、エリア内のどこへ行っても構わないので、作戦の立て方によって、”収穫量”が大きく変わってくるだろう。

15時40分競技開始。各チームがゴミを求めて、各方面に散っていった。筆者もいくつかのチームに同行し、競技のもようを見届けた。

ゴミは目立たない場所にたくさんある

16時30分に競技終了。会場に戻ってきたチームのゴミ袋を見ると、やはり、チームによって、収穫したゴミの量に、かなりの差がついていた。


拾ってきたゴミは分別後、計量する(筆者撮影)

持ち帰ったゴミの量が多いチームと少ないチームに話を聞くと、表参道付近を中心に歩いたというチームは、「思ったよりゴミがなくて、探すのに苦労した」(東急電鉄・男性)といい、一方、宮下公園やJRの線路脇を中心に歩いたというチームは、「ゴミがすごくあった。植え込みなど、隠れた場所にゴミが捨てられることが、すごくよくわかった」(東急セミナーBE・女性)という。同じ渋谷でも、エリアによって、落ちているゴミの量がまったく異なるというのは、予想どおりの結果といっていいだろう。

また、実際に競技としてのゴミ拾いをしてた感想は、「ただ、ゴミを拾うのではなく、チームで協力して集めて、これは何ポイントになるというように、ゲーム感覚で楽しめるのがいい」(東急セミナーBE・女性)、「普段、目が向かないようなところにゴミがあることに気づいた。普段も、ゴミがあるのに気づいたら、拾おうという気になった」(東急グルメフロント・男性)、「バス停と植え込みにゴミが多いことに気づいた」(東急総合研究所・女性)など、競技を通じて行うゴミ拾いは楽しく、また、普段とは違う視点で街を眺めることで、さまざまな気づきを得たという感想が多かった。

さて、いよいよ拾ってきたゴミの分別と計量を終えての結果発表。1位から10位、19位賞、ブービー賞が発表され、3位から1位のチームの結果は、以下のとおりだった。

3位 重量:17.75kg 1573ポイント
2位 重量:32.75kg 3044ポイント
1位 重量:36.45kg 3243.5ポイント

3位のチームは、拾ってきた大きなゴミが、審判による審議の結果、「粗大ゴミ」と判定され、「粗大ゴミや不法投棄されたモノは拾わない」というルールの下、計量結果から外された。勝つために重量を稼ぎたいという気持ちになるが、この辺りも、この競技の難しいポイントかもしれない。


優勝チームの記念撮影。地元で再開発を行っている強みを生かした(筆者撮影)

1位のチームは、メンバー4人とも東急不動産の社員だった。今回の大会に先立ち、今年2月に東急不動産ホールディングスが青山エリアで開催した大会でも、同じメンバーで優勝しており、今大会で2連覇だという。勝因について、同チームメンバーの男性は「地元の神宮前エリアで再開発プロジェクトを担当しており、どの辺りにゴミが落ちているか、頭に入っている。人があまり行かない空き地の周辺などにゴミがある。街は一見、きれいに見えても、いろいろなところにゴミがあふれている」としたうえで、「スポGOMIは、スポーツや、エンターテインメントの要素があり、盛り上がる。渋谷などの繁華街にピッタリのスポーツではないか」と話す。

今後は「東急単独」から地元と連携も

今回のイベントを終え、東急電鉄社長室広報部・統括部長の富田秀樹氏は、「まだ、(東急)グループ色が強いイベントなので、今回は地元自治体と十分に連携するまでには至らなかった。一朝一夕での実現が難しいが、今後は、渋谷の商店会などとも連携し、地元の皆様と一緒になって、街をきれいにし、盛り上げていきたい。今回は東急グループ横断の場をつくることが目的だったが、東急グループと地元の横断の場に発展させていければと思う。また、渋谷はインバウンドのお客様もたくさん訪れる街。接客面でのフレンドリーシップだけでなく、渋谷の街をきれいにすることでも、ウェルカムメッセージを発信できればと思う」と話す。

制限時間があるため、そこまで遠くに行くチームはないのではないかということや、計量器が2台しかなく、計量に時間がかかりすぎたこと、さらに、せっかく街がきれいになったが、翌日からハロウィーン直前の週末を迎え、大量のゴミが発生することが予想されることから、開催時期を調整したほうがいいかもしれないなど、いくつか検討すべき課題はあったものの、素晴らしい取り組みであることは間違いない。

今回のような街中でのイベントだけでなく、たとえば、海岸エリアでは、ビーチクリーンのスポGOMIが行われている場所もあるという。誰でも手軽に参加できるということもあり、今後、大きく広がりをみせる可能性のあるスポーツだ。