【シトロエン C3試乗】ほかでは味わえないソフトな乗り心地と個性的ルックスが超魅力

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皆さんは、シトロエンにどのようなイメージをお持ちでしょうか? クルマにあまり興味がない人であれば「ちょっと変わった外国車」という印象をお持ちでしょうし、熱心なクルマ好きなら「古くは『2CV』や『CX』といった“ハイドロニューマチック”のモデルがあったね」と思われる方もいらっしゃるのでは?

いずれにせよ、皆さん“シトロエン=個性派”という印象をお持ちだと思います。近年、自動車はグローバル化が進み、量産車ではメーカーや生産国ごとの個性が失われつつありますが、そんな情勢にあってもひとり気を吐く、いや“一社”気を吐き続けるブランドが、シトロエンなのかもしれません。そんな同ブランドの屋台骨を支えるコンパクトカー「C3」がモデルチェンジを実施、日本でも販売がスタートしました。

新型C3の最初の印象は「すいぶん思い切ったデザインだなぁ」でした。二段構えのヘッドライト、車体側面のキズつきを防ぐ“エアバンプ”など、「C4カクタス」を思わせる個性的なディテールを採用。小型のクロスオーバーSUVを思わせるコロンとしたたたずまいも目を惹きます。だからといって、全体でまとまりを欠くことはなく、むしろ愛嬌あるカタチだと感じてしまうのも、シトロエンならではの魅力でしょう。

試乗車は、ホワイトをベースにルーフなどがレッドに塗装された印象的なカラーリングでしたが、上位グレードでは7色あるボディカラーのすべてが2トーン仕様となり、さらにルーフは2色用意されます。ちなみに、エントリーグレードである「フィール」はルーフとボディが同色となりますが、ボディカラーは7色が用意されています。

眺めているだけでワクワクしてしまうC3ですが、その印象は室内に収まっても変わりません。写真では平板に見えるシートの感触は“ふわっ”、“もちっ”という独特のもので、古くからのフランス車好きも納得の座り心地です。また、シート生地は高級な本革やウールでこそありませんが、ツイードのようにざっくりとした手触りのファブリックを用いつつ、アクセントカラーのレッドが生地の一部に配されていたり、ステッチにあしらわれたりといった工夫が凝らされています。

シートといえば、乗車中ずっと体を預ける機能部品ゆえ、自動車メーカーは開発に手間も時間も掛けていますが、その感触やデザインという点では、近年、個性が失われつつあります。そんな現状を鑑みても、このシートはC3を選ぶ上でのきっかけのひとつになるのではないかと思います。

また、インテリアを眺めると、水平基調のダッシュボードをぐるりと取り囲むようにあしらわれる赤いトリム(ボディカラーによりブラックになります)、旅行鞄の持ち手を思わせるドアハンドルなども、シトロエンらしい遊び心あふれる演出といえるでしょう。

デザインに心躍る一方、気になるのが、装備面はどうなのか? ということ。先に答えを発表してしまえば、なかなか充実しています。例えば安全装備は、カメラによって前走車や障害物をモニターし、危険を検知すると衝突回避や被害軽減のために最大25km/h減速する“アクティブセーフティブレーキ”を全グレードに標準装備。斜め後方から迫る後続車を検知する“ブラインドスポットモニター”や、車両後方の状況をスクリーンに映すバックカメラなども、上級グレードの「シャイン」には装備されます。

また、ユニークなところでは、ルームミラー基部に装着される“コネクテッドカム”と呼ばれるフルHDカメラも、安全装備のひとつといえるでしょう。これは、写真や動画を記録し、スマートフォンを介してSNSなどへのシェアを可能とするガジェットですが、衝撃を感知するとその30秒前から60秒後までの動画を記録するドライビングレコーダーとしての機能も備えています。

さて、見た目良し、インテリアや装備も良しとなると、走りに対する期待も膨らむところ。日本仕様のC3が搭載するエンジンは、1.2リッターの直列3気筒ターボで、最高出力は110馬力。組み合わされるトランスミッションは、トルクコンバータ式の6速ATのみの設定です。

車両重量1160kgに対して110馬力ですから、スポーツカー的な力強い加速こそ望めませんが、変速時のマナーも含めて、走りは程良く軽快ですし、3気筒エンジンとはいえ荒削りな感触は一切ありません。低速域から十分なトルクが感じられ、右足に力を込めれば交通の流れを十分にリードできる加速が手に入りますし、高速道路のクルージングも難なくこなします。

そして、思わずニヤリとしてしまうのが、ソフトな乗り心地。欧州車といえば、カチッと硬いボディに締まった足まわりが主流ですし、ソフトというと貧弱な足腰のつくりを想像してしまいますが、それは間違い。試乗コースには峠道をかっ飛ばすようなシーンこそありませんでしたが、高速道路や市街地の大きめな段差に遭遇しても、しなやかに動く足まわりと柔らかなシートが振動をしっとりと吸収してくれました。また、高速道路のインターチェンジなど、きつめのカーブではロールこそするものの、接地感が失われるようなことはありません。この心地良さと粘り腰のフットワーク。一度味わってしまうとクセになってしまいそうです。

かつてシトロエンといば、輸入車の中でも変化球で、購入するにはちょっとした覚悟も必要という、まさにツウ向けのクルマでした。一方、新型C3は、そのたたずまいや乗り心地こそ十分個性的ですが、肩ひじ張らずに付き合えるカジュアルさやフレンドリーさを備えています。確かに、消去法で選ぶタイプのクルマではありませんが「コンパクトカーでも快適な乗り心地は譲れない」、「とびきりの個性が欲しい」という人にとっては、最高のパートナーになるはずです。

<SPECIFICATIONS>
☆シャイン
ボディサイズ:L3995×W1750×H1495mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:1199cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:110馬力/5500回転
最大トルク:20.9kg-m/1500回転
価格:239万円

(文&写真/村田尚之)