出会い系サイトで「サクラ」のバイトを始めた女性が、高額な収入にはまって有頂天になったときに陥った危険とは。虚構の世界で人をだまして収入を得ることの精神的な苦痛と後悔

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■きっかけは友人


友人のすすめで出会い系サイトの「サクラ」のアルバイトを始めた人妻A弓(32才)は、逆の意味ではまっていた。「簡単にお金になる」ので、最初はビックリしたがもうやめられない、と思っていた。

1件につき○○円ということで、1日に数時間で月に軽く10万円を越えたのだ。時給850円で近所の弁当・総菜店でやっていたパートの仕事がばからしく思えた。大変な立ち仕事より、自宅で出来てラクだったし、収入もグンと上がった。

夫(37才)は会社のリストラで、仕事内容は厳しくなったが収入は減った。家のローンもまだかなり残っている。子供はまだこの先、塾に進学にと金がかかる。A弓は「サクラ」のバイトを素晴らしいと思った。

「27才の人妻。夫が忙しいので気軽に楽しく遊べる人を探しています」

など、顔が見えないし声も聞こえないので、どうにでも化けられる。年齢や条件を微妙に変えて、まるで自分が多重人格になったように感じられた。女優のようにいろいろな女を演じた。

調子のいい言葉、おかしな自慢、なんとか出会おうとする男達のあれやこれやのメールは、最初の頃はいちいち笑ったり、「ばっかじゃないの」と思ったりしたが、3カ月もするとすでにもう機械のように適当な言葉を返すことが出来るようになった。

■“サクラ”に専念


銀行口座に振り込まれる金額は10数万円になった。中には何十万円も稼ぐ人もいるらしい。

4カ月目には弁当・総菜店のパート仕事をやめて“サクラ”の仕事に専念することにした。朝から夜まで家事の合間を縫って精を出した。(これだけ働いたのだから来月は30万円くらいになるかも)思わず笑みがこぼれる。

しかし、振り込み予定日を過ぎても入金がない。サイトもなぜかアクセスできなくなった。会社に電話しても「現在使われておりません」のアナウンスが流れるだけ。

面接に行った会社に行ってみるとすでに事務所はもぬけのからだった。呆然と立ちつくしたが、どこにも訴えようがない。紹介してくれた友人と会ってみると、

「やられたね」と言う。
「どういうこと?」
「計画倒産でしょ」
「じゃあ、給料は?」
「もらえっこないわよ」
「そんな…」
「最後はただ働きをしたってことだわよ」

悔しかったが、どうにもしようがない。友人は

「テレクラの時にも一度あったのよ。そのときも私、20万くらいやられたわ。しかたない。他に見つけようよ、いくらでもあるしさ」

と、意外とさばさばしている。

■幻のお金


しかし、A弓は「働いたのに、その収入が入ってこない」ということが許せない。幻の30万円はどこにいったのか。

それまでの収入はすでにいろいろな用途で使いきっていた。間違いなく振り込みがあるものと思っていたので、見込んでカードで買っていたブランド品の支払いをどうしたらいいのか。夫に内緒で消費者金融から金を借りてなんとかしたが、その支払いのために結局また、“サクラ”のバイトをすることになった。

なんとか支払いを終えて、A弓は“サクラ”のバイトをやめた。

「虚構の世界で人をだますようなことをしていることが虚しくなったから」

そのうえ、メールでいやがらせや脅迫まがいのことを書かれると気にすまいと思っても、やはり傷つくものだ。

「人間のいやなところばかり見たようで、人間不信になったみたい」

そんな気持ちになってしまったことを考えると、はたして本当に割りのいい仕事だったのか、A弓にはわからなくなった。

その後もA弓のもとには、「効率のいい、高額なバイトをしませんか」という手紙やメールが舞い込んでくる。

サクラの仕事をする前に銀行口座や住所氏名などを伝えてあるのだ。そのリストが出回っているのだろう。メールはアドレスを変えたが、郵便物が届く度に不愉快な思いをしているA弓であった。

■郵便物に関するワンポイントアドバイス


このように、受け取りたくない郵便物は「受け取り拒絶」と朱書きの上、認め印を押印して、投函するとよいでしょう。
(文:佐伯 幸子)