2015年10月7日、友人のTwitter投稿をきっかけにインターネット上で一躍話題になった男子高校生がいました。

【記事】「リアルすぎる」ジオラマを作る男子高校生クリエーター、夢を語る(2016年3月掲載)

「友達の部屋」と題した精巧な模型は、写真だけでは実物と判別できないと大反響を呼び、ジオラマクリエイター「MOZU」の名を知らしめました。

2015年10月に話題になったジオラマ。右が「友達の部屋」 出典元:Instagram / mozukope

当時は高校2年生だったMOZUさん(19)。IRORIOの取材に、イギリスの有名クレイアニメーションへの憧れを語っていました。

このままコマ撮りアニメーターとして生きていきたいです。僕にコマ撮りの存在を教えてくれた『ひつじのショーン』を作ってる会社に入れたらいいなと思っています。

それから2年余り。

今年3月に高校を卒業すると、5月には渡英して憧れの「ひつじのショーン」の制作会社「アードマン・アニメーションズ」の現場を見学することに。そして、10月30日に作品集「MOZU 超絶精密ジオラマワーク」(玄光社)を発売しました。

ネットでの爆発的な拡散から高校卒業、イギリスでの体験までの歩みを語ってもらいました。

「ひつじのショーン」のカバーを付けたMOZUさんのスマホと出版した作品集

SNSはまったくやっていなかった

MOZUさんは現在、自身のTwitterやInstagramで積極的に作品を発表しています。

意外にも有名になった日まで、SNSのアカウントはまったく持っていませんでした。

当時はTwitterもInstagramもやっていなくて、友達の投稿が拡散したことは知らなかったんです。翌日に学校に行ったら「ヤバいことになっているよ」って。テレビ局まで取材に来ました。

それまで身内だけのLINEのタイムラインには作品を投稿していたんですが、自分のTwitterのアカウントを作ったら1日でフォロワーが1万人を超えたのは驚きました。

いきなり話題になって、両親と「炎上したらどうしよう…」と怖がっていました(笑)

現在、Twitterは約5万2000フォロワーを誇る人気アカウントです。

作品へのコメントにはすべて目を通しています。とても励ましになっています。

できる限りリプライ(返信)や「いいね!」を返すようにしています。

芸術家というより職人

小学生の頃から漫画を描いたりプラモデルを組み立てたりするのが好きだったMOZUさん。中学2年の時にNHKで放送されていた「ひつじのショーン」を見て、コマ撮りアニメの世界に興味を持ちました。

映像表現を学びたいと、猛勉強の末に東京都立総合芸術高校に進学。高校では写真撮影や絵画のデッサンといった基礎的な技術を学びますが、孤独感を覚える場面もありました。

入った時はみんな自分より絵が巧くて、僕はちょっと絵が巧いレベルでした。

コマ撮りアニメをやろうって仲間もいなくて、高校3年間は、クラスの人が話すことが日本語なのに分からなくてつらい時もありましたね。

MOZUさんを一躍有名にしたジオラマ「友達の部屋」=紀伊國屋本店新宿店にて

一方で、3年間を通して自分のスタイルが明確になったと感じています。

自分は“一般の人の思考”だと思うんです。

芸術系の人って、万人に認められなくてもいいって考える人が多いと思うんです。でも、僕は多くの人に「伝わりやすい作品」を作るのが好きで。

芸術家というよりは、職人だなと思っています。

銀座での出会い、渡英へ

ネットでの拡散後、作品がいくつもの雑誌やテレビ番組で紹介されました。

すると、番組をきっかけにアードマン社の日本語TwitterアカウントからMOZUさんにメッセージが届きます。昨年8月に東京・銀座で開かれた「ひつじのショーン展」への招待でした。

会場には、憧れのアードマン社の社員2人が待っていました。一緒に働きたいと熱意を伝えると、「イギリスで待っているよ」と連絡先を教えてもらえたそうです。

12月、卒業制作が落ち着いたころ、慣れない英語でスタジオ見学希望のメールを送りました。

通常は公開していない立ち入り禁止の現場。届いた返事は「もちろん!」と快諾の内容でした。

▼MOZUさんが制作したコマ撮りアニメ「故障中」

2017年5月、初めての海外一人旅はすべてが新鮮でした。

アードマンの撮影って、でっかい体育館みたいなところにいくつもセットを組んで、同時並行で撮影していくんです。もうそこから規模が違う(笑)

あと、夜7時になったら「もう時間だから帰れ、帰れ」ってなるんです。日本の映像業界とは雰囲気が違うなと思いました。

英国の旅情は、MOZUさんのブログで詳しく解説しています。

両親のおかげ、次は自分のアニメを

2年間を振り返り、「Twitterの騒ぎから、すべてがつながっている感覚がすごい」と笑うMOZUさん。「ここまで来れたのは両親のおかげです」と断言します。

ぼく、絵ばっかり描いていて小学校のテストで0点取ってたんですよ。今思えば、父も母も本当に心配だったと思うんです。

でも「勉強やれ」とは一度も言われたことはなくて、好きなことをやらせてくれました。

素晴らしい両親に恵まれたと思っています。恥ずかしくて、直接言えませんが…。

MOZUさんの最新作

目標は「ひつじのショーンの会社に就職すること」と揺るぎません。

これまでぜんぶ独学でやってきましたが、今は技術的な限界を感じています。たとえば、コマ撮りの人形は自作していますが、動かしにくいんですよね。イギリスで触ったのは本当に動かしやすかった。

早くスタジオに入って色んなことを学びたいんです。テレビで自分のコマ撮りアニメを流すことが夢なので!

掲載写真の多くを自ら撮影したこだわりの作品集。帯を飾るのは、「シン・ゴジラ」の特撮監督などで知られる樋口真嗣監督の「おそろしい子!」という、その才能を称えるコメントです。

夢の実現へ着実に進んでいくMOZUさんの活躍から、今後も目が離せません。