「ちょっと背伸びして満足のいく家を買い、35年ローンを組んで、定年までに終わらない分は退職金で返す」と漠然と考えている人もいると思いますが、それだと老後の生活にツケが回りかねません。未来の自分に余力を残すためにも、住宅ローンはゆとりを持って組んで、55歳くらいまでに返し終えたいものです。

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夢が一転、足かせにもなる「住宅ローン

「住宅ローンは55歳までに返しなさい!」で言いたかったことは次の点です。

・人生何があるかわからないので、住宅ローンは55歳までに返せるくらいの余力を持って組みましょう。
・人生の後半にピークがくる教育費。余力を残して住宅ローンを組んでいれば、教育資金の準備も無理なくできてピークも乗り越えられる。
・住宅ローンを55歳くらいまでに完済し、退職金を老後資金としてキープするだけでなく、老後資金の準備をする時間も確保しましょう。

「老後破綻」や「下流老人」と言われますが、家計診断や相談業務などで多くの家計を見てきて、老後までずっと自分らしい人生を送るためにはどうしたらいいのかを考えて出した答えの1つです。

昔ほどではないものの、持ち家神話が今も根強く、家庭によっては住宅取得が優先順位の高い「夢」に挙げられることも少なくありません。しかし、「夢」である住宅を取得することだけに頭がいきすぎて、家計としてのバランスを欠くような、無理のある住宅ローンを組んでしまうケースもあります。

「身の丈」に合わない住宅ローンを組んだ瞬間から、夢だったはずの「家」が人生の足かせになってしまうこともあるのです。悪くすれば、子どもの進路や、「のんびり趣味に生きる」などとイメージしていた老後生活が根本的に狂ってしまう可能性も。

ましてやこれからは「人生100年時代」。老後資金を今より4割増で備えないといけない時代に突入しています。

老後にツケを回さない!人生の3大支出を考える

しかも、この「身の丈」自体をもうひと回り抑える必要性があります。その最大の理由として挙げられるのが、教育や老後(介護含む)にお金がかかることです。住宅費、子どもの教育費、老後の生活費は「人生の3大支出」といわれます。

収入が頭打ちになる中、少子化で親の介護も健在リスクとなっています。年金は3割削減しないと制度が持たないとも言われ、社会の超高齢化が進み、医療も介護も負担増は避けられません。ましてや、「人生100年」を前提に生きる時代になっています。

そんな中で、住宅にお金をかけすぎるとどうなるでしょう? 容易に想像できるように、ツケはあなたの老後に回ります。あるいはその前に子どもの進路にも影響している場合もあるかもしれません。

「長い長い老後にツケを回さず、子どもの養育・教育資金とのバランスもとれるような住宅取得の目安」をわかりやすくした言葉が、「住宅ローンは55歳までに返せるくらいのものを組みましょう」なのです。

55歳を目安に、返し終わる規模の住宅ローンを

誤解がないように書いておきますが、「住宅ローンは55歳までに返しましょう」というのは、あくまでも目安です。50歳でも57歳でも問題はありません。退職金がある人は退職金が老後資金として温存できるように、退職金がない人ならペースを上げて老後資金を準備する時間を確保するためです。

中には「それだと十分な住宅ローンが組めない。家が買えない」という人もいるでしょう。その場合、今の想定よりもひと回り小さい家を探すなど、いくつかの方法を検討していくことになります。

「みんな買っているから大丈夫!」と無理をして買うと、未来の可能性を狭めることになるかもしれません。ひと回り小さい家では満足できないのであれば、世帯収入を上げたり、節約をしたり、運用力をつけたりして、繰上返済などで55歳までに返せる状況をつくるのも手です。

50代や60代で家を買う人はどうしたらいいでしょう? それは簡単なことです。現金で買う、あるいは子どもと親子ペアローンを組むなどの方法があります。この時も、老後資金を残すことを忘ないことです。

人生100年。老後も自分らしく生きるために

つまるところ、「背伸びして満足できる家を買い、35年ローンを組んで、定年までに終わらない分は退職金で返す」という考えを捨てるべきです。老後までの持続可能な家計を維持したいなら、そんな発想は捨てなくてはいけません。

ただし、資産形成につながる住宅取得を考える場合は例外もあります。資産価値が確実に上がるか、少なくとも下がらないのであれば、家自体が老後資金になっている場合もあります。でも、そんな住宅はどうしても高額になりがちだし、「確実に上がる」「確実に下がらない」と言えるかどうか。難しいところです…。

不確実な時代だからこそ、できるだけ身軽に人生を送れるようにしたいもの。また、見えない足かせを自分にはめてしまわないことが大事ですね。
(文:豊田 眞弓)