優秀な人材を採用するのに、大学を卒業する22歳まで待つ必要などない(撮影:吉野純治)

松下電器産業(現パナソニック)の松下幸之助氏やソニーの盛田昭夫氏、中曽根康弘元首相、マレーシアのマハティール・ビン・モハマド元首相など、世界の政財界トップに対して長年コンサルティングとアドバイスを行ってきた大前研一氏。
大前研一『20世紀の人材観が会社を滅ぼす』」(10月20日配信)、「大前研一『イノベーター育成はインドに学べ』」(10月27日配信)に続き、新著『大前研一 デジタルネイティブ人材の育て方』から21世紀に必要とされる人材について、大前氏が大胆に予測、提言する。

21世紀、必要な人材採用の方法はこう変わった

人材に関しては、すべてを自前でそろえる必要はない。また、どのような人材ポートフォリオを構成するのかという観点から考えていくべきだ。


日本企業の人材戦略・雇用制度の論点を挙げるとすれば、次の10点になる。

(1)新卒採用か中途採用か
(2)採用する年齢を引き下げてはどうか
(3)年齢差のある職場は問題があるのか
(4)正規社員か契約社員か
(5)イミ(移民)ノミクスをいかに達成するか。その場合、もともといる社員の役割はどうなるか
(6)ダイバーシティにどう取り組むか
(7)会社側にとって従業員の副業は是か非か
(8)サバティカル(長期休暇)をどう考えるか
(9)アントレプレナー人材を社内に取り込むことは可能か
(10)人材データベースをどうするか

各社でこれらを1つずつ、時間をかけて検討していかなければならない。

新卒一括採用はやめるべき。年齢差のある職場はプラス

簡単に私の考えを述べると、まず新卒一括採用はやめるべきだ。今のように、苦労して採用しても5年後に半分に人数が減っているような状態では、投資効率が悪すぎる。

それに、いくら有名大学を卒業したといっても、日本の大学は事業のことなどわかっていないし、21世紀の企業に必要なことなど1つも教わってきていないのだから、役に立つはずがないのである。それよりも、他社で働いてスキルをもった28歳〜32歳くらいまでの人間を採ったほうがいい。


逆に、12〜18歳だと、21世紀向きの人材だといえる。すでにドワンゴは高校1年生の山中勇成氏をスカウトしているし、cookpadも中学を卒業後、高校に進学せずアルバイトをしていた福森匠大氏を開発者として採用している。優秀な人材を採用するのに、大学を卒業する22歳まで待つ必要などないのだ。


年齢差のある職場はプラスである。


デジタルネーティブの若者と、ビジネスのわかる年長者の組み合わせはむしろ望ましいといえる。正規社員は途中で辞めさせることができないのでコストとなるリスクが高い。クラウドソーシングなどを有効に活用することを考えたほうがいい。



外国人労働者も適材であればどんどん採用を

イミノミクスに関しては、アレルギーをもっている会社がまだ日本には多いようだが、外国人労働者が100万人に近づこうとしている状況(2016年10月末、108万3769人)で、そんなことを言っている場合ではない。適材であればどんどん採用したほうがいい。


ダイバーシティに関しても、ダイバーシティチームを編成し、期間を設けてリーダーを選んでプロジェクトを進めることが重要だ。


副業を禁止する会社に未来はない

副業も禁止する理由はない。入社以来、自分の会社の仕事しかやったことのない間口の狭い人のほうが、これからは戦力として使えなくなる。


サバティカルは本来、6年働いたら少なくとも1カ月以上、場合により1年間程度の休暇を与えるという意味だ。しかしながら、日本では仕事がきちんと定義されていないので、1年休むと誰かがその仕事を埋め合わせるため、戻ってきたら居場所がないということになりかねず、これではおちおち休んでもいられない。現実的なのは、5年に1度、年次休暇を倍にするくらいが関の山だろう。


アントレプレナーはクラウドソーシングなどを利用してどんどん社内に取り込んでいったほうがいい。医薬品の研究開発などは、カナダやオーストラリアで定年退職した人を迎え入れるという手もある。


データベースは5段階評価のようなものではなく「この問題が発生したとき、彼はこのような解決策を出した」というように、必ず記述する方式にする。そうすればそれを読んだ人が、「彼はこういう人間だから、次はこのアサインメントを与えよう」と的確に判断することができる。ただし、評価する立場の人間は、自分の仕事時間の10〜15%を、そのために使うようにしなければならない。


スキルギャップ会議を設置、人材育成には10年かかる

それから「人材過不足会議(スキル・ギャップ会議)を設置するといいだろう。 10年後、こういう会社にしたいが、それを達成するにはこのスキルが社内に不足している。これがスキルギャップであり、これをどうやって埋めていくかを定期的に話し合い、対策を立てるのだ。



スキルギャップは定量化する。また、定期的といっても頻繁にやる必要はなく、1年か2年に1度くらいでいいだろう。そこで、どの程度埋まったか判断し、新たなギャップが出てきたら、それをどうやって埋めていくか決めるというのを繰り返すのだ。

人材育成には10年かかるので、つねに10年後の会社の姿をイメージするのが大事なのである。

いずれにしても、21世紀は従来型の組織人事制度では成功できない。グローバル人材、イノベーター、リーダーを採用、活用できる仕組みを新たに構築する覚悟が必要なのだ。

政府、企業、個人レベルでそれぞれがすべきこと