洋服を選ぶときにどんなことを考えるでしょうか(写真:Deja-vu / PIXTA ピクスタ)

お気に入りの服を着るとき、そのアイテムをどこで買ったのか、そのアイテムにはどういう思いが込められているのかを、多かれ少なかれ人は無意識的に考えます。災害が起こったときに支援の一環として販売されるチャリティーアイテムであれば、着用するたびにその服の背景にある社会問題を頭の片隅で想起することになります。

しかし、ほとんどのチャリティーアイテムは、着ることよりも買うことが目的になりがちです。それも支援の1つではありますが、アイテムのデザインや着心地に魅力を感じていなければ、最初は着用していたとしても、やがてクローゼットの奥深くで眠ってしまいます。

社会貢献はデザイン性の延長にある

長期的な支援を意図するならば、1つのアイテムとして純粋に着たいと思える魅力を備えていることが不可欠。日々のスタイリングやコーディネートに取り入れることができて、表向きはチャリティーを感じさせないアイテムこそが、人々に支援の意識を根付かせていく上で効果的なのです。

女性向けのブランド「マイケル コース」のチーフデザイナーを務めているアメリカのファッションデザイナー、マイケル・コースは、世界中の飢餓を撲滅させるために、「ウォッチ・ハンガー・ストップ」という時計やTシャツといった商品を展開するキャンペーンを打ち出しています。プログラムの一環として、 食糧が必要な子どもたちに向けた学校給食の支援を、国連世界食糧計画と協力して行っています。

しかし、彼の生み出す時計は決して社会貢献が先行しているわけでありません。「着用していて気分が良くなる」というファッションの本質を充分に満たしていることが、消費者の心をつかんでいる一番の理由であり、社会貢献はあくまでもその延長線上にあります。


国連が提供するSDGsのロゴ。17の目標が図解されている。

このような活動を行っているのはマイケル コースだけではありません。

2015年9月、「2030年までに貧困に終止符を打ち、持続可能な未来を追求しよう」というスローガンのもと、世界を変えるための17の目標が国連サミットで打ち立てられました。

これが持続可能な開発目標を意味する「SDGs(エズディージーズ)」とよばれるものです。

17の目標に該当する活動を行っているブランドの1つがスウェーデン発祥の「H&M」。海のプラスティックゴミをリサイクルした商品開発は、「海洋・海洋資源の保全」に貢献しています。パタゴニアなどが行っているフェアトレードは「各国間における不平等の是正」につながり、一見アパレルと関係がなさそうな 「持続可能な農業」においても、乳牛に服を着せて生産性を向上させる“ウシブル”を下着大手のグンゼが開発しています。

CSRというと、慈善活動や法令順守、環境保護などが往々にしてイメージされ、事業とは別軸で存在するものとして考えられがちですが、CSRそのものが事業ドメインになる可能性もあり得ます。むしろアパレルは、直接的な形でCSRを表現しやすいビジネスなのです。

私はアパレルと社会貢献の親和性は高いと考えており、やり方によっては日本にCSRを浸透させていく起爆剤になり得ることも可能だと考えています 。日本でもCSRに力を入れる大手企業は徐々に増えており、2015年度に経団連が行った調査によると、社会貢献活動全体の支出は1804億円で、3 年連続で増加しています。

たとえば、難民の自立支援や障害者雇用などを積極的に行ってきたファーストリテイリングは、昨年末に「CSR部」を「サステナビリティ部」に改組しました。単発的な支援ではなく、長期的に社会的責任を果たそうという考えが見て取れます。

ファッションが担う可能性とは

災害が起きた際、チャリティーアイテムを販売したり、売り上げの一部を寄付に充てたりするファッションブランドは多々見られます。即時的に寄付金を集める上では効果的ですが、時間の経過と共に支援活動は徐々に下火になっていきます。実際、「東日本大震災」と「平成28年熊本地震」に関連するチャリティーアイテムを見かける機会も徐々に少なくなってしまいました。

ただ、企業活動に転化できていないだけで、社会貢献への意識を持っている人たちはたくさんいます。被災地支援に関しても、支援金こそ減ってはいるものの、ボランティア活動や産業再生、雇用創出、心のケアなど、お金に換算できない間接支援は継続的に行われています。

熊本地震の後、ファクトリエでもYMCAさんや行政と協力し、避難所へ衣類を提供しました。熊本に本社を置く企業としてチャリティーTシャツの販売を続けています。

メディアによる報道量が減少していく中、脳裏から震災が薄れてしまうのは仕方のない面もあります。しかし、東北や熊本が復興を遂げるにはまだまだ長い道のりが待ち受けています。社会問題に対する支援は、長期的な視点で行うことが大切です。課題となるのは、日々の生活の中でいかにして人々の意識に社会問題を浸透させていくかです。

CSRをカルチャーとして根付かせるために、ファッションが果たせる役割は、いくらでもあるはずです。そして、未来の社会や環境をより良く変えていくことは、アパレル企業自身の未来にとってもプラスになります。

総務省の家計調査によれば、2人以上の世帯あたりの被服に対する支出は減少の一途をたどります。アパレル市場を取り巻くマーケットが苦境に陥っている今、持続可能性に配慮した取り組みを行うことは、アパレル企業が取るべき最善の道といえるでしょう。