櫻井翔がドラマ『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系)、松本潤が映画『ナラタージュ』でそれぞれ先生役を演じている。この、嵐の“先生対決”が面白い。

参考:櫻井翔、30代でたどり着いたミステリアスな役者像 『先に生まれただけの僕』校長役がハマる理由

 櫻井が演じるのは、総合商社・樫松物産に勤めるサラリーマン校長の鳴海京介。もともとは抜群の営業力を持ち、赤字の子会社を立て直すというデキる男だった鳴海。しかし、ある日突然校長として会社が経営する高校へ出向させられた。戸惑いつつも、持ち前のポジティブさで問題に立ち向かっていく役だ。この手のドラマでよくあるのは、「鳴海京介=なんでもできるスーパーマン」という設定。しかし、鳴海は至って普通の人間である。失敗したり、落ち込んだり、時には生徒からナメられたりもする。実際、櫻井も「様々な組織や人間関係とどう向き合い、どう改革していくのか。スーパーマンではない主人公、鳴海がもがく姿をご覧頂きたいと思います(引用:『先に生まれただけの僕』公式サイト)」とコメントしている。櫻井は満を持して、“もがく先生像”を演じているのである。

 しかし、“嵐・櫻井翔”としてのイメージは揺るぎない。慶應義塾大学卒、ジャニーズきってのインテリで、ニュースキャスターも務めるクレバーなアイドルということは周知の事実だろう。そのイメージがあるからこそ、失敗しても落ち込んでも、ただの情けない男にはならない。さらに、櫻井にとって連続ドラマの主演は約4年半ぶり。撮影前には「豪華なキャストの皆さんとご一緒出来る日が今からとても楽しみです。というか、“豪華”が溢れていて興奮してます(引用元:『先に生まれただけの僕』公式サイト)」とコメントしている。この張り切りぶりも、時に空回る鳴海にとって良いアクセントになっているのではないだろうか。鳴海京介という役は、櫻井だからこそ成り立つ先生役なのだ。

 一方松本が演じているのは、社会科の高校教師で演劇部の顧問・葉山貴司。学校に馴染めていない女子高生・工藤泉(有村架純)を演劇部に誘う、生徒思いの良い先生だ。しかし、事件を起こして別居中の妻の帰りを待つことが辛くなり、徐々に泉に依存していくようになる。葉山はとにかくズルい。泉の好意に気付いていながらも、その気持ちにはなかなか向き合わず、泉の好意に甘えている。さらに、葉山は「俺悪いことしてないよね…?」と言い訳を込めた目、戸惑いが映る目で泉を見る。それでいて、泉にとって辛辣な言葉も行動も次々と投げてくる。女性側からすれば、拒否できるはずがないのに、だ。普通なら、バッサリ切り捨てたくなるような男だが、葉山はそれをカバーして有り余るほどの優しさがある。だから泉も、観客も、絶対に葉山を嫌いになれない。

 松本はそのズルさと優しさの絶妙なバランスを、泉とのシーンの顔、ゆっくりした動作、間のある台詞回しなどで非常に上手く表現している。松本はインタビューの中でこんなことを言っていた。

「普通のラブストーリーと違って、今回は片方=葉山側を全て消している。泉がその時にどう思ったか、が最も重要なわけです。ですから葉山がどう思っているかはあまり重要ではなく、葉山の思いをどこまで見せるのか、それが泉にどう見えるのか、ということを重点的に考えながら演じました」(引用:シネマトゥデイ/『ナラタージュ』松本潤インタビュー)

 確かに、「好きな男性を女性視点で見た時」と考えると、ズルい男の中に優しさが溢れているのも納得がいく。これまで様々なタイプのラブストーリーを演じてきた松本ならではのアプローチだ。

 それぞれの先生役を考えると、両者とも少なからず素の部分が活かされているのでは、と感じる。櫻井は、しっかりしつつも時々抜けている部分があったり、思いっきり失敗をしたり。嵐の冠番組を見ていると度々いじられている場面を目にすることも多いだろう。しかし、「この人に任せておけば何とかなる」という信頼の厚さは鳴海京介と重なる。松本は、ストイックで一見近づけない雰囲気を持ちつつも、共演者やスタッフからも評されるほど優しさに溢れている人物。『99.9-刑事専門弁護士-』のスタッフはTwitterで、共演者の片桐仁は雑誌で、その優しさを語っていた。ベクトルは若干違うが、ズルさの中に大きな優しさがある葉山を彷彿させる部分に通じるのではないだろうか。各々のキャラクターを上手く活かした先生役と言えそうだ。

 言い表すならば鳴海は「陽」、葉山は「陰」の魅力がある。『先に生まれただけの僕』はまだ4話目、『ナラタージュ』も大ヒット上映中だ。ぜひ2タイプの先生を堪能してみてはいかがだろうか。(文=高橋梓)